新人事制度 大阪での報告①~③
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9月まで放送されていたNHK朝ドラ『ひよっこ』の総集編が早くも放送されたのは、このあいだの祝日(9日の体育の日)。録画しておいて一週間遅れで視た。 ヒロインの有村架純は3年前の朝ドラ『あまちゃん』にも出演していて、能年玲奈(現在の芸名は「のん」)演じるヒロインの母親(これは小泉今日子が扮していた)がまだ小娘だった頃を演じた。ちょっとややこしいけれど、視ていた人はご存じですよね。架純ちゃんて、あのドラマでもこんなに可愛かったかな・・・つまり『あまちゃん』にはそれほどでなかった酔流亭は『ひよっこ』にはすっかりハマッてしまった。『あまちゃん』の放送が終了したときは<あまロス>という言葉が生まれたが、現在の酔流亭の喪失感はそんなものじゃないですよ。 最初の一ヶ月ほどは、そうでもなかったのだ。惹きこまれたのは、ヒロイン・谷田部みね子が奥茨城の農村から集団就職で上京して向島の町工場で働くようになってからだ。その工場でのことは『伝送便』10月号に書いた文章で触れたから、ここでは述べない。 『NHK朝ドラ「ひよっこ」の時代』(9月30日更新記事) http://suyiryutei.exblog.jp/27179481/ 余談ながら上の文章は初め2ページの分量(2500~700字)で書くつもりだった。ところが9月には郵政労働契約法20条裁判の嬉しい一部勝訴があり(9月14日)、10月号はその報告など記事が充実したものだからTVドラマの話題で2ページも割くわけにはいかず、1ページ分に「自粛」したのである。 そこで、そのとき書きもらしたことをいま書く。 町工場の女子寮の舎監・愛子を和久井映見が演じていた。10年前の朝ドラ『ちりとてちん』は、福井の小浜から大阪に出てきて女流落語家を目指すのがヒロインだったが(演じたのは貫地谷しおり)、その母に扮した和久井映見がちょっと天然ボケしているけれど母性愛にあふれて絶品だった。今回の愛子さんもそのキャラに近い。しかし未婚の愛子さんには子はなく、彼女の愛情はみね子ら工場で働く女子工員たちにそそがれる。 愛子さんが未婚なのは、相思相愛だった恋人を戦争で喪ったからだ。1964年から67年にかけての物語である『ひよっこ』には、その四半世紀前に起きた戦争の翳が刻まれていることも、上掲『伝送便』記事に少し触れた。 愛子さんはドラマの終わりのほうで、みね子が工場が倒産したあと働くことになる洋食屋のシェフ(演じたのは佐々木蔵之介)と結ばれる。このシェフが、みね子が洋食屋で働き出したばかりのころチラリと口にした軍隊体験は、政治学者・丸山真男の言う「抑圧移譲」を想起させるものだ。それについてはこのブログの6月19日更新記事に触れた。 『ハヤシライス、または抑圧移譲について、いえ「ひよっこ」の話です』 http://suyiryutei.exblog.jp/26934767/ ところで、まだ町工場で働いていた頃、みね子は月に一度の給料日が来ると、その洋食屋[すずふり亭]に行って、メニューにある料理を値段の安いほうから一品ずつ注文する。そうして、いつか一番値段の高いビーフシチューに到達するのが彼女の夢だった。店の人たちもそれを暖かく見守っている。この夢は、町工場が倒産し、彼女は[すずふり亭]のウェイトレスに雇われることで頓挫するのだけれど、それまでの彼女と[すずふり亭]の関係は、客と飲食店の関係として理想的なものだろう。本当にいい店なら、客は、そういうふうに店に育てられるのである。 さて谷田部家は農業だけでは生活が立ち行かなかった。みね子の父・実(沢村一樹)は東京に出稼ぎに出ていた。冬の農閑期だけではない。通年、東京の建設現場などで働き、家に仕送りし、帰るのは正月以外は初夏の田植えや秋の稲刈りの数日間だけ。非正規雇用労働者が日本経済を支え、にもかかわらずその待遇が酷いものであるのは、今日に始まったことではなかった。 その実が給料を家に送金しようとしたところを強盗に襲われ、頭を殴られて記憶を失い、行方不明になってしまうことからみね子の、谷田部家の苦労が始まり、ドラマの最終回では、実が記憶を取り戻すかもしれない兆しが僅かに顕われる。 そして、兆しといえば、谷田部家が貧困から抜け出せるかもしれない兆しもドラマの終盤には窺えた。米作りの他に花の栽培を始めるのである。時代は高度成長期だ。都市では自然が減る一方で消費生活は向上していた。商品としての花に需要が高まりつつあった。 もちろんこうした商品生産には当たるも八卦あたらずも・・・の危険が伴う。たまたまその放送回の日は関東地方を集中豪雨が襲って、ドラマ放送中も大雨注意報のテロップが流れたから、もしドラマが現在進行であったなら、画面に映るあの花畑は豪雨で全滅して谷田部家は新たに借金を背負い込むことになったかもしれないな、などと思ったものだ。 しかし、才覚や、また運にも恵まれて、商品生産を通じて事業経営者へと転身していく自営農もいたであろう。時代も状況も違うが、産業革命前のイギリスでヨーマンリー(独立自営農民)からマニュファクチュア経営に進んでいく者が出てくるのと、ちょっと似ているかもしれない。 それからの谷田部家のことは一視聴者の知るところではないけれども。
by suiryutei
| 2017-10-16 08:24
| 映画・TV
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Comments(2)
「あまロス」に罹ってしまったわたしも、「ひよっこ」では、短気なわたしは、工場が閉鎖されてからのストーリー展開の方向性が定まらないことにしびれを切らし、以後は「飛ばし観」になってしまいましたが、架純ちゃんの周りにちりばめられたたわき役の多彩さには感心しました。特に白石加代子の存在感はさすがでしたね。それにしても、のんちゃんはどうしたのかなあ。
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suiryutei at 2017-10-17 08:23
umeさん、コメントありがとうございます。
わき役ひとりひとりも丁寧に描かれていましたね。そのぶん、テンポがゆるやかになったところもあったようですが。 白石加代子、たしかに凄かった! のんちゃんもそれなりに活躍しているのでは。
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