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『伝送便』誌今月号に寄稿した文章を転写します。 保守派の山崎正和と仲良しだったり、王朝和歌にやたら詳しかったり、それに旧仮名遣いにこだわったりだから、丸谷才一という人は何となく右っぽいのではないかと、ある時期まで私はそう思っていた。その蒙を払って鮮やかなのは故・大野晋のつぎの文章である。 「・・・次のことは必ず述べる必要がある。というのは、挙げられた例文の中に反戦・反軍国的内容のものが多いことである。世間には丸谷氏の国字問題に対する姿勢を一見しただけで、氏を目して復古的なあるいは反動的な思想の持主であるとしている人もあるように見える。しかし、こういう文章にまで目を配り、かつその中の佳什を取って全く無知の人々の目前に提示できることの背後に何があるか。それは見る人によって異るかもしれないが、氏を簡単に復古主義者と断じるとすれば、話はそれほど簡単ではないと私には思われるのである」。 丸谷版『文章読本』が文庫化されたとき国語学者が解説に書いたこの言葉は、世に広く行われている丸谷才一論の白眉といってよく、だから私もいま彼の『文章読本』について語ろうと思う。なかんづく、その第四章「達意といふこと」について。というのは、この章においては旧憲法と戦後憲法との対比が試みられているからだ。 文章の最も基本的な機能は伝達。つまり書き手の言わんとすることをはっきりと伝えて誤解される余地がないこと、あるいは少ないことである。この機能を欠いては、読み上げたときいかに朗朗と調子がよかろうと、それは文章たる資格がない。丸谷によれば、このあたりの事情を手っ取り早く示してくれるのが我が国の旧と現のふたつの憲法に他ならない。荘厳にしてチンプンカンプン、勿体ぶっていて曖昧模糊な旧憲法は「さながら数年風呂にはいるのを怠って白粉(おしろい)を塗りたくっているようなもので、醜悪きわまりない」。そこへ行くと現憲法は、よく言われるとおり下手な翻訳調で名文とはとても言えないにせよ、伝達の機能は備えている。「それはすくなくともときたま風呂にはいって、しかしかわいそうに紅白粉(べにおしろい)には手が届かない様子なのである」。 読んでみたくなったでしょ。中公文庫から出ているし、図書館にも必ず置いてあるはず。改憲論は世に溢れていていても、この護憲的文章論を論破しえたものを見ない。大江健三郎氏のようにデモの先頭に立つのも大事だが、丸谷才一はデモをしたり署名を呼び掛けることはしない替わり、自分の専門とするフィールドで現憲法のために一肌脱いだのである。 今年の五月、JP労組全国大会の代議員選挙に立候補して落選したものの一〇〇〇票ちかい支持を得たのは私一人の闘いではなかった。相談できる仲間がいたし応援してくれる多くの人がいたから。ただ、東京選挙区全体を通じて対立候補は私だけだったから、そのとき丸谷才一の小説の題名がちらりと頭に浮かぶことはあった。『たった一人の反乱』。未読のこれを年を越す前に読もうと思っている。
by suiryutei
| 2012-12-01 09:57
| 文学・書評
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