新人事制度 大阪での報告①~③
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新聞『思想運動』2月15日発行号に北健一さんの新著『電通事件』の書評を書きました。 電通に勤めていた高橋まつりさんが会社の女子寮から身を投げ、二四歳の命を自ら絶ったのは二〇一五年一二月二五日、クリスマスの朝だった。そのわずか二か月前の同年一〇月、高橋さんの所属する部署は人数が一四人から六人に減らされている。彼女はそれまでの保険会社に加えて証券会社も担当させられ、仕事量がぐっと増えた。深夜労働も常態化する。自死の背景には、こうした異常な業務量とそれにまったく見合わない過少な人員配置があったことは明らかである。長時間労働もセクハラ・パワハラもそこから生じてくる。 労災認定は一六年九月三〇日で、死から約一〇か月を要した。労基署が認定した彼女の一か月(一五年一〇月九日~一一月七日)の時間外労働は約一〇五時間。過労死ライン(月一〇〇時間、二~六か月にわたっては平均して八〇時間)を優に超える。そこからの展開は早い。東京労働局が電通本社を抜き打ちで調査したのは一〇月一四日。一一月七日には電通本社と三支社に八八人が踏み込んでの家宅捜索が行われ、この模様はマスメディアでも大きく報じられた。しかし、何か置き去りにされていないだろうか。長時間労働の背景には、前述したように人不足と過大な業務量があるのに、同じ時期に会合が重ねられている政府の「働き方改革実現会議」の議論はそこに踏み込もうとしない。生産性向上の問題としてしか語られていないのだ。それは本当に死ぬまで働いてしまった人間をダラダラ働きと叱責するに等しいのではないか。 本書は時宜を得た出版である。著者の筆は電通にとどまらず教育や郵便の労働現場にも及び、取材された現実が今すすめられようとしている「働き方改革」の欺瞞を撃つ。過重労働はそれを規制する側も例外ではなく、労基署の職員の数は二〇一一年度の四九五〇人から二〇一六年度には四八六九人と八一人減っている。臨検監督数にもノルマがあり、一つの企業の指導にかける時間が全く足りないという。高橋さんが死ぬ四か月前にも三田労基署が電通に長時間労働の是正勧告を出していたのに、これでは活かされない。 電通では一九九一年にも男性労働者が過労自殺している。痛ましい符合ながら、彼も高橋さんと同じ二四歳だった。四半世紀を経て事態がさらに酷くなっているのは働き方に対して労組の規制力がいよいよ殺がれているからである。電通にとどまらない。労働運動をどう建て直すか、それが著者とともにわれわれの課題である。
by suiryutei
| 2017-02-16 08:34
| ニュース・評論
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