新人事制度 大阪での報告①~③
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朝日新聞朝刊に連載されていた小説『メタポラ』が先週、完結した。現在の若者たちが置かれている、かなり絶望的な状況がこの作品には描かれていた。26日の夕刊で作者の桐野夏生さんが語っている。 「・・・若者たちに確実にある傾向は増えている。どこにも属さずに流れ、たゆたい、いわゆる貧困層を形成していく者たちがいるのだ」。 主人公・香月雄太の父親は仕事上のストレスから家庭で暴力を振るうようになり、やがて経済的にも破綻、父親は首を吊って死んでしまう。雄太は学費が払えなくなって大学を中退する。フリーターになり、タコ部屋みたいな請負労働も経験するが、前途に希望を失い同性への恋に破れ、ネット上の自殺サイトの勧誘にのって沖縄まで流れていく。小説の結末は、出口の見つからぬものだ。集団自殺の現場から一度は脱出した雄太は、いずれまた自死に向かうかもしれない。 この小説の連載が始まったのは去年の11月。当時すでに「格差」を巡る論争は活発であったが、「格差は見かけだけ」とする論者も少なくなかった。フリーターやニートの問題も、「若者が好きで選んだ生き方」で済ませてしまう寝とぼけた論者もいた。現実は、正社員になりたくても企業が門を閉ざしているのに。 一年が経って、さすがに、そういう声は小さくなってきたようである。格差が拡大していることや非正規雇用の条件の酷さは、政府や財界に近い経済学者たちも認めざるをえなくなってきた。しかし、最近気になるのは、格差をもっぱら勤労者の間の問題だけにしてしまおうとする論調だ。たとえば朝日新聞朝刊に週一回連載されている『小林慶一郎のディベート経済』の25日付けには、こんな記述がある。 「バブル崩壊後の90年代前半は、労働分配率は上がり続けた。労働者はそのツケを、いま支払わされているという面もある。企業の取り分を減らして賃金に回す、と単純にいけるかとなると難しい。むしろ、労働者の中で、優遇されている者と不当に低い境遇に置かれている非正規労働者の格差が大きいことが、たとえば将来への不安を高めて、消費を減退させるなどの弊害を生んでいるのではないか」。 バブルの時期はなるほど日本中が舞い上がっていたのだろうが、それでも懐を膨らませたのは労働者よりは資産家と企業であろう。最近の労働分配率の低下をバブルのツケで片付けてしまうのは納得しかねるところだ。 小説『メタポラ』に即して言えば、雄太の父親はそこそこの企業の正社員であったし、共働きの母親は看護師をしていたと記憶する。勤労者家庭の中では収入面では恵まれていたほうである。それでも、ひとつ歯車が狂ったところから、その一家は地獄に落ちてしまった。 実際、フリーターの平均年収を三百万円と考え、「優遇されている」正社員はその倍の六百万円の年収があるとしても、たとえば四人家族(夫婦と子供二人)が、その六百万円から家のローンを払い子供二人の養育費をひねり出せば、あとの生活はギリギリであろう。 それでも家庭を持てるだけ「低賃金で結婚もできない」フリーターよりはマシという考え方もある。だから小林氏は正社員のことを「優遇されている者」なんて言い方をするのである。しかし、優遇という言葉は、現代の日本では勤労者の間で使うより(たとえワーキング・プアよりは余裕のある層へであっても)、企業や銀行へ向けたほうが妥当であるかと思われる。あつかましくも法人税の一層の軽減を要求している企業や、税金は払わないくせに自民党への政治献金はしたがる銀行に。 小林氏(や財界に近い他の学者たち)が避けて通ろうとしている「労働分配率」に手をつけなければならないのである。「格差」とだけ言っていては問題の本質が見えなくなる。格差問題とは貧困問題なのだ。
by suiryutei
| 2006-12-28 10:34
| ニュース・評論
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Comments(2)
経済格差もさることながら、地域格差も深刻です。
岩手県内で携帯電話の圏外は面積のおよそ70%。 そういう地域は光ファイバーどころかADSLすら対応されてません。 ようやく岩手でも始まった地デジは アナログ放送の半分以上をなんとかカバーできている状況。 それなのに技術はどんどん進み、税務申告から各種手続きまで 「電子で」と言われる時代です。 道路公団の民営化で地方の高速道路整備は後回しにされ、 道路特定財源の一般財源化がそれに拍車をかけています。 新幹線は一方的な都会への人の流れをつくるストロー現象をつくり 金融機関も合併や経営統合により採算の合わない支店は廃止、 郵政民営化により村で唯一の金融機関である郵便局も危ない。 中央資本の大型店進出で地元商店は経営が行き詰まり、 車で何時間もかけないと買い物にすら行けない状況です。 医師不足、教育格差、福祉格差・・・挙げればきりがない。 これまで何度も書いていますが こういう地方の状況を都会の方々はどれだけ知っているのか。 安倍ちゃんは知らないでしょうね。 だから「再チャレンジ」なーんて平気で言える。 「再」どころか「最初のチャレンジ」すらできない地方が この日本にはたくさんあるのです。 ・・・と、「メタボラ」からちょっと脱線してしまいました(^^; でもあの新聞小説を読みながら、上記のことを考えていた次第です。
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suiryutei at 2006-12-29 09:40
風屋さん、おはようございます。
今年公開された映画『待合室』(藤純子さん主演)には、岩手県の山村を舞台に、人々の暮らしぶりが静かに描かれていましたね。この人々の生活も、このままではいずれ維持できなくなってしまうように思いました。 おっしゃるとおり、最近の経済の流れは地方をどんどん荒廃させているのでしょうね。自分たちの根っこが枯れては、都会に暮らす人間も困ることになるのですが・・・。
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