新人事制度 大阪での報告①~③
最新の記事
タグ
労働(124)
辺野古(46) 郵便局(43) 文学(31) コロナウイルス(31) 韓国(19) 朝鮮半島(12) 映画(11) NHK朝ドラ(10) ひよっこ(9) 大西巨人(9) なつぞら(8) 神田まつや(8) 労働者文学(8) 神聖喜劇(7) 関西生コン労組(6) 狭山事件(6) ブレイディみかこ(6) ケン・ローチ(6) 蕪水亭(6) 最新のコメント
記事ランキング
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
『伝送便』誌6月号の特集はJP労組定期全国大会。同大会は6月1~2日、神戸市において開催される。 その議案書批判として書いた文章です。 JP労組の第九回定期全国大会一号議案を読んでまず気づくのは、一昨年・去年と比べても東日本大震災についての記述が減少していることである。[提案にあたって]の項で「日本郵政株の売却益が復興財源に充当される意味からも、社会的な貢献に向けて堅実な経営推進が求められています」(一ページ)と、株売却にからめて言及されるだけだ。地震と津波の被害だけでなく放射能にも苦しむ福島について、議案は今年も一顧だにしなかった。直近に起きた熊本・大分の地震に気をとられたという事情もあるのかもしれない。が、それでよいのだろうか。 福島に目を向けよ 五年を経た今日も、福島第一原発の構内では多くの労働者が廃炉作業に従事している。高線量の放射能に曝され、健康に不安を感じながらの労働である。のみならず不充分な安全衛生環境で死亡事故を含む労働災害が多発している。一昨年から去年にかけてイチエフ構内において廃炉作業に従事した池田実さん(本誌前編集長)の日記(本誌連載中、今年二月に単行本も出版)から私たちはその実情を知ることができた。ところが、何重もの下請け構造下に有期雇用で雇われている廃炉作業員たちが労組を自ら起ち上げて声を上げるのはこれまでのところ困難な状況にあることも池田さんの報告にあるとおり。だからこそ彼の行動はそれへ向けての貴重な一歩なのである。 ここは福島第一原発の外からであっても労働組合が声を上げるときではないだろうか。政府や電力会社に働きかけることができる組織を持っているからである。なるほど日本の労働組合がいま総体として国のエネルギー政策にモノ申すこと、脱原発に足並みを揃えることは困難かもしれない。しかし、労資協調であれ原発賛成の労組であれ、廃炉作業現場の労働条件改善に向け腰を上げることはできる筈だし、やらなければならないことである。 安倍労働政策をめぐって [提案にあたって]はまた、「同一労働同一賃金」などを現政権が公約に掲げたことを「選挙対策であることは明白」「政権運営のさらなる安定化を企画した戦略」だとする。 もちろんそういう面がある。しかし、そう捉えるだけでは浅い。より根本的には、安倍政権の労働政策は、これまでの雇用を変えないことには従来のようには利潤を上げ続けられないという危機意識から繰り出されている。技術進歩のスピードアップに加えて、グローバルな経済競争が人件費の切り下げをこれまで以上に激しく競い合わせている中、定期昇給を伴う長期雇用は企業にとって煩わしいのだ。どう儲け、生き残るか。安倍の後ろには経営側の総体がいる。なるほど彼らも充分な意識統一はいまだ出来ておらず、年功的な賃金の下で定昇に仕込まれた査定を武器に労働者を企業意識に絡め捕り、労組を協調路線に誘導してきた成功体験をなおひきずってもいる。しかし、それを可能にした戦後日本の経済成長はトマ・ピケティ言うところの「資本主義の例外時代」の極東版亜種であって、続ける条件はとっくに失われた。この点については彼らは認識を共有して「改革」に乗り出している。そう見すえた上で、私たちは労働者としてどういう賃金を要求するか、ひいてはいかなる社会を目指すかが問われているのだ。格差を作り出してきた当の政府や経営側に言われるまでもなく、正規と非正規の甚だしい待遇差は無くさなくてはならない。問題はどう道筋をつけるか。 「同一労働・・」の意味するもの 経営側としては、職能給の年功的運用に手を入れ査定幅を拡げる程度ではまだるっこしい。もっとドラスティックな労働者分断・賃下げをやりたい。おもえば郵政「新人事給与制度」に一般職導入が割り入ってきたのも、そのひそみであった。従来の正規雇用を割り、片方を非正規と変わらない低賃金にしてしまう。世にいう「限定的正社員」である。片方に残された“精鋭的正規雇用”を別にして、そこにおいて安倍氏の言う「同一労働同一賃金」は実現しよう。しかしそれは正確には、労働が同一であろうとなかろうと関係なく「おしなべて低賃金」であるというに過ぎない。労働力商品の安売り競争をやることで資本に買い叩かれまいと、世界の労働運動がその出発のときから掲げてきた「同一労働同一賃金」とは全くの別物である。私たちはその労働運動出発時の原則に立ち返ることが必要なのではなかろうか。 どういうことか。「同一労働同一賃金」とは、雇用形態や人種・性別だけでなく、会社の業績とか支払い能力いかんにもかかわりなく、この職務についてはこの値段以外ではやりませんよ、と労働力商品の価格を揃えることなのだ。企業別の労働組合がこの原則を貫くのはたしかに難しく、労働力の売り手同士として団結するよりも“我が社”に他社より多く稼がせて、その分け前を貰うほうに誘惑されやすい。現に日本の労働組合がそうであった。安倍総理がその意味を知らずに「同一労働同一賃金」を振り回し始めたことで戸惑っている始末である。裏返せば、この原則を本来の意味に立ち返って手にすることは日本の労働組合運動を企業主義の軛から、企業間競争に巻き込まれる泥沼から解き放つ緒を開くだろう。JP労組大会議案がものの見事に絡め取られている会社の業績第一という「支払い能力論」の支配からも。 その条件もまた生まれつつある。非正規雇用が拡がり、くわえて非正規と同様な低賃金の正規雇用まで作られたということは、これまた裏を返せば、会社大事という意識に労働者を吸い寄せてきた“装置”の効く範囲が狭まってきたということでもあるからだ。 辺野古と戦争法 [情勢]の項に進もう。 「北朝鮮の核開発の脅威等」という記述がある(二ページ)けれども、あの大がかりな米韓軍事演習には触れない。「斬首作戦」だって北の人々にとって脅威だろうと感じとるくらいの感受性は持ちたいものである。 アメリカの大統領選挙について「若い世代の盛り上がり等から、日本との政治意識の違い等が垣間見られます」(二ページ)と海の向こうが羨ましそうなのは、本部が笛吹けど組合員が踊らず惨敗した三年前の「さだみつ選挙」の恨み節であろうか。原発にも改憲にも賛成のあの候補者に組合員がソッポを向いたのは、そのほうが真っ当であった。それにしても、お花畑(おめでたい)と思うのは、米大統領選に言及しながらトランプ現象には何の危機感も持っていないらしいことだ。移民を強姦者呼ばわりし、隣国との間に壁を建てるとわめく、あの共和党大統領候補の言動を、しかし私たちは他国のこととすませていられるだろうか。私たちの国だって街頭にネット空間にヘイト・スピーチが吹き荒れているではないか。「政治意識の違い」(もちろんそれがないではないけれども)よりも、ここはむしろ世界に共通する現象としての排外主義・人種差別主義の危険を見ないわけにはいかないし、それと闘わなくてはならないのだ。 希望が無いのではない。沖縄県辺野古での、米軍キャンプ・シュワブ前での座り込みは、今号が出るころ連続七〇〇日に達しているであろうか。軍事基地建設に反対する沖縄県民の闘いは、国家権力の暴力と対峙しつつ非暴力で民主主義の新たな空間を創り出してきた。事態をつぶさに観察するならば、沖縄の不屈の闘いが本土を揺さぶり、人々を鼓舞して去年の安保法制(戦争法)反対運動の一定の高揚を引き出していったのを見てとることができるはずだ。あたかも一九六〇~七〇年代、ベトナム人民の闘いが世界の反戦・反帝国主義の運動を牽引したように。ところがJP労組議案の情勢分析は辺野古にも改憲・戦争法反対運動にも触れることがない。本部はどちらを向き何を見ているのか。 親子上場の弊害は 夏の参院議員選挙におけるなんば候補の当落いかんと共に議案が心配するのは郵政株価の動きである。郵政公社が株式会社日本郵政に衣替えした二〇〇七年、日本郵政の企業価値は簿価一二・五兆円あった。今(二〇一六年五月一八日現在)その時価は六・四兆円弱である。半額に近いところまで下がったのは、親子同時上場によって稼ぎ手の金融二社がいずれ日本郵政から離れて行くことが見込まれるからだ。現在の時価は、ゆうちょとかんぽの株の半分はじき売られるとして、残る半額ずつに日本郵政の持つ不動産を合わせた額で大半が構成されているのだろう。二〇一一年十二月成立の「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」は二〇二二年までの時限立法であり、その年までの日本郵政の株式売却益は復興財源に充てるとして、その額を四兆円と見込んだ。日本郵政の株処分は三分の二までである。時価総額が六兆円ちょっとでしかないのなら、四兆円はギリギリのところだ。金融二社の株売却が五〇%を超えて先行したり、この先の株価の動き次第では復興財源としての予定額を充たせない場合も生じるのではなかろうか。民営化による国の資産叩き売りの弊害がこうした形でも顕われている。震災復興の在り方も視野に入れて郵政民営化は考え直されるべきである。
by suiryutei
| 2016-05-31 07:10
| ニュース・評論
|
Comments(2)
|
ファン申請 |
||