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これも『伝送便』今月号に書いた記事です。 本誌の全国編集委員会に今回はじめて参加した。十一月十七日と十八日の二日間。会場は東京都内の麹町区民会館である。このあたり、都心の一等地で近隣には外国の大使館がたくさんあった。イギリス、アイルランド・・・。二日目の十八日、編集委員会が終わって昼食を摂りにファミレスに向かうとき機動隊の装甲車が停まっているのを見かけたが、これはイスラエルの不当かつ野蛮なガザ攻撃に抗議して同大使館前に集まった人たちに対するものだったようだ。そのことを、福岡から編集委員会に参加したSさんからのメールによって後で知った。 そんな土地柄らしく、麹町区民会館はホテルのような瀟洒な建物。そしてロビーには麹町に縁のある人たちの写真が掲示されている。たとえば中江兆民。フランスから帰国してから、この地に住み、仏学塾を開いた。そんな中に、堺利彦と真柄の父娘の写真もあった。堺利彦はわがくに社会主義運動の父と呼ばれるひと。(近藤)真柄はおなじく婦人運動の先駆け。女性としては日本で最初にメーデーに参加したほか、戦後も女性解放のため尽力した。 歴史上の人物として彼方に望見していた彼と彼女を私に親しい存在にしてくれたのは、一昨年刊行された書『パンとペン』(講談社)である。堺利彦の人となり、初期社会主義運動に携わった人物たちが活写されている。親友・幸徳秋水を大逆事件で喪った堺は、事件後、四谷南寺町の自宅に売文社の看板を掲げた。四谷と麹町ならすぐ近く。この売文社は、大逆事件のあと弾圧が厳しくなって逼塞する社会主義運動の同志たちに仕事をまわすことと、社会主義の旗を守って闘うという二つの仕事を果たす。『パンとペン』という書名の由来である。生きる糧としてのパンと、闘いの武器としてのペンと。出版、代筆そのほかペンに関わることならなんでもやった。 さて、編集委員会から帰宅してから自分のブログに堺利彦と真柄の写真を見かけたことを書いた。するとすぐ、北陸に住む友人からブログにコメントが寄せられた。『パンとペン』を書いた黒岩比佐子さんの三周忌が十一月十七日だったのだという。驚いた。堺利彦たちをいわば再発見させてくれた当の人のちょうど命日に私はあの写真を見たのだ。しかもその場に導いてくれたのは『伝送便』の全国編集委員会。その誌面に『パンとペン』の書評記事を書いた媒体である(本誌去年二月号)。 黒岩比佐子さんは一九五八年生まれ、『パンとペン』執筆中に膵臓癌を発症し、二〇一〇年十一月十七日に亡くなる。いま我が家の本棚から同書を抜いてきた。一〇年七月の日付が印された「あとがき」にこうある。 「はたして最後まで書けるだろうか、という不安と闘いながら、なんとかここまでたどりついた。死というものに現実に直面したことで、『冬の時代』の社会主義者たちの命がけの闘いが初めて実感できた気がする」。 奥付を見ると第一刷の発行は同年十月七日となっている。亡くなる一月ちょっと前だ。病床で手にとることができたのを本当によかったと思う。誠実な著述家が我が身の寿命を縮めることと引き換えに世に出した本から私たちが教えられることは多い。たとえばいかに困難な時代であろうとユーモアを忘れぬこと。
by suiryutei
| 2012-12-03 22:14
| 文学・書評
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