新人事制度 大阪での報告①~③
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『伝送便』誌6月号の特集<どこへ行くJP労組>に書いた記事です。 日本郵便は、ゆうパックの扱い数が前年比九・一%も伸びて六・三億個に達するなど売上は増やした。しかし一五年に買収して子会社としたオーストラリア物流大手トール社が業績不振。買収時の価格とその企業の資産総額との差額を<のれん代>というそうだが、その全額と商標権など計四〇〇三億円が損失として一括計上された。このトール社買収→減損処理をめぐる問題点については本誌前号でも取り上げた(神田五郎『日本郵政は第二の東芝か』)。 トール社リストラをめぐって その後の報道によれば、トール社は業績不振を受けて大がかりなリストラに乗り出している。すでに今年三月までに約三〇〇人を解雇し、一七年度中に全従業員の四%にあたる一七〇〇人を削減する予定だという。真偽不明ながら今年六月までに最大二五〇〇人を削減という報道も目にした。 気をつけておきたい。一六年四~十二月のトール社の営業利益は前年同時期と比較して七割減というから、同社の経営が不調なのは間違いないだろう。しかし、一五年にトール社を買収したときの金額六二〇〇億円というのは同社の純資産額一五〇〇億円より四七〇〇億円も高かった。それが前記した<のれん代>であって、この<のれん代>は一六年十二月時点でも三八六〇億円あったという。それを整理した結果としての赤字であり損失である。つまり日本郵便の赤字三八五二億円とか損失四〇〇三億円とかは主に経営側の失態であるところの「高値づかみ」によるものなのだ。それでトール社で働く人たちのリストラが正当化されていいのだろうか。 二〇一〇年夏の宅配便統合失敗によって生じた一千億円を超す赤字を思い出す。全くの会社の失態であったこの大赤字を、しかし会社は念願の人件費削減への奇貨としたのだった。正規雇用労働者の一時金は大幅に削減され、非正規雇用労働者の待遇改善も置き去りにされたのみならず「六五歳雇止め」が導入されて今日の人手不足への道を加速させた。 なかば自作自演だったあのリストラと同じようなことを、日本郵政は今度はグローバル企業として海外の子会社を相手にやろうとしているのである。資本主義の本性を見せつけられるのは市場の動きだ。トール社不振の報に一三〇〇円そこそこまで下がった日本郵政の株価は、人員整理と聞いてその後一四〇〇円前後に持ち直している。労働者の首を切って路頭に放り出せば株主は「よくやった」と企業を評価する。市場とは、資本主義とは非情かつ非人間的なものである。そういう市場の力を使って企業を一段と非人間的な行動へと駆り立てること、これが民営化を推し進めてきた者たちの狙いであった。政府の郵政民営化委員会の岩田一政委員長は四月二六日の記者会見で減損処理について「最終的に日本郵政の企業価値が高まる」との考えを示した。トール社の「構造改革」につながるからだというのだ。同日の民営化委員会では、さすがに委員から「今後の事業モデルの青写真を描かずに人員削減すると組織が萎縮するだけ」との注文も出た(日経新聞報道)とのことだが。 サンケンの場合と 海外の子会社ということではサンケン争議にも思いが至る。サンケン電気の子会社、韓国サンケンの労働者が業績悪化を理由に去年秋、全員解雇された件だ。「経営悪化」の資料も提示せず、解雇回避努力もしていないと、その不当を訴えて労働者が立ち上がった。現地での闘いだけでなく、何人もの労働者が交代で渡日して埼玉県新座市にあるサンケン本社や池袋にある東京営業所への抗議行動を続けている。三月二十六日に行われた本社抗議行動には国労、東部労組など多くの労働組合の旗が立った。もちろん郵政ユニオンと『伝送便』の旗も。 韓国サンケン分会の闘いは私たち日本の労働者を力強く鼓舞してくれるが、しかしサンケン本社の労働組合はもとより、連合系の労組の姿はそこには見えなかった。 ひるがえって、五月十二日に公表されたJP労組第一〇回定期全国大会議案(六月十四~十六日、広島市にて開催)はトール社の業績不振には言及するが人員削減については黙している。業績不振といい解雇といっても企業により状況は様々である。私たちも充分な情報をまだ得てはいない。だから軽軽に論じることは控えなくてはならないけれども、「生産性運動による日本郵政グループの成長・発展が不可欠」云々(一号議案五ページ)と自企業の成長を全ての前提とするスタンスは今に始まったことではなく労働者の国際連帯より株主の視線に沿うものだろう。これを突破していく議論を全国大会の代議員に呼び掛けたい。 もうひとつのM&A さて三月期決算が発表された同じ日、野村不動産ホールディングスの買収を検討していることも明らかにされた。同ホールディングスの時価総額は五月十二日の終値で約三九〇〇億円というから、これも実現すれば数千億円規模のM&A(企業買収)になる。 日本郵政には約二・五兆円の不動産があると言われている。郵便局など多くは日本郵便の所有である。しかし不動産といえば、「かんぽの宿」売却が大きな騒動になったときのことが思い出される。 二〇〇九年であった。全国六〇数か所の宿と首都圏の社宅九件あわせて簿価総額が約二四〇〇億円だったのをオリックス不動産に約一〇九億円で売却しかけ、あんまりだというので騒がれて頓挫、今日に至っている。こんな叩き売りがどうして可能になりかけたかというと、不動産の時価は簿価よりも現在どれだけ利益を出しているかで左右される。「かんぽの宿」は公共施設で利潤追求を目的にしていないから運用益はそう出ない。当時六〇数か所のうち黒字は十一だけ。だから時価は安く算出された。しかし、安く手に入れた後、経営の方向を変えて利潤が出るようにすれば「濡れ手に粟」の商売ができる。国有企業の民営化が国民の財産の財界への投げ売りと言われる所以だ。郵便局は駅前の一等地にある場合が多いから簿価はかなりつく。しかし、その施設を使っての郵便・物流の運用益は低い。「かんぽの宿」売却のときと同じカラクリになりかねないのである。いやそんなことさせずに上手く商売をするために不動産のプロを子会社に持つのだと日本郵政経営陣は言いたいのだろう。しかし、不動産業に手を出すことがそもそも危なっかしいのだ。
by suiryutei
| 2017-06-03 08:25
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