新人事制度 大阪での報告①~③
最新の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
カテゴリ
記事ランキング
以前の記事
2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 more... 検索
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
以下の文章は新聞『思想運動』2011/12/15発行号に載ったもの。「時代と切り結ぶ銘文・銘言」という連載コラムの第140回目である。暮れにパソコンを買い換えたり、また年末始の忙しさにかまけてブログへの転写が遅くなりました。前半が引用文、後半が酔流亭の文章です。 ![]() (中略) 「しかるにこれによってマニュファクチュア段階の資本主義が急速に次の段階にむかって温室的に助成されればされるほど、その助成者たる封建的絶対主義政権にむかって闘われるところの『資本』を主導者とし、被圧迫農民をエネルギーとするブルジョア革命への道もまた切迫してくる。絶対主義の形成過程と絶対主義打倒の過程が同時に進行する。『明治維新』とよばれているものは、この二重の過程の相克であり、たたかいであった」。 (服部之総『近代日本のなりたち』青木文庫) 維新史に振るわれた科学的分析の斧 下山三郎の労作『明治維新研究史論』(御茶ノ水書房 1966)にしたがえば、明治維新によって成立した政体を絶対主義と最初に規定したのは『明治維新史』(1927)における服部之総である。20年後の『近代日本のなりたち』では維新の時代区分を1853年(嘉永6年)から筆を起こし、1890年(明治23年)のいわゆる外見的立憲主義の成立までとする。明治10年代に高揚した自由民権運動はわが国におけるブルジョワ民主主義革命運動であり、大日本帝国憲法に立憲主義的体裁を施すことに成功したけれども、明治絶対主義はその民主主義革命運動を弾圧と懐柔で絞め殺すことで地歩を固めた。絶対主義の形成とブルジョワ民主主義革命という相反するものの同時進行・二重の過程として明治維新を捉えることが日本の近代とは何であったかを掴む鍵だろう。そして勝利したのは絶対主義なのである。野呂栄太郎、羽仁五郎らとともに服部之総が岩波『日本資本主義発達史講座』(1932年~33年)に集ったとき、かれらが対峙したのはこの絶対主義権力だった。同時に、その絶対主義はすでにチューダーやブルボンの古典的なそれではない。日清・日露の戦勝が日本の資本主義を太らせた。産業革命を急スピードで通過して資本の集中・独占が進み、絶対主義の外皮の内には独占資本主義=近代的帝国主義が成長していたのである。しかるに、野呂・羽仁もそうだが山田盛太郎、平野義太郎ら講座派の主流的見解にあっては、日本近代の封建性・後進性に目を奪われるのあまり、他方での資本主義成長のテンポの早さを見誤った憾みがある。こうして服部之総の講座派内部批判が「幕末=厳密なる意味でのマニュファクチュア段階」説として提出される。すなわち幕藩体制下での資本主義の自生的成長に着目することによって、その後にも至る日本資本主義の動きをダイナミックにつかむことに成功したのである。ここで服部が言うマニュファクチュア段階とは産業革命前夜の資本主義。機械化はまだされていないが、一定の規模を持つ作業場で相当数の労働者が分業で協業している。江戸時代後期の織物業や醸造業をイメージしてみればよい。これら産業の経営者たるマニュファクチュア・ブルジョワジーこそが明治維新の主導力であった。 それにしても服部の内部批判がなければ講座派マルクス主義はもっと痩せていて、大塚久雄ら後の世代に影響を与えることも少なかったろう。それは講座派理論に楕円の膨らみをもたらした。服部之総は1901年、島根県の浄土真宗の寺の長男に生まれる。その生まれのせいか親鸞や蓮如についての著述もある。もちろんマルクス主義の観点で書かれたもの。1956年、55歳での早い死であった。亡くなるすこし前の1954年に理論社から出た『著作集』(全7冊)はその後も版を重ねたようだから今でも古本屋に揃いでよく置いてある。ただし『近代日本のなりたち』はそこには収められていない。やはり著作集から抜けている『明治維新史』がかれの代表作と目されることが多いが、同書は服部史学の出発点ではあるけれども到達点ではない。まず『なりたち』にあたられるのがよいかと思う。 『近代日本のなりたち』(服部之総 1948年) ■
[PR]
by suiryutei
| 2012-01-09 09:30
| 文学・書評
|
Trackback
|
Comments(0)
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。
ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
|
ファン申請 |
||
外部サイトRSS追加 |
||