新人事制度 大阪での報告①~③
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この春公開されたケン・ローチの新作映画『天使の分け前』を観てニヤリとさせられるのは、反・新自由主義の闘士でもある同監督はどうやら酒好き(イギリス人だからウイスキー好き)であるらしいことだ。置かれていた絶望的状況から主人公の青年が脱け出すにあたってはスコッチ・ウイスキーが決定的な役割を果たす。そのウイスキーにまつわる人々をローチさんは愛情込めて描いていた。 そんなことを思い出したのは、デヴィッド・ハーヴェイの新著『反乱する都市』の中に「ワイン取引の政治経済学」なる小見出しの付いた一項を見つけたとき。ワインという商品の販売を通じて資本の儲け(しばしば法外なそれ)がいかに抽出されていくかを批判的に考察しているのだが、こちらはアカデミズムの世界における反・新自由主義の第一人者であるハーヴェイさんの筆致からも酒への愛情を感じたといえば、やはり酒好きである酔流亭の思い込み過多であろうか。もちろんその項は300ページ近い大著のうちほんの数ページに過ぎず、本書の中心的なテーマは世界をいかに変革するかだ。ローチもハーヴェイも新自由主義にだけ反対しているのではない。資本制そのものの廃絶を明確に志向している。 資本制が何故廃絶されなくてはならないか。 第一に、世界人口の大部分が途方もなく物質的に貧困化している。ところがグローバルな貧困の蓄積と対決するには、恥知らずなまでにグローバルな富の蓄積と対決することなしには不可能。 第二に、環境の悪化と生態系の変質が手におえないものになりつつある。ところが、このところの慢性的世界恐慌から資本主義的に脱け出す道があるとすれば、大量生産・大量消費を続けて世界の需要を喚起し続ける他はない。これは地球そのものの存続可能性を危うくする。 「資本はその長い歴史において今やその分岐点に達した」(212ページ)。 では、その変革主体はいかに形成されるか。資本の利潤は労働から抽出されるのだから、変革主体の中心に座るのは労働者階級であるのはもちろんだ。しかし、その概念は狭く解釈されてはならない。ふりかえれば1871年のパリ・コンミューンだって主体は工場労働者というよりもっと多様な人々であった。そこでハーヴェイは従来の工場プロレタリアートや産業労働者階級に替えて都市労働者という概念を提出する。これはネグリやハートの言うマルチチュードに近い概念であろう。本書でもネグリらには何度か言及されている。ただ、スピノザの古書からマルチチュードという言葉をひっぱり出してきたことからして、ネグリらがよくも悪くもロマン主義的なところがあるのに対して、ハーヴェイのほうがよりリアリスティックに現状を見つめているように思う。 急いで断っておけば、ネグリもハーヴェイも労働者を市民に解消しようとするのではない。パリ・コンミューンを「そもそもプロレタリアの蜂起ではなく『市民としての権利』を取り返そうとした都市社会運動だった」という説に対しては「それが階級闘争であると同時に、労働者が暮らしている場所での『市民としての諸権利』のための闘争でもあると解釈してはどうしてだめなのか」とハーヴェイは釘を差す。妥当な解釈であると思う。 ブラジルにおける「反乱する都市」(人々の生活をほったらかしにしてのワールドカップ開催に反対するデモ)の映像をTVニュースで視つつ、走り書き。 ※関連する過去ログとして ☆『「コモンウェルス」書評』(13年5月12日)
by suiryutei
| 2013-06-24 10:44
| 文学・書評
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