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この春に読んでなかなか面白かった『吉本隆明の時代』という本(絓秀実 著 作品社)の重要な登場人物の一人に武井昭夫氏がいる。全学連の初代委員長。著者の絓秀実氏が武井氏に畏敬の念を持っていることが印象に残った。いや60年代に武井と激しく論争した吉本隆明自身が、最近は「日本には3人の優れたオルガナイザーがいる」として谷川雁、島成郎とともに武井昭夫の名を挙げているらしい。 そして、この本の読後感がまだ生々しいちようどそんなときに、小説家の大西巨人氏と武井氏の対談があるという話を聞いた。武井氏が主宰する活動家集団『思想運動』の創立40年記念のレセプションの場で行われるという。心が動き、レセプションに参加させていただいた。6月27日のことである。対談のテーマは『戦後の文学運動と思想運動』。文京区民センターにて。 大西巨人さんは、実物にお目にかかるのはこれが初めて。1919年生まれだから今年90歳になるわけだ。去年、NHK教育TVの『ETV特集』で視たときは、外を移動するときは車椅子を使っていたように記憶するが、この日は杖をつきながらも自分の足で壇上に上がられた。キリッとした表情である。なるほど戦後文学に屹立する『神聖喜劇』の作者にふさわしい。 武井昭夫さんを、こういう場でお見かけするのは、1982年以来。その年、イスラエルがレバノンに侵攻してベイルートに篭るPLO(パレスチナ解放機構)を包囲するという事件があった。アラファト議長が、まだ晩年のように評判を落としてはいずパレスチナ民衆に絶大な支持があったときである。イスラエル政府はこのとき彼を殺害できなかったことを後々まで悔しがったそうだ。 この情勢に、イスラエルの侵攻を非難しパレスチナ民衆を支援しようという趣旨の緊急集会が東京でも開かれた。いくつかの団体による共催で、武井さんたちのグループもその主催団体のひとつ。当時はまだ学生時代からの色々な縁があったから酔流亭もその集会には参加している。 以来もう四半世紀以上がたつ。武井さんは1927年生まれだから、輝ける全学連初代委員長も80代になられた。文章から受ける鋭い印象とすこし違って、福々しい好好爺という感じがする。そういえば去年亡くなった映画監督の土本典昭さんは戦後全学連における武井委員長(東大)-土本副委員長(早大)という仲だが、「武井昭夫氏との初対面は柔和の一語につきた。下まぶたに福々しさがあって・・・」と書いている(『全学連書記局当時のこと』)。 その土本さんの未亡人も会場に来て、挨拶をされていた。 対談は多岐にわたったが、印象に残ったことをひとつだけ記しておくと、林房雄にまつわること。東大新人会で左翼学生だった林はのちに転向し、戦後も『大東亜戦争肯定論』なんかを書いたから、左派には評判が悪い。で、東大新人会時代の林まで「母子で新人会を食い物にして」云々という林批判が出たことがあった。そのとき大西さんはその「批判」の行き過ぎを咎めた。林の後の軌跡がどうであったとしても頭のテッペンからつま先まで悪党に染め上げてしまうような“本質還元的”批判は正しくない。新人会時代の林房雄は純粋に行動していたときもあった。批判は事実に正確に論理的になされなければならない、と。 メモをとっていなかったから正確ではないけれど、そういう趣旨のことを話されたと思う。酔流亭には共感できることであった。 ※関連する過去ログとして ☆『吉本隆明の時代』(09年3月25日)
by suiryutei
| 2009-07-07 09:28
| ニュース・評論
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Comments(2)
>批判は事実に正確に論理的になされなければならない
『神聖喜劇』でのインテリ召集兵に対する批判は辛辣でした。しかし、論理的でもありました。主人公の東堂太郎の言動は「論理的過ぎるなぁ」と思ってましたが、こういうバックボーンがあったわけですね。
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suiryutei at 2009-07-09 16:36
きとらさん、こんにちは。
主人公の言動は論理的過ぎて非現実的ではないかとは、たしか丸谷才一さんなんかもかつて作品を評価しつつも言っていたような気がします。でも、この小説の評価は発表当時より最近のほうが高くなってきているようですね。 論争相手に仮借ない批判をしてきた人の発言だけに説得力がありました。
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