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『伝送便』誌の今月号に寄稿した文章を転写します。ところで文中に引用した「古井戸の芯真っ暗に震災忌」という句の作者であるところの(美佐子)という人のことが誰なのかわからない。詩歌の世界に昏い者のかなしさだが、心に残った句であるので、不明のまま引用した。御存じの方がいらしたら、ご教授ください。また文中で安倍晋三氏を名指しで批判したけれど、これを書いたのは先月20日ごろで自民党総裁選が行われたのは26日。安倍氏が新総裁(つまり今度総選挙があれば総理大臣になる可能性が一番高い人)になるとは思っていなかった。この数週間の間にも世の中はガクッと右傾化したみたいだ。 それはさておき、今年の震災忌(九月一日)を前後して私が気になったのは、関東大震災に際して帝都で引き起こされた朝鮮人虐殺について触れたマスメディアは目にした限りでは皆無だったことである。わずかに詩人の高橋睦郎氏が『季をひろう』というコラム(9/1朝日新聞朝刊)で 古井戸の芯真っ暗に震災忌(美佐子) という句を紹介しているのが目を引いたが、これは大杉栄ら三人を憲兵が殺害して古井戸に棄てたことを詠んだものだ。そのころ「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」というデマに踊らされて、自警団らによって多数の無辜の朝鮮人が虐殺された(犠牲者数は吉野作造の調査では二七一一人。これは個人の努力が及ぶ範囲での調査で、六千人を超すという推計もある)。 李明博・韓国大統領が竹島に上陸したのが八月十日。「天皇が韓国に来たいなら心から謝るがいい」という発言は十四日に飛び出したのだから、今もそうだが九月は反韓ナショナリズムが燃えたぎっていた。挙国一致で外に当たらなくてはならないとき、こちらの負い目となるような記憶は封じておくに如くはないという判断が働いたのであろうか。そして、このような意図的な健忘症こそが日本と隣国の関係をこじらせていることに私たちの多くは気づいていない。竹島が日韓どちらの「固有領土」かなんて諍(いさか)いは土台ナンセンスである。「固有な」とは「本来持っている」という意味。半島と列島のほぼ真ん中に浮かぶ、あの小さな島がどちらにとっても本来の持ち物などであるわけがない。ありようは、相当の昔からどちらの側の住民も航海や漁にあの島を利用していたのである。 そんなことより問題なのは、隣国の大統領が天皇に触れた途端にこちら側の「世論」が硬化したことのほう。天皇が尊崇の文脈以外で語られることに私たちの多くは耐えられないのである。ところが戦前の大日本帝国にあっては最高の権力者は天皇と憲法に明記されている。朝鮮の植民地化も中国に仕掛けた侵略戦争も天皇の名において遂行された。戦後になって憲法は民主的なものとなり、天皇も政治から遠ざけられたけれども、天皇制そのものは残った。これが私たちの目を曇らせているのだ。天皇が批判の俎上に載せられることに耐えられないとすれば、天皇の名のもとに行われた侵略を本気で反省することなど永久にできないではないか。対韓世論の硬化に悪乗りして、従軍慰安婦についての「河野談話」をひっくり返そうと安倍晋三ら保守派が蠢(うごめ)きだしている。前述した意図的健忘症のもっともおぞましき例である。七月十六日の脱原発十七万人集会に京都から駆け付けた瀬戸内寂聴さんが壇上で大逆事件について言及したのを思い出そう。幸徳秋水ら十二人が死刑とされた理由の「天皇爆殺計画」などはデッチ上げ。しかし当時の日本人の大多数が囚われていた天皇崇拝から彼らが自由であったのは間違いない。いま私たちはその心意気に倣わなければならぬ。
by suiryutei
| 2012-10-04 08:58
| 文学・書評
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