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『伝送便』誌今月号に寄稿した文章を転写します。二月号の記事と併せて読んでいただけるとうれしいです。 河村、石原氏と『カーネーション』の違い 本誌二月号にTVドラマ『カーネーション』のことを書かせてもらい、ヒロインの幼友だち勘助のエピソードに触れたのを覚えていてくださるだろうか。中国大陸での戦争が激しくなっていく一九三七年に徴兵された彼は二年後に除隊して岸和田に帰ったときには魂が抜けたようになっていた。去年十一月ごろの放送で、ドラマはその時点ではその理由について何も語らなかった。理由が明かされたのは今年二月二八日の放送である。尾野真千子さん主演としては最後の週の中の一回。すでに戦後三〇年ほどが過ぎ、勘助の母も年老いて病院にいる。日本軍がかつて中国で何をやったかを伝える番組を待合室のテレビで彼女はたまたま目にするのだ。 「勘助がああなったのはよほど酷い目に遭わされたからだと思ってた。でも違うんや。やられたんじゃなくて、勘助がやったんやな」。 見舞いに来たヒロインに勘助の母はそう語り、涙をこぼす。 河村たかし・名古屋市長が「南京虐殺なんて無かったんじゃないか」と、訪日していた中国共産党の南京市代表団に言い放ったのは、その放送より一週間すこし前の二月二〇日のことであった。二四日には石原慎太郎・東京都知事がさっそく応援に立つ。「河村君の言うことは正しいと思う。四〇万人も殺せるわけがない」。 四〇万人が犠牲になったと誰が言ったのであろうか。中国政府の主張は三〇万人である。石原氏は耄碌して言い間違えたのではないだろう。数字を大きくするほど「そんなに殺せるわけがない」という自説に都合がいいと計算してのことだ。つくづく卑しい男である。いっぽう河村氏の根拠は「終戦を南京で迎えた父親が現地で親切にされた」ことだという。虐殺が本当にあったなら、そんな態度をとれるわけがないというのである。なるほど人間は自分の器でものを考えるものだ。石橋湛山の評論集(岩波文庫)から引こう。 「しかも相手は暴虐の限りをつくした日本に対して、仇を恩で返すことを国是とし、いっさいの報復主義を排して逆に手を差し伸ばして来ている。それが容易なことではないことは、立場をかえてみれば自明である」(『池田外交路線へ望む』一九六〇年)。 中国の人々が示した度量をどう受け取るかは人間としての分かれ目である。私は湛山につく。 三月十一日に郡山で開催された「原発いらない! 福島県民大集会」に参加して現地に一泊した翌朝、朝食のあと宿のロビーでくすぶっていたらTVで『カーネーション』が始まった。ヒロイン役は夏木マリさんに代わっている。ヒロインを取り巻く登場人物も三人の娘以外すべて消えてしまったのは、老いに向き合うというドラマ終盤の新たなテーマを際立たせるためか。ただ、夏木マリさんには悪いが、尾野真千子さんの演技は何かに憑りつかれていたとでもしか言いようのないもので、あれではどんな名女優でも太刀打ちできない。最後まで尾野さんで視たかったな。ともあれ呆け呆けのポピュリスト政治家たちと対照的に、『カーネーション』は戦争における日本の加害の問題に向き合った作品としても私たちの記憶に永く残るにちがいない。 ※関連する過去ログとして ☆『TVドラマ「カーネーション」を推す』(12年2月4日) ☆『河村たかし氏や石原慎太郎氏に』(12年2月26日)
by suiryutei
| 2012-04-04 13:43
| ニュース・評論
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Comments(5)
こんばんはー。本当に、あの勘介の件で、渡辺さんは戦争の問題をきちっと描いたと思います。戦争に行ってひどい目にあっただけでなく加害者でもあった。だからこそ、みんな無言なのだとも。今日の朝日でなんと一面たっぷりインタビューを受けていましたね。あえて、晩年は、すべてを断ち切った形で描いたというようにおっしゃってますが。断ち切っても、演技している役者がきちんと渡辺さんの想いを受け止めていなかったのでしょう。
夏木さん・・あんなに憎らしい目線の人だったとは・・がっかりでした。 でも、本当に、酔流亭さんのいうとおり、戦争の問題をいつも上から目線でいる人たちの気がしれません。
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追記です。以前の記事から、永井愛さんのドラマ「こんにちは母さん」のことを書いてあるブログを読みました。そこに登場する加藤治子さん。彼女の夫はあの「なよたけ」の脚本家加藤道夫さん。戦争に行って、帰ってきてから、語ることなく自死されたこと・・堀田善衛さんの「若き日の詩人たちの肖像」にあり、私は衝撃を受けました。その実際の妻だった、加藤さんが演じたこと。彼女はいまだに確か、道夫さんのことは語らないでいます。
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suiryutei at 2012-04-05 22:09
ginsuisenさん、こんばんは。
今日は朝早く家を出、例によって飲んで今帰宅したものですから、コメントの承認が遅くなって失礼しました。 朝日のインタビュー記事に喪失感という言葉があったのになるほどと思いました。そういう状況に身を置いたところから新たなドラマが生まれるのを期したのでしょうが、ここが創作というもののむずかしいところなのでしょうね。うまくいくときばかりではない。 永井愛さんのドラマ、私は知らなかったのですが、加藤治子さんのお連れ合いは、そうだったのですか。
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ginsuisen
at 2012-04-06 17:19
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追記でーす。この堀田さんの本は、堀田さんが上京したころの2・26事件から戦後までの、実名友人がたくさん出てきます。
ちょうど戦争前から戦後までの文学青年たちがどのような青春を送っていたかが見えてくるような・・ある日、加藤道夫君の家を訪ねていくと、そこにあこがれの女優の加藤治子さんがいた・・とか。芥川兄弟のこととかもあります。
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suiryutei at 2012-04-06 21:49
ginsuisenさん、こんばんは。
堀田善衛はいいですね。その本は未読ですが、『歯車』『広場の孤独』など心に残っています。 そうそう、職場で、定年退職されたあと再雇用で来ている先輩と「カーネーション」の話題で盛り上がりました。私の記事、読んでくれたのです。
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