新人事制度 大阪での報告①~③
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なぜ彼は、自らの職をなげうってまで、そう行動したのか? 本書125ページに、こうある。 「私はいまでもときおり考えることがある。もし米国のイラク攻撃がなければ、私はいまでも外務官僚を続けていただろう。もし、その時の日本の首相が小泉首相でなかったら、あそこまで強く日本政府の外交に反発しなかったろう。そして、もし私が米国のイラク攻撃の時に駐レバノン大使でなかったら、おそらく米国のイラク攻撃にここまで強く反発しなかったろう。それほどまでに米国のイラク攻撃は、中東から見れば不当であった。私がレバノン勤務の二年半で目撃したものは、まさしく米国の不正義な中東政策であった」。 今日のオバマ政権も前ブッシュ政権からそれを受け継いでいる米国の「テロとの戦い」とは何か。米国の指導者がテロと呼んで指すものは、漠然としたテロ行為一般のことではない。イスラエルによる容赦ない弾圧・攻撃に対するパレスチナの人びとの抵抗のことなのだ。だから、たとえば米国が考える「北朝鮮の核の脅威」とは、なにも日本列島に向かって核ミサイルが撃ち込まれる事態のことではない(そんなことはありそうにないし、また米国の関心事でもない)。北朝鮮の持つ核兵器なり核技術がパレスチナ抵抗勢力の手に渡ることである。パレスチナでは、「もし核兵器があれば躊躇わずイスラエルに射ち込む」と語る人は少なくない。その理非を言う前に、人びとがそう思って不思議でないほどイスラエルの行動は理不尽で非道だということだ。イスラエル及び米国の情報操作にもかかわらず、去年のガザへのイスラエルの攻撃でその非道の一端を世界は知った。 日本が外国から攻撃されたとき守ってもらうものとして日米同盟があるとするのは倒錯した理解である。事実は、アメリカが行う戦争に日本が加担するということなのだ。そんなことは、すでに7年前のイラク戦争で誰の目にも明らかとなっていたはず。 にもかかわらず、日米同盟(この同盟関係とは軍事同盟のことである)を深化させるべしという意見が今日さらに多数となっているのは、何故だろう。日米同盟に替る防衛策の対案を反対派が提起できなかったことにもその一因があると著者は考える。そこで著者が提案するのは東アジア集団安全保障体制の構想。 「集団安全保障体制のもとでは、いわゆる仮想敵国というものはなく、お互いにルールを決め、それを皆で守れば平和が保てる、だからそれを皆で守ろう、そして問題が起きたら皆で問題を起こした国を罰しよう、そういう制度である」(215ページ)。 詳しくは本書に直接あたってもらえばいいが、ヨーロッパで1970年代以降進んだ「全欧安保協力機構」の東アジア版を作ろうということだ。酔流亭もこれにおおむね賛意を表したい。 余談ながら、護憲派の旧社会党や共産党に、これまで何故この構想が無かったか。いくらか冗談まじりに言わせてもらえば、「集団安保」という表現にも原因があったのではないか。つまり「集団」で「集団的自衛権」を、「安保」では「日米安保条約」を護憲派はつい連想してしまって近寄らなかったのである。 もうひとつ。じつは1970年代初めに、この構想が浮上しかけたことがあった。当時のソ連のブレジネフ書記長が「ヨーロッパのような緊張緩和をアジアへも」として言い出した「アジア集団安保」の構想がそれである。そのころヨーロッパでは、西ドイツのブラント社民党政権の「東方外交」を契機として緊張緩和が進んでいた。が、これも、どうも言いだしっぺが悪かったかもしれない。すなわち、これに呼応すれば「やっぱり左翼はソ連の手先だ」と攻撃される。それを旧社会党も共産党も嫌がったのであろう。 しかし、21世紀に入って、この構想はようやく現実のものとなりつつあるように思われる。憲法9条を掲げ、この構想実現に向け進むことが正しく、かつ可能な選択だと本書の著者とともに酔流亭もそう考える。 『さらば日米同盟!』 天木直人 講談社 1500円+税 ※関連する過去ログとして ☆『東北アジアに生きる』(05年10月24日) ☆『ガザの惨状を止めよ』(09年1月9日) ☆『イスラエル軍による殺戮は“報復”なのか?』(09年1月21日)
by suiryutei
| 2010-09-17 15:53
| 文学・書評
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Comments(2)
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