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27日の夜、[湖庵]でのオフ会から帰宅して、先に夕刊を手にした妻が「あら!」と驚いた声を挙げた。 志賀直哉が小林多喜二に宛てた手紙のことが記事に大きく紹介されているのである。その直筆の手紙を、私たちはほんの数時間前、白樺文学館で目にしたばかりなのだ。 朝日新聞の5月27日付夕刊である。同紙で連載中の『ニッポン人脈記』は現在、大逆事件にまつわる人びとを取り上げている(『大逆事件残照』。執筆は早野透記者)。その7回目は『多喜二への手紙 白樺の宝』という題で、この手紙を我孫子の白樺文学館が所蔵することになった経緯。 同館の館長だった佐野力氏は日本IBMで活躍した経済人だが、建物も展示物も私財を投じて文学館を作った。直哉の多喜二への手紙は「売りに出たのを、いくらかかっても手に入れたいと競り落としました」。小樽商大出身の佐野館長にとって、(商大の前身)小樽高商を出た小林多喜二は先輩にあたる。 さて、その手紙は真情のこもったものである。文中、小説は「主人持ち」ではいけないとあるのは、多喜二の思想の否定ではなく、陥りがちな穽への戒めであろう。そしてこのことは、プロレタリア文学に限らずあらゆる芸術にいえることであるはずだ。1933年2月、多喜二が警察で拷問死したのを聞いたとき直哉は日記にこう記している。 「・・・一度きり会はぬがよき印象うけ好きなり。アンタンたる気持になる。不図かれらの意図ものになるべしといふ気する」。 いま白樺文学館では、来年迎える雑誌『白樺』発刊100周年の記念として創刊号からの表紙が展示されている。『白樺』が創刊された1910年はまた大逆事件が起きた年であり、日韓併合の年でもあった。「あの大逆事件死刑囚も学習院のぼんぼんも人間の自由を求めた。立ちはだかったのは天皇制国家だった」(早野記者)。 植民地とした朝鮮の文化を日本が傲慢に破壊したことに抗議する柳宗悦の文章も文学館には展示されている。柳の妻で声楽家だった兼子は軍歌を拒否して活躍の場を奪われた。 なお、白樺文学館は、今年の4月から佐野氏から寄贈されて我孫子市に移管した。我孫子の一市民として守っていきたいと思う。 ※関連する過去ログとして ☆『柳宗悦を想う』(08年4月6日) ★追記。白樺文学館の学芸員であった方から、朝日の記事に誤りがあるとのご指摘をいただきました。詳しくは白樺文学館のオリジナルホームページの記述をご覧ください。(6/4)
by suiryutei
| 2009-05-30 16:47
| 文学・書評
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Comments(8)
志賀直哉のような手紙をもらって多喜二は幸せであったと思います。
0
佐平次さん、こんばんは。TBもありがとうございます。
同感です。いい手紙ですねえ。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
鍵コメさん、おはようございます。
今日は日中は晴れそうですね。たのしみ・・・。
志賀直哉、柳宗悦・兼子ら白樺派について語られる方が身近にいて大変うれしく思います。私は、白樺文学館開館一年前から開館後2001年10月までの1年8ヶ月の間、学芸員として文学館にかかわった者です。このブログで取り上げられた朝日新聞の記事の内容にいささか誤り(嘘)がありますので、気になり投稿する次第です。詳しく触れるスペースはありませんので、できれば白樺教育館ホームページから文学館オリジナル・ホームページと白樺文学館創成記(誕生秘話)を見ていただければうれしく思います。朝日の記事に対応しているページは、誕生秘話(5)です。それでは。
なお、秋に【柳兼子伝‐楷書の絶唱】の著者、松橋桂子さんをお呼びする予定です。いずれ当方のホームページにて紹介するつもりです。よろしければどうぞ。
古林さん、こんにちは。
貴重なご指摘、ありがとうございます。 朝日新聞のあの連載記事は全体としては素晴らしい内容だと思いますが、細部にはそういう誤り(記者の聞き違い?)もあるんですね。 日記本文に追記します。
追記ありがとうございました。とてもよいブログですね。(追記したからというわけではありません、笑.)
白樺派の位置づけは、初代館長武田康弘氏によってなされました。その理念(創造の地ー我孫子)から一節を引用すると、 『・・・ 彼ら我孫子「白樺村」の面々は、精神的に自立した裸の〈個人〉でした。親から疎まれ、世間から白眼視されても少しもひるむことなく、大胆に自己を肯定して生き、日本の《人間開眼》とでも呼ぶべき新たな時代を切り開いたのです。 さあ、彼らの息吹を吸おうではありませんか。 ここは、創造の地なのです。』 朝日の記事はよい意味で珍しく、正当な評価だと思います。何しろ、最も有名な研究者ですら白樺の特徴は何の共通点もなかったことだ、というのが定説のようですから。 なお、佐野さんはあちこちで事実と異なる話をしていますので、記者の聞き違いではなく佐野さんの話をそのまま受け止めたということなのでしょう。 また、現行白樺文学館ホームページも星野市長の了解で、事実関係の復旧が図られることになりました。あたたく見守っていただきたいと思います。
古林さん、おはようございます。
拙ブログをお褒めくださり、ありがとうございます。うれしいです。教育館のことはこれまでよく知らなかったのですが、魅力的ですね。 我孫子に引っ越してきて31年、次第に我が町としての愛着が湧いてきました。
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