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前回日記で紹介した『『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う 日清戦争の虚構と真実』(中塚明・安川寿之輔・醍醐聡 高文研)がユニークなのは、司馬史観の背景には丸山真男の影響があることを指摘した点である。 東大出版会から出ている丸山の『講義録』と文春文庫の司馬の『この国のかたち』とを通読して、この両者の問題意識に意外と親和性があると感じた記憶は酔流亭にもある。かつて三島由紀夫が丸山を「荻生徂徠気取り」と罵倒する一方で司馬を「よく勉強している」と持ち上げたエピソードなんか聞かされているから、この両者を対極にあるものと我々はつい思い込みがちだけれど、鎌倉新仏教の評価にせよ武士のエートスへの共感にせよ、あんがい似たようなことを二人は言って(書いて)いるのだ。 問題は福沢諭吉に対する評価である。丸山による福沢諭吉の誤読を司馬も踏襲し、それがひいては明治国家に対する大甘な評価にもつながったと説くのが安川寿之輔・名古屋大学名誉教授。『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う』の第7章において述べられている。 ・・・・ここまで書いたところで、本棚の奥から『丸山真男著作集』(岩波書店)をひっぱりだしてみた。第8巻は1959-1960年に書かれた文章が収められているが、『暗い時代の救いの書物』という短い文章がある。暗い時代とは戦前のファシズム時代、救いの書物とは福沢諭吉の著作を指す。 言論が統制されていた息苦しい時代に若き学究生活を送っていた丸山は、福沢の一見ほがらかな例えば「自由の気風は唯多事争論の間に在て存するものと知るべし」といった言説に時代に抵抗する心の拠りどころを見出していたのだ。 その気持ちはわかるような気がするし、じつは酔流亭も所属労組の反対意見を認めない非民主的な運営を福沢のあの言葉を引用して批判したことがある。 けれども、丸山のそうしたいわば“福沢惚れ”が、福沢のもう一面すなわちアジア侵略の鼓吹者という面を軽視する結果になっているというのが安川教授の批判だ。 さて『『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う 日清戦争の虚構と真実』は、「『坂の上の雲』放送を考える全国ネットワーク」(http://kakaue.web.fc2.com/about2.html)から生まれた。このサイトには、関連するネット記事が紹介されているが、その「参考リンク」という項目に酔流亭ブログの過去ログは10本リンクされている。92という数字を振られた位置で、敬愛する髭彦さんのブログ『雪の朝ぼくは突然歌いたくなった』がリンクされているすぐ下のところ。このことをちょっと自慢して、今回の三回連載の結びとします。
by suiryutei
| 2010-12-18 08:28
| 文学・書評
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Comments(7)
引用させて頂きました。ありがとうございます。
http://kgcoms.cocolog-nifty.com/jp/2010/12/post-7d9f.html も見てやってくだされ。
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『坂・・・』ネットワークさん、こんばんは。
光栄です。貴ネットワークの奮闘に敬意を払っております。
酔流亭さん、こんばんは。
厳しい労働の中、時宜に適した評論を書き続けられていることに、あらためて敬意を表します。 丸山真男については福沢評価に関するかぎり、僕もまったく同意できませんが、丸山真男をその点だけで全否定するような議論にならないことを願っています。 僕が丸山真男以上に敬愛してきた加藤周一も鶴見俊輔も、福沢評価については基本的に丸山と同様です。 だからといって、加藤周一や鶴見俊輔を全否定などできないのと同じでしょうか。 本当は僕もNHKドラマを観た上で何か発言すればいいのでしょうが、普段からテレビを観る習慣がないので、とてもナショナリスティックな結論が透けて見えるこんなドラマを観る気が起こりません。 酔流亭さんの健筆にますます期待をするばかりで申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
髭彦さん、おはようございます。
丸山真男は、なんだかんだ言ってもやはり立派な知識人だったと私も思います。彼の著作のいくつかを読んだあとはまわりの左翼党派の活動家たちの言動がひどく幼稚に聞こえた記憶があります。 福沢諭吉については、丸山は福沢を論じることを通じて自分を語っているようなところがあって、それが彼の福沢論の魅力であると同時に、福沢の実像とはズレてしまう結果になってしまったのでしょう。
酔流亭さん、こんにちは。
つけ加えれば、戦前に「小日本主義」を掲げ、大日本帝国主義の放棄を迫った、あの石橋湛山の福沢評価も同様でしたね。
髭彦さん、こんにちは。
詳しいことは知らないのですが、湛山が早稲田で師事した田中王堂が福沢諭吉から深く影響を受けた人だと聞きました。 自民党総裁、総理も務めた湛山の「小日本主義」をどう評価するかは左翼の間では意見が分かれるのでしょうが、私は湛山が好きです。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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