新人事制度 大阪での報告①~③
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金大中氏が都内のホテルで拉致された1973年8月8日、酔流亭は18歳、大学一年の夏休みであった。世の中の動きにいくらか関心を持ち始めたばかりの頃であるから、事件の印象は今もって強烈だ。 その金大中氏拉致事件について再調査した報告書が発表された。韓国の情報機関、国家情報院の真実究明委員会の手によるもの。今まで言われてきたことに特に新しく付け加えるものは出ていないと思うのだが、当時の韓国政府による犯罪であること、また日本政府も当時、真相究明に消極的であったことが指摘されている。 ここでちょっと問題にしたいのは、現在の日本政府の対応である。事件を韓国によって日本の主権が侵害された事件としかとらえていないようだ。 たしかに、形の上では主権侵害は明白である。我が国の首都で外国の情報機関によって犯罪が行われたのだから。 しかし、もっと重要なのは、金大中氏の人権が侵害されたことのほうではないだろうか。氏は暴行をくわえられた上、韓国へ移送される工作船の船中であわや殺されかけるところであったのだ。 だから、たとえば町村官房長官が談話の中で「主権侵害」しか語らなかったことに酔流亭は違和感を持つ。当時の日本政府が曖昧な形での政治決着を図ったことを報告書が遺憾としたことに、町村氏はむしろ反発しているようである。 「主権侵害」だけを問題にしている分には、日本政府はなるほど被害者である。しかし当時、日本政府が真相解明に乗り気でなかったのは、お隣の韓国に独裁政権が居座ってくれていたほうが日本にとっても利益になると考えたからだ。65年の日韓条約締結以降、韓国へは日本の資本が盛んに進出していった。たとえば韓国に工場を建てて操業すれば賃金は日本国内より安くすむし公害の規制もゆるい。そうして韓国の国内で労働運動や住民運動が起きるのを独裁政権が暴力的に抑えこんでくれれば日本政府にとっても都合がよかったのである。 また当時の韓国は軍事政権でもあったから、冷戦下で軍事的緊張を朝鮮半島におしつけておけば、日本だけは涼しい顔で「平和国家」でいられる。 民主化の旗手として独裁に対して果敢に立ち上がった金大中氏を韓国政府がつぶしにかかったのを、だから日本政府は見てみぬふりをしたのである。 主権が侵害されたという点では日本は被害者だけれども、金大中氏と韓国の民主化運動に対しては日本政府は韓国政府と共犯者の仲になった。 粘り強い民主化闘争を経て独裁政治を克服する中で生まれた今日の韓国政府が、かつての自国の独裁権力を指弾するとともに当時の日本政府の対応を遺憾としたのには、こういう事情がある。 「オレの縄張りで勝手をしたのはそっちだろ」という次元だけで反発してすむ話ではないと思う。
by suiryutei
| 2007-10-25 11:38
| ニュース・評論
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Comments(4)
非常に分り易くて、論理的なご推察で、敬服いたします。多分、仰せの通りの事実があったのではないでしょうか。我々のうかがい知れないところで裏リンクがあったあったと考えれば分かりやすいし、つじつまが合います。この種の事件は、表面に現れた事実だけでなく、洞察力を磨いた上での分析が必要となりますね。
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suiryutei at 2007-10-26 08:29
umeさん、おはようございます。
今日の朝刊が伝えるところによれば、日本の主権を侵害した件については韓国政府は謝罪する意向を明らかにしているようです。金大中氏を見殺しにしかねなかった点について、日本政府も反省しなければ。
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iwapai
at 2007-10-30 10:06
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全くその通りだと思います
マスコミ、TVは金大中氏の人権侵害に言及しているものは ほとんどなかったと思います 『主権侵害』も大事ですが、民主国家あるならばまずは 形でも人権ということにふれて欲しかったですね
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suiryutei at 2007-10-30 20:30
iwapaiさん、こんばんは。
事件後の金大中氏は、光州事件の首謀者とされて、いったんは死刑判決を受けるなど、多難な歩みでしたね。労組青年部の役員をしていた頃、「全斗換(当時の韓国独裁政権の大統領。カンの字が違っているのですが、うまく出せない)訪日反対!」と青年部機関紙に書いて職場で撒いたり、金大中氏の救出を求める集会に参加したことを思い出します。
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