新人事制度 大阪での報告①~③
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今日、11月4日、日本郵政グループの株式が東証一部に上場となります。『伝送便』11月号はこのテーマで特集を組みました。その特集記事の一つとして書いたものです。 日本郵政グループの東証一部上場が十一月四日に迫った。現在の郵政民営化法等改正法では、政府が今は全株を持っている日本郵政はその三分の二を、日本郵政が全株を持つ金融二社(ゆうちょ・かんぽ)はその全てを、出来る限り早期に処分するとしている。日本郵便は日本郵政が全株を持ち続ける。 一〇月一九日にまず金融二社(ゆうちょ・かんぽ)の一株当たり売り出し価格が発表され、ゆうちょは一四五〇円、かんぽが二二〇〇円であった。株式数をかけ合わせた時価総額はゆうちょ五・四兆円、かんぽ一・三兆円である。日本郵政の株価は二六日に発表されるが、それを待っていてはこの稿の締切に間に合わない。そこで九月一〇日の上場承認に際して出された推計に基づいて考えてみると、この時点では時価総額が日本郵政六・一兆円、ゆうちょ五・二兆円、かんぽ一・三兆円と計算されていた。 TPPもちらつく これをどう読み解くか。改正民営化法では金融二社の株式は全て処分となっているのは冒頭に触れた。しかし会社が当面目指すのは五〇%の売却である。そこまで処分が進めば新規業務・新商品の認可制が届出制に緩み、経営の自由度が増すからである。けれども法律に忠実に一〇〇%処分することには現状では会社には躊躇いがある。「中期経営計画」に謳う「郵便局ネットワークと金融二社の有機的結合」に齟齬が生じるのではないかと懼れるからだ。 そこで、金融二社の株式処分はさしあたり五〇%まで、残り五〇%は日本郵政にまだしばらくは残るということでゆうちょとかんぽの時価総額を半分に割って足すと二・六兆円+〇・六五兆円で三・二五兆円。日本郵政には二・五兆円相当の不動産があるから、これも足して五・七五兆円。赤字体質の日本郵便の企業価値はせいぜい〇・三五兆円として、ひっくるめて九月一〇日時点では日本郵政六・一兆円というところに落ち着いたのではないか。確定値ではゆうちょが〇・二兆円高くなったから、それにつれて日本郵政の時価総額もすこし上昇するはず。 金融二社のうち、ゆうちょの株価があまり振るわないのは、ゆうちょ銀行と名乗りながらも他行のような融資(貸出)業務は出来ず、運用を国債など有価証券に頼らざるをえないからである。貸出金(融資)の利回りは低下が続いているとはいえ二〇一四年度で平均一・二九%。対して国債・株式など有価証券の利回り平均は〇・八六%にとどまる。金融会社としてこれでは苦しい。学資保険や養老保険など新商品を出しているかんぽは比較的堅調だけれども、全体として郵政グループの企業価値はあまり高く評価されていない。二〇〇七年に日本郵政公社を日本郵政株式会社に改組したとき会計上の価値として政府が国有財産の目録に登録したときの金額一二・四四八一兆円の半額になってしまった。その理由については本誌九月号記事(『日本郵政はどこへ行く』)に述べた。日本郵便は採算度外視で通信サービス・物流を支えているし、金融二社は国債中心の運用。累積債務一〇〇〇兆円を超す日本経済からの要請としても国債を引き受けてくれなくては困る。だから現在の郵政グループの収益性は乏しく、企業価値は低く見積もられる。けれども株式売却が進み民営企業の性格が強くなってから経営の方向を変え、利益の出るようにすれば(たとえばユニバーサルサービスの放棄)、企業価値=株価は上がる。ここで売り抜ければ投資家はボロ儲けができよう。二〇一四年度、外国法人の我が国保有株式比率は三一・七%で過去最高となった。自国の保険業界と投資銀行の圧力を背にアメリカ政府が郵政民営化を求め続けてきたことを思えば、最近「大筋合意」に至ったTPP(環太平洋経済連携協定)の影も上場を急ぐ背景にはちらついていそうである。 郵政民営化論のまやかし ふりかえれば、郵政民営化論が浮上し、ついには民営化が断行された背景には財政投融資の問題がある。基本的には税収に基づく一般会計予算を補完する機能を持った政府金融が財政投融資だ。郵便貯金によって集められた金は、厚生年金の醵金とともに財投の原資の大半を占めた。一九八五年度の時点で大蔵省資金運用部預託金残高一六六兆九五七四億円のうち郵便貯金が一〇一兆三二四三億円、厚生年金が五〇兆三〇四四億円である。この巨費が福祉に使われたのならよい。だが、実際には独占資本に儲けをくれてやるための大プロジェクト、いわゆる無駄な公共事業に濫費されてきたのである。各地のハコモノ、道路、鉄橋がそうだが、私たちはその代表的かつ犯罪的な例として成田空港建設を知っている。 民営化論者はこれを郵政民営化が必要であることの論拠とした。だが、そもそも福祉には回らず濫費されたのは、金を老人や身体障害者のために使っても、たとえば老人ホームなどを作るときに土建業が少し儲かる程度。医療を無料化したら保険という商売は上がったりだ。ところが空港や道路や鉄橋なら、それ自体が独占資本を儲けさせてくれるし、さまざまな拡大再生産へとつながってゆく。無駄であれ何であれ人為的に需要を作っていかなくては資本主義経済はもたないのだ。だから「無駄」が繰り返され、その不採算は結局一般会計(税金)から補填されるので財政赤字が膨らんでいく。すなわち資金供給(郵貯・簡保の存在)があるから需要(財政赤字)が生まれているのではなく、資金需要(財政赤字)の存在が供給を促しているのだ。民営化論は逆立ちしていたのである。問題は資本主義というシステムそのものにある。 どう闘うか 親会社・日本郵政の株は三分の二まで売却されるのだから、日本郵便も民営企業として生き残るためリストラが強化されよう。クロネコや佐川の宅配一個あたり運賃は二〇〇〇年代初頭七五〇円~一〇〇〇円近かったのが近年五〇〇円前後まで下がり、さすがに下がり過ぎたと見直しの動きが出かけたところにゆうパックが採算度外視で攻勢をかけているのが直近の状況だ。酒好きの私は清酒をいつも四升、ネットで注文するのだけれども、配達を日本郵便が担当するそれは商品価格の合計が一万円を超すと送料無料になる。また去年六月から始まった新商品ゆうパケットは法人向けに一㎏以下の荷物を扱う。区分作業をしていても最近随分増えてきたと実感するが、その運賃は「お客様ごとに個別に設定」つまり定価が無いのである。 こうしたダンピングの結果、二〇一五年六月期の郵便・物流業の取り扱い総数は前年同期より一・七%の増となった。信書の逓減をゆうパック一〇・四%、ゆうメール三・七%の増加が補ってオツリのついた格好だ。これを商売繁盛で結構と言っていいのか。郵便内務では連続深夜勤で一晩徹夜で働いて、その夜また出勤という明けに超過勤務がかかることが常態化した。外務だって連日の超勤で暗くなっても配達していると聞く。すでに二〇一四年度、労災としての過労死が最も多かった業界は運輸・郵便業で九十二件であった。のみならず厚労省発表の事業所別労働災害発生率においても運輸・郵便業は全産業トップの災害率である。いのちと健康を守るには、企業間競争に呑み込まれて仕事を奪い合うのではなく、クロネコや佐川の労働者と企業を超えた統一闘争こそが展望されなければならないのである。 ところが「会社あっての労働者」という労資協調主義が企業の枠を超えて労働者が団結することを妨げてきた。しかるに去年導入された郵政版限定正社員=一般職は正規雇用の約半数を低賃金化しようとするもので、企業間競争に勝ち抜く上での会社の切り札だが、それはしかし、労働者を労資協調に抱き込んできた要素を会社のほうから放り出すことでもある。正規雇用だって会社は安く使い捨てようとする。正規と非正規、そして物流業界の全ての労働者は団結して闘うときだ。 なお、九月にHOWS(本郷文化フォーラムワーカーズスクール)というところで株式上場問題について私が行った報告がPDF化されて<ウェブ伝送便>に掲示されている(一〇月五日更新記事)。本稿の足らざるところをいくらかは補っているかと思う。
by suiryutei
| 2015-11-04 08:37
| ニュース・評論
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