新人事制度 大阪での報告①~③
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またまた『伝送便』誌掲載文です。今月は頑張って二本書いたのだ。4000字を超す文章なので、ちょっと長いですが。 一〇月初め、「新たな人事・給与制度」の中身についての説明会がJP労組支部の主催で行われた。私の職場は深夜勤に従事する人が多いから明け番で三日続けて、そして昼間の勤務の人のために夕方にも一度、計四回の開催であった。私が深夜勤明けで参加したときは二〇人ほどの参加。すると、延べでは一〇〇人前後は説明を聴くことができたと考えていいのだろう。組合員数一〇〇〇人を超す支部である。自らも深夜勤務に従事しながら、こうした取り組みを行なっている支部執行部の労苦は察する。しかし、なにしろ一〇時間(拘束一一時間)の不眠の労働のあとだ。問題が重要であるにもかかわらず、組合員の多くが参加するというわけにはいかなかった。私にしたところで、たまたま説明会の最終日が深夜勤の連続が切れる明けにあたったから辛うじて参加できたのだし、説明を聴いているあいだ何度も睡魔に襲われ、ときに眠りに引き込まれた。 明け番説明会で 講師は東京地本の執行委員の人。組合員の意見を集約した上で進めるのであって、反対が多数なら前に進むことはしないと前置きがあった。これを忘れないでおきたい。さて、その説明。集配では仕事が早い人は超勤も少ないが、遅い人は超勤が多くなる。すると超勤手当のことがあるから仕事のできる人のほうが手取りが少ないようなことになる、これではおかしいでしょう。なるほど、なかなか巧みな成果給の正当化である。私は入局以来三七年、ずっと内務だから集配のことはよくわからない。しかし、配達中の交通事故は今だって少なくないとは聞いている。超勤をやらないことが成績評価の大きなポイントになるのなら、時間内に配り終えようと急く気持ちを今以上に駆り立てるのではないか。それは危険なことではないだろうか。しかも万が一事故を起こせば減点される。仕事の早い者が賃金も早く上がるというのは一見公平そうだし腕に覚えのある人には望むところかもしれないけれど、危なっかしい落し穴だって空いている。 一時間ほどの説明のあと質疑に。私を含めて二人が質問した。私が尋ねたのは「新一般職」のことだ。これが導入された場合、収入が一番高くなる五〇代なかばでも年収は四五〇万円弱だという。五〇代の後半に入った私の今の年収は七百万円くらいだから、二百五〇万円も下がることになる。非正規雇用の人の年収を二百万円と考えれば、なるほど「正社員と非正規雇用の中間くらいに設定」というそのとおりの額ではある。正社員登用される人の全てと新規採用の多くはこの先これに充てたいということである。現在の正社員はいずれ定年になって(あるいは新制度のもと激化する競争に耐えられず)退職していく。すると、すこし時間はかかっても、会社は労組との交渉抜きに大幅な賃下げを実現できるということではないか。そう質問した。「それはないでしょう」という応答だったけれど、そうならないのはなぜかの説明はなかった。「新一般職」の全体に占めるパーセンテージがどれくらいになるかも明らかではないとのこと。 もう一人の人は相対評価のことを質問した。AからEまでの五段階のうち一番下のEランクは絶対評価(全体の一%以内)だが、他は相対評価だから、一〇%が割り振られるDランクに一〇人のうち一人は必ず突き落とされるのだ。昇給に際して「役割成果給」は一号俸のマイナス。一〇人全員が「頑張った」としても誰か一人は犠牲になる。だから、これは何としても阻止してほしいという要望である。地本執行委員氏は「貴重なご意見と承っておきます」と神妙であったけれど、このままではそれが通ってしまう。 新会社で何が変わったか その説明会が行われた一〇月初めは、新会社としての日本郵便株式会社発足の秋である。一日にやはり深夜勤で出勤した。夜七時の始業ミーティングのとき社員証の衣替えを指示される。衣替えといっても、制服一式新調した五年前の小泉民営化スタートのときとは趣が違って、それまで郵便事業株式会社とあった上に日本郵便株式会社と刷られた小さな紙片を貼るだけ。一昨年の宅配便統合失敗で負った大赤字をまだ背負っているのだから何事も質素・倹約でということもあるのだろうけれど、ここ三年間の民営化「見直し」の迷走ゆきついたところを象徴するようでもある。「見直し」で何が変わったのか。 郵貯・保険の金融二社については「五年以内に全株売却義務」が期限は切らずに「全株売却に努力」へとたしかに表現が緩んだ。義務と書こうが努力と言い現わそうが、株式というものは魅力があれば売れるし無ければ安値で買い叩かれる。買い手にとって魅力のある株にするためリストラに拍車がかかるのは同じであって、朝日新聞社説を始めとする民営化推進論者たちが残念がるほどには民営化は「後退」してはいない。 しからば郵便事業のほうはどうか。小泉民営化で郵便局会社と郵便事業会社とに分かたれたのが統合して日本郵便という一社体制になっただけで、将来は政府が三分の一の株を持つ親会社・日本郵政がその日本郵便の株を一〇〇%持つという関係は二社体制のときと同じ。儲けの出る金融二社と切り離されては郵便事業はやっていけないことはいっかな民営化原理主義者でも承知している。だから、あの小泉さんのときだって郵便事業二社(郵便局・事業会社)については政府と完全に関係を切るとはしなかった。 収益減少の原因は そうなのは、過疎地でも配達するユニバーサルサービスということがひとつ。もうひとつの理由は、大企業の物流を捨て値で引き受けているからである。一〇月一八~一九日に東京で開催されたJP労組第一〇回中央委員会の議案は、郵便事業会社の営業収益が毎年五百億円規模で減少していることを嘆いている。これは例の宅配便統合失敗とは別の話である。しかし、事業会社における二〇一一年度の総取扱物数は二二三億六三三五万通(個)で対前年比一・八%の減少。減ってはいるけれども減り方は緩やかなのだ。信書の減少(マイナス三・六%)を、ゆうパック十一・四%、ゆうメール九・六%のそれぞれ増がカバーした格好。それなのに収益は何故どんどん落ちていくのか。そのわけは扱う物の中身をみればわかる。現場で仕事をしていても、切手を貼った封書が減ってきているのは実感する。明け方の伝送補助便なんてトラックはガラガラだ。しかし、大口引受け窓口では「板パレット」と私たちが呼ぶ大口割引郵便物はどんどん運び込まれている。粗末な木板の上に特別割引のダイレクトメールなどがてんこ盛りされているので「板パレット」。この板パレをつぶしてロールパレットなりコンテナなりに積み込むのは大変な労働で大汗をかく。が、なにしろ料金を特別に割り引いているのだから会社として儲けにはならない。この出血大サービスの上で、大口の利用者たる大企業は自らの利潤追求に励めるのである。 最近、この板パレつぶしのために主に非正規雇用の人たちに超勤がかけられることが多くなった。深夜一〇時間の不眠の労働をやった後だ。冒頭述べたように、深夜明けというのは一時間余の労組の説明会に出て座って話を聴くのだってしんどいのである。その日の夜また出勤の場合もある。それから、深夜勤が二晩続けば、これまでは三日目は「解放日」になった。そうして家で夜眠れる日が入って、それからまた深夜勤が続く。ところが、一〇月から、課によっては非正規の人に深夜勤を三晩続けて指定するところが出てきた。言うまでもなく二晩連続だってきついのである。産業衛生学会交代勤務委員会は、すでに一九七八年に、夜業の場合は勤務と勤務の間に最低一六時間はあけるようにと提言している。夜間労働は健康に有害だからだ。消化器や呼吸器の疾患率を高くするし、心血管疾患の高い危険因子。2005年には、夜業を含む不規則勤務に従事する人はそうでない人と比べると前立腺癌の発症率3・5倍というゾッとするような数字が日本癌学会で発表された。 しかるに、同じ時間帯の深夜勤が繰り返されれば、勤務と勤務のあいだは一三時間である。このわずか一三時間に超勤が食い込んだり、あるいはこんな勤務が三晩も続いたら、働く者の健康はいったいどういうことになってしまうのか。 「赤字だから」「黒字にしなければ」という声が、会社に抗おうとする声を押しつぶしにかかる。民営化論者たちは、本当は金融二社はともかく郵便は民間企業としては立ちいかないことを承知しているくせに、民営化を進めることで万年的な事業危機を作り出し、もってリストラの錦の御旗とする。一昨年の宅配便統合失敗はショック・ドクトリンとしても杜撰(ずさん)に過ぎたようだが。 この宅配便統合問題で会社の責任を追及することもおろそかに、黒字に転換しないことには何事も始まらないかのようなJP労組中央のスタンスが民営化論者たちにまんまと乗せられたものであること、言うを俟たず。改正民営化法の成立を受けて会社との間に設置されたと中央委議案に報告されている「新たな郵政づくり労使協議会」なるものはリストラの旗振り機関になるほかなかろうシロモノだ。 ネットワークを創り出そう 「新たな人事・給与制度」を改めて考えてみたい。定年までもう何年もない私などは、「現給保障されるし、そんなに心配しなくていいよ」みたいな説明をされる。そう甘い話ではないだろう。特別に上がりたいとは思わなくてもマイナス査定は誰だって嫌。一号俸下げられる中(前記したように一〇人に一人は必ずそうなる)に墜ちぬためにと、新制度導入の暁にはどんなギスついた職場に変貌してしまうことか。体力の落ちてくる年配者には辛くなる。そして斉藤次郎・日本郵政社長が語ったように「新一般職で正社員登用を吸収できる」というのが本当ならば、現在の非正規雇用の人たちこそ当事者だ。それなのに、肝心のこの人たちの与り知らぬところで話は進んでいる。前記したごとく年収ダウンは何百万円という規模である。自分が「現給保障」されることと引き換えに沈黙してしまったとしたら、私たちは次世代の彼らに向ける顔がない。正規・非正規が手をつなぐときではないか。JP労組のことでいえば、決まるのは来夏の全国大会だ。今からでも遅くはない。「新たな人事・給与制度」反対のネットワークを創り出していこう。
by suiryutei
| 2012-11-12 08:12
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