新人事制度 大阪での報告①~③
最新の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
カテゴリ
記事ランキング
以前の記事
2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 more... 検索
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
新聞『思想運動』9/01号に寄稿した文章を転写します。 ![]() NHKの朝の連続ドラマ『ゲゲゲの女房』の人気が高い。サッカーW杯の中継が終わった7月なかばから、視聴率は毎週20%を超えてトップを独走状態。水木しげる夫人のヒロインが専業主婦であることから、三年前放送の『ちりとてちん』では最後にヒロインが落語家を廃業して家庭に入ったことと併せて「女は家庭に」を説く保守思潮の顕われとする指摘もあるようだ。しかし、母性保護規定を労基法から奪い取った男女雇用機会均等法(1985年)以降、資本の雇用政策は女性も生産現場で容赦なく搾取すること。くわえて近年の非正規雇用の急増は、男子労働者一人の稼ぎでは家族を養うことを多くの家庭で不可能とした。女性を家庭に閉じ込めることは保守派にとっても主要なイデオロギーであるよりはノスタルジアと化している。 むしろ、このドラマでは、もうひとりの主人公・水木しげるの戦場体験に強い印象を受ける。今年の8月15日は日曜だったから朝ドラの放送はお休みだったが、翌16日からの週で、彼は片腕を失うことになる戦場での日々について口を開くのである。ドラマの進行が、人気作家となった水木が『総員玉砕せよ!』など自らの体験を漫画に描いた70年代初めにさしかかったからだ。大岡昇平が逝って20余年たつ戦後65年目の夏に、戦場体験をふまえて戦争の非条理を静かに語ったのは意外にもNHK朝の連続ドラマであった。 その水木しげるの戦争とは、どんなものだったか。1943年、21歳のとき召集され輸送船で南洋のニューブリテン島ラバウルに送られる。着くまでに前の船団はほとんど、あとの船団は全てアメリカの潜水艦の魚雷攻撃によって沈没している。したがってニューブリテン島に送られた最後の兵隊の一人である。ラバウルよりもさらに前線の部隊に配属された。その部隊は圧倒的に優勢なアメリカ軍に追いつめられるのだが、後方のラバウル基地が反撃の態勢を固める時間を稼ぐためとして玉砕攻撃に打って出る。少数の兵は生き残るのだけれども、これが後方基地司令部によって敵前逃亡だと責められ、将校は自決させられ、敗残兵たちは再度の玉砕攻撃を敢行することを強いられた。水木しげる本人は隊にはぐれ、数日間の彷徨ののち日本軍基地に辿り着くが、やはり生き残ったことを責められる。彷徨中に蚊に刺されたことからマラリアを発症、高熱で寝込んでいるとき空襲で左腕を失う。切断手術は麻酔なしであった。 こうした水木しげるが、戦争や軍隊についてどう考えているか、『ゲゲゲ・・』ブームで本屋にはいま関連本があふれているけれど、ポプラ社刊の自伝的エッセイ『ほんまにオレはアホやろか』の一読を勧めたい。1978年に出たものの新装版が今年刊行された。 「だまって戦死するのがリッパな兵隊とされた。命令には忠実、不言実行で、質問なんかしてはいけないのだ。当時若者であって、現在では中年すぎのおっさんになっている戦中派には、口の中でモゴモゴいうだけで、はっきり物事のいえない人が多いようだ。これは、ことあげせずで教育されたために、舌がかたまったまま年をとったせいであろうというのが、ぼくの考えだ」(69ページ)。 大西巨人『神聖喜劇』における東堂二等兵の闘いを対極として思い合わせつつ私はこの箇所を読んだ。 ※関連する過去ログとして ☆『「鬼太郎が見た玉砕」の録画を視る』(10年8月19日) ■
[PR]
by suiryutei
| 2010-09-03 17:23
| 文学・書評
|
Trackback
|
Comments(0)
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。
ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
|
ファン申請 |
||
外部サイトRSS追加 |
||