新人事制度 大阪での報告①~③
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季刊『社会評論』2010冬号掲載文(『郵政民営化を「潰した」亀井大臣』)の最終回です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ インタビューでは他に、亀井大臣の抱負がいろいろ語られる。「私は日本郵政を世界一の会社にするロマンを抱いているんです。・・・全国二万四千あまりの郵便局は今や地方における唯一の拠り所です。市町村合併で役場は無くなり、農協の支社もどんどん減っていますからね。そこを郵便や郵貯・簡保の窓口に使うだけじゃもったいない。介護の拠点に使ってもいいし、年金の徴収や支払いをやったっていい。・・・もう一つ、郵便貯金だけで百七十兆円、簡保も入れれば二百五十兆円にもなる膨大な資金をどう活用していくか・・・郵貯で集めたお金を、地域の中小・零細企業に流していく工夫はできないかと考えているんです」。 悪くない考えだと思う。ただし、どこの郵便局も少ない要員でたくさんの業務を抱え、社員は今てんてこまい。業務の拡大には、それに見合った要員と労働条件の整備が欠かせない。もう10数年前のこと、日本航空で客室乗務員に契約制社員の制度が導入されようとしたとき、運輸大臣だった亀井氏がそれに異をとなえたことがあった。日航のシンボル・マークのツルと亀井さんのカメをかけて鶴・亀戦争などと呼ばれたものだ。当初はスチュワーデスになる夢に横車を押したとかスッチーいじめなんて報道もあったが、亀井さんの意図は非正規雇用の野放図な拡大に警鐘を鳴らすことであったろう。私は当時、職場で発行していたビラに、両者の言い分を聞いてみると亀井大臣のほうが筋が通っているのではないかといった記事を書いた記憶がある。そんな亀井大臣には、現在の郵政現場における非正規雇用の増大と契約制社員の劣悪な労働条件に是非、目を向けてほしい。むろんこれは、政治家に期待するのではなく、私たちが現場で闘いを創り出して変えていかなければならないことだが。 ところで、亀井大臣の率いる国民新党の最大の支持団体は全特。全国の旧特定郵便局の局長たちの集まりだ。かつては自民党の絶大な支持基盤だったが、小泉時代の民営化路線に反発して自民党を離れ、現在は国民新党を強力に推している。 この特定郵便局という制度には、じつに様々な問題があった。局舎の多くは局長の私有で、毎月50万~100万円の局舎使用量が入る。局長としての給料も別に支給され、その局長職は試験なしの世襲。民営化スタート以降は前ほど甘い汁は吸えなくなってきたようだが、既得権のカタマリみたいなところだった。4年前の郵政選挙のとき、「郵便局の既得権益」に向けて振るわれた小泉総理(当時)の拳に少なからぬ人々が共感したのは、特定郵便局のこういう実態に誰もが眉をひそめていたから。もっとも小泉さんの言う「既得権益」には、特定局長の特権だけでなく労働者の労働基本権も含まれていたのだけれど。かつて旧全逓は、こうした特定局制度に批判を持っていたはずなのに、労使協調路線への転換とともにその批判も取り下げ、小泉時代には特定局長会の応援団になってしまった。手を取る相手を完全に間違えたのである。新自由主義の正体を暴いて人びとと手を携えるのではなく、おのれの既得権擁護に走っただけの「民営化反対運動」が小泉改革にテもなくひねられて完敗したのは当然であった。「民営化見直し」は旧特定局長の特権の復活を容認するものであってはならない。 良心的なケインジアンと言われる人でも、マネーゲームを批判してものづくりを大事にするのはいいとして、そのものづくりの現場でどんな苛酷な搾取が行われているかには案外、無関心である。しかし本当の対立点はケインズ主義か新自由主義かという以上に労働と資本の間にこそあるのではないか。郵政民営化にしても、前述したような新自由主義による土建ケインズ主義への攻撃という以上に、それは働く者に対して資本が仕掛けた収奪である。民営化がスタートするずっと前から、協力しなければ(民営化された)国鉄のようになるぞと労働組合を脅しつけて合理化推進組合に変質させてきた。そうした中で合理化施策はほとんどフリーパスとなり、深夜労働の拡大強化は労働者の命を日々、切り縮めている。非正規雇用も急増。正社員は10万を切ったのに契約社員は15万人を超えた郵便事業会社など、非正規雇用が日本一多い会社だ。これが民営化のもたらしたものである。 さて、かつて日航客室乗務員の問題では雇用のあり方に意外とまっとうな意見を吐いた亀井氏だが、今回のインタビューでは郵政の非正規雇用については何も語らなかった。10数年前よりはるかに深化した日本資本主義の危機が、そのゆとりを彼から奪ったのだろうか。死刑制度に反対し、またチェ・ゲバラを敬愛するという、この異色の保守政治家に私はいくらかの親近の情を感じるのだけれど、しかし自分のよって立つ基盤であるところの資本主義社会を守るためには彼は虎にも狼にもなろう。これとは私たちは対決せずばなるまい。 ☆『郵政民営化を「潰した」亀井大臣』(10年1月10日) ☆『郵政民営化とは何であったか』(10年1月11日)
by suiryutei
| 2010-01-12 09:31
| ニュース・評論
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