新人事制度 大阪での報告①~③
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『伝送便』誌10月号は、9月14日に東京地裁で出された東日本労契法20条裁判の勝利判決を特集している。裁判は東日本と西日本とで進行していて、西日本では来年2月21日、大阪地裁で一審判決が出る。 さて特集の目玉は東京地裁判決の翌日に東と西の裁判原告が顔を揃えた座談会だが、そのいわば前座にあたる記事は酔流亭が書いた。転載します。 その日の都心はまだ夏の陽射しだった。蝉も鳴いている。九月一四日午後、霞が関の東京地裁前には大勢の人が詰めかけた。 午後三時過ぎ、裁判所の中から男女の若い弁護士二人が駆け出てきて手にした幕をひろげた。 「全員勝訴!」 「格差是正判決!」 どよめきが上がり、拍手が沸き起こる。郵政ユニオンの中村書記長がハンドマイクで 「格差是正判決を勝ちとったぞ!」 呼応して私たちは喜びのシュプレヒコールをくり返した。法廷に立つので背広姿だった浅川喜義さん(原告の一人)は、マイクを握って話している途中で涙顔に。 地位確認は棄却 判決は原告の三人が正社員と同じ地位であることを確認するよう求めた点については、「法律に規定が無く、労使間の交渉を踏まえて決めるべきだ」として請求を棄却。不合理な待遇格差を禁じた労働契約法二〇条について「契約社員と正社員の賃金制度に一定の違いがあることまでは否定していない」とした。待遇の格差が不合理かどうかは、仕事内容や責任の程度、転勤の有無などを総合的に考慮すべきだと述べた その上で、原告が格差の解消を求めた八つの手当と二つの休暇制度をそれぞれ検討し、年末年始勤務手当について「繁忙期の労働対価を契約社員に全く支払わないのは不合理だ」と認め、正社員の八割を、賃貸住宅に住む住居手当も「格差に合理的な理由がない」として同六割を支払うべきだとした。外務業務・早出勤務等・夜間特別勤務・業績精通の各手当、それに夏季年末手当(賞与)と祝日給は支払いを認めなかった。金額としては原告三人が計約一五〇〇〇万円を求めていたのに対して九二万六八〇〇円の損害賠償を会社に命じた。 休暇制度では「労働者の健康維持のための制度」として契約社員にも有給の病気休暇を認めた。夏期冬期休暇も「国民的意識や慣習が背景にある」と述べ、契約社員に認めないのは違法だと結論づけた。 つまり、八つの手当のうち六つは認められず、二つは認められた(ただし正規雇用と同額ではない)。二つの休暇はどちらも原告の主張が通った。 日本郵便は翌日控訴した。原告側も格差が不当とは認められなかった手当と、地位の確認について控訴する方針だ。 病休を認めさせた! 六つの手当がハネられたことはもちろん不当である。たとえば夜間特別勤務手当というのは、正規雇用に限って午後一〇時から翌日午前六時のあいだ勤務した一回につき最高三五〇〇円が支給、また一勤務指定期間(二八日間)に深夜勤務が九回を超える場合は八〇〇〇円が加算されるというもので、深夜勤に対応した手当。身体への負荷の大きい勤務に手当を付けるのは、超勤手当が本来そうであるように使用者に支払い負担を課すことで頻度が上がらないようにする抑制効果を持つものだが、それが現状では非正規には全く適用されないのだ。そのため集中処理局では一指定に深夜勤一六回なんて殺人的シフトがまかり通っている。 いっぽう大きな前進があったのは病気休暇である。これまでは正社員は有給で一八〇日が認められているのに対して契約社員は一〇日だけで、それも無給だった。 「かつて同僚が脳卒中で倒れ、幼い子どもを抱え『絶対に復帰する』とリハビリに励んだのに年次有給休暇を使い果たして退職に追い込まれた。契約社員が安心して働くために、病気休暇は絶対に必要。そのために起こした訴訟だった」 という宇田川朝史さん(原告の一人)の言葉(朝日新聞九月一五日付け朝刊)に共感した人は多いだろう。 労契法二〇条とは 原告が武器とした労働契約法二〇条は、一八条(有期雇用労働者は契約の反復更新が五年に達すれば無期雇用への転換権を持つ)、一九条(雇止め法理の法定化)とともに二〇一二年に労契法に新たに書き加えられた条項である(施行は二〇一三年から)。この改正は何か当時の民主党中心政権の性格の映し絵のようなところがある。あの政権は、前後の自民党政権よりは働く者の側に立っていたはずなのに、その本気度となると曖昧模糊としていたからだ。この三条項の立法趣旨が正規と非正規の格差是正にあったのは間違いない。しかし、その実際の規制力は頼りなく、悪巧みに長けた使用者は目を凝らして抜け道を探し出そうとする。 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。 上が二〇条の全文である。有期雇用労働者と無期雇用労働者の間に不合理な格差があってはならないとするのを私たちは正規・非正規の間のそれと読み替えてきた。不当でも拡大解釈でもない。立法趣旨がそうである。正規・非正規という概念区分は法律で線引きされているわけではないので、立法化するときはこう表現しておく他なかったのである。 しかし、では一八条によって「無期に転換した」非正規雇用労働者が出現してくると、どういうことになるか。場合によっては、無期転換非正規雇用と有期非正規雇用との間の「格差は不合理」という枠内に二〇条は立法の趣旨に背いて矮小化されてしまう懼れなしとしない。郵政ではすでに一八条の発効(法が施行された二〇一三年から五年後)を一年半前倒しして無期転換非正規(アソシエーション社員)が生まれ出している。このアソシエーション社員が登用試験という選別を経ていずれ一般職を構成していくこととなろう。時間差を持ちつつアソシエーション社員と一般職は重なっていく。一般職の賃金は低いから、そこに合わせれば「同一賃金」を安上がりにできるし、一般職は正規雇用だから二〇条の潜脱・矮小化という批判をかわせるという算段だろうか。 しかし、現時点では一般職は正規雇用の中でまだ一部だし(二〇万人近い正規雇用の中で、まだ二万にも達していない)、管理職でも一般職でもない地域基幹職のほうがずっと多い。仕事の内容・責任に違いがあるというなら、管理職と、そうではない正規雇用の間にこそあるのであって、格差を計るのに管理職を含めるのも、一般職だけを比較対象とするのもどちらも実態と違う。 相手は政府、財界 東日本二〇条裁判で会社側の弁護を務める森・濱田松本法律事務所の一室で去年七月、厚労省や内閣官房の官僚が集まって非公式の勉強会が開かれ、同法律事務所所属の日本郵便代理人、高谷知佐子弁護士も出席していたのは、もうよく知られている。訴訟の一方の代理人が顔を出すなんて政府の議論の中立性に疑念が持たれる事態だが、政府・財界全体が原告たちの前に立ちはだかってきたということである。 そんな相手に勝訴したのである。そのことの貴重さははかり知れない。判決当日の夜、都内ではフジビ争議の支援集会とデモもあった。マイクを握った人たちは昼間の勝利を心から称えていた。そこで述べられていたように、この闘いは正規と非正規が協働する場となっていることも重要な点だ。協働といえば全労連と全労協という別々のナショナルセンターが手を携えているのもそうだ。次のページからの座談会では、東と西の原告たち自身の口から裁判の意義、これまでの苦労話が語られる。ぜひ熟読してください。 購読申込みは 『伝送便』編集委員会(千代田区外神田6-15-14 外神田ストーク502号) mail usay-cnt@nifty.com
by suiryutei
| 2017-10-01 08:50
| ニュース・評論
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Comments(2)
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隅田のカッパ
at 2017-10-01 09:37
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おはようございます。日本郵便の会社の代理人は、森濱田松本L/Oなんですか!日本の法律事務所のほとんどは小さいのですが、ここは日本で五本の指に入る巨大法律事務所です。アマゾンの日本における代理人としても有名です。米国が日本に支配されているようにみえるので、「植民地支配」という言説が広くあるようです。「植民地支配反対」とかね。そうなると運動の進め方は「民族解放運動」になってしまします。でも、具体的には、日米の共同する巨大資本による両国労働者への支配ですよね。日本の巨大資本じしんは決して米国の支配にあるとか、「植民地」にあると考えているわけではない。そう考えないとアベたち日本の極右がいずれもアメリカが好きな理由がわかりません。だからそれに対抗する労働者の運動は日米の国境を越えた階級的団結になると思います。
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suiryutei at 2017-10-01 16:54
墨田のカッパさん、コメントに気づくのが遅くてすみません。
日本郵便には元々は別の法律事務所がついているそうですが、20条裁判が始まってからここが乗り出してきたようです。 植民地云々について、まったく同意見です!
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