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昨夜は9時半までの勤務で、自宅近くのJRの駅まで帰ってきたのが2時間後の11時半ごろ。激しく雨が降る中を妻が駅まで車で迎えに来ていてくれた。原発事故があってから雨にはなるべく濡れたくないから助かった。 寝る前にすこし酒を飲む。夕刊(我が家の購読紙は「朝日」)を開き、連載小説『青銭大名』の載っているページをまず捜した。2ページ目の下段にあった。織田信長の父・信秀を、彼の軍師を務めた男の目から眺めたこの小説は昨夜が最終回(東郷隆 作)。 勃興する商産業ブルジョアジーにいかに足場を置いた大名で織田家があったかが描かれるものと、「青銭」と冠した作品名からして期待したのであるが、この点では突っ込み不足という読後感は否めない。もっとも、経済に下手に首を突っ込むと話が込み入ってきて読者に逃げられてしまう。司馬遼太郎の『国盗り物語』は前半が斉藤道三、後半は織田信長が主役だから、似た対象を描いた傑作だが、あの大家にして経済のことには深入りを避けている。歴史家と小説家とは違うということだろう。 しかし、『青銭大名』では主人公の妻となる蓬子(よもぎこ)という女性(ここは是非にょしょうと読んでください)がじつに可愛らしかった。これは村上豊氏による挿絵の力もあずかっていたろう。酔流亭は彼女に逢いたくて毎晩この連載小説を読んでいたようなものだ。 戦国武将の殺し合いに嫌気がさして織田家を出奔した主人公夫婦が船で伊勢に向かうところで了。 さて、続いて紙面の上のほうに視線を上げると、『窓 論説委員室から』というコラム。記者が持ち回りで短い文章を書く欄である。昨夜のタイトルは『アマゾン星域の戦い』となっているから、なんだSFの話題かと読み流していくと、こんな文章にぶつかった。 「・・ネット上の『青空文庫』は、著作権にふれない名文をボランティアが電子化して公開している。歴史家・服部之総さんの傑作『黒船前後』を私は青空で知り、もっと読みたくて岩波文庫版を取り寄せた」。 コラムの題にあるアマゾンとはネット通販のあの会社のことで、出版・流通の電子化のことを話題に取り上げているのであった。それにしてもネットで服部之総の随筆の魅力に目を開かれたなんて、うれしいねえ(このコラム執筆は中島泰記者)。 わがくに中世から近世における市民層の成長に誰よりもはやく着目し、織田信秀の息・信長が着手した統一事業をブルジョアジーに片足をかけた初期絶対主義と喝破したのは他ならぬ服部之総である。 まったく偶然ながら、この日、酔流亭は通勤電車の中で『服部之総著作集④ 絶対主義論』を開いていた。 ※関連する過去ログとして ☆『丸谷才一さんが語る服部之総』(09年11月26日)
by suiryutei
| 2011-11-20 09:36
| 文学・書評
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