新人事制度 大阪での報告①~③
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『伝送便』誌では、郵政の「新たな人事・給与制度」に反対するキャンペーンのひとつとして、同制度の分析記事を新年号から連載する。その第一弾である。 去年(十二年)四月に再提案されたとき「新たな人事・給与制度」の中に新しく仕組まれたのが「新一般職」である。当初、旧郵便局会社だけに提案されていたのが、このときグループ全体に導入する考えが示された。それはどのようなものか。そのごJP労組との交渉における会社の回答をJP労組新聞号外(九月一〇日付)の討議資料から引く。 「(新)一般職は、期待役割に応じた処遇、キャリアパス、研修制度を構築するコース制の導入に併せ、従来の枠組みでは十分に対処しきれない、社会的な多様な働き方のニーズの高まりに応え、人材の確保とそれを通じた生産性向上を図る観点から、各社統一で新設するコースである。 具体的には、業務内容・勤務地を限定するコースとして、担当業務は標準的な業務とし、期待役割として、担当業務を効率的に遂行し、安定的かつ継続的な組織運営に貢献することが求められ、役職登用及び転居を伴う転勤を行わないこととしている。 このような職種・勤務地等が限定的な正社員形態の導入については、厚生労働省の『多様な形態による正社員に関する研究会報告』においても示されており、<非正社員にとって正社員転換の機会を拡大する可能性があり、正社員にとってもワークライフバランスの実現の一つの手段となりうる>とされているところである。 なお、給与水準は、期待役割を踏まえ、最終年収時で現行の月給制社員と正社員(担当者クラス)との中位程度とし、また、転居を伴う転勤がないことから、当該勤務地域の給与水準に見合った適正な水準とするため、調整手当については、独自の支給率を設定することとしたい。 また、(新)一般職は、新たなコース区分であることから、原則として新規採用と期間雇用社員からの正社員登用で構成するとともに、本人希望に基づき、一定の条件を満たせば、(新)一般職から地域基幹職へのコース転換を行うことも可能としている」。 それはシェアリングか? これを私たちはどう考えたらいいのだろう。正直なところを言うと、初め私は「新たな人事・給与制度」そのものは格差の拡大になるから反対だけれど、この新一般職に限っていえば、あながち否定できないのではないかと思った。それで正社員登用のハードルが下がるならいい。会社回答にある<非正社員にとって正社員転換の機会を拡大する可能性>といった文言に目が吸い寄せられた。〇八年の調査では郵政の四二・一歳、勤続二〇・二年の正社員の年収は約六百五〇万円。日本郵便の有期雇用社員約二〇万人の平均賃金額は一〇年に日本郵政が国会で回答したところによると年間一八七万~二六一万円。新一般職は最高年収になる五〇台なかばで四五〇万円弱と試算されている。従来の正社員より二百万も減るけれど非正規のまま置かれるよりは前進だと、そう思いかけた。 どうもヌカ喜びであったようだ。というのは、従来の正社員と比べての新一般職の待遇の低さも問題ながら、その新一般職であっても登用の門は狭いままに置かれるだろうからである。会社の回答全体を読めば明らかなように、会社は人件費の原資を減らそうとはしても増やすつもりは全くないのだ。ならば、新たに作られる低賃金正社員といえど、急に増やしはしない。二〇一〇年度の第一回正社員登用合格者の五社(当時)合計は八四三八人だったが、原資を変えないで新一般職を導入しても登用数はそれにちょっと毛の生えた程度の数字にとどまらざるをえぬ。登用のハードルが下がるというより、登用された正社員の待遇が下がるというほうが本質。正社員の周りに、それより多数の非正規社員、その待遇は底辺に貼りついたままという現在の状況が変わることはない。ただ、その正社員の内部構成において低賃金の新一般職が徐々に増えていくのである。JP労組との交渉では「機会を拡大する可能性」と言い、また郵政産業ユニオンとの交渉においては「労働力構成、すなわち非正規職の減少もありうることを示唆」(郵政産業ユニオン号外討議資料)したそうだが、「可能性」とか「ありうる」とかの曖昧な言い方にとどめているのは、正社員化の前進と言えるほどのものにはなりようがないのを会社のほうから漏らしているのである。先の話の退職金はシュミレーションしているのに(定年まで働いて約一二〇〇万円)、登用枠の具体的数字はいまだ不明。 私鉄広島電鉄の場合 広島電鉄の例が参考になるかもしれない。私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部(組合員約一五〇〇人、私鉄総連傘下)は、近年、非正規労働者の正社員化を進めたことで広く知られる。会社が正規ではなく契約社員を採用したいと提案してきたのは二〇〇一年。これに対し、広電支部は翌二〇〇二年から「正社員化」の闘いに取り組む。「採用三年後の正社員への登用制度」を要求してスト権を確立して会社に迫り、これを実現した。ところが、契約社員から正社員になっても、会社はこれを「正社員Ⅱ」として賃金など労働条件は契約社員のときと変えなかった。たしかに有期雇用から雇止めの心配はない無期雇用になったが、待遇は低いままである。 ここまでの展開は、いま郵政がやろうとしていることとちょっと似ている。広電の「正社員Ⅱ」というのは郵政の新一般職みたいである。違うのは、「正社員Ⅱ」は契約社員と賃金は変わらないが新一般職は昇給があるから将来的には非正規より賃金が高くなる(しかし従来の正社員よりはるかに低いのは先に見たとおり)。もうひとつ、広電は三年たてば全員が「正社員Ⅱ」(無期雇用)になったが、郵政では新一般職採用はごく限られた数だろうというのも、先に見たとおり。 本質的な違いはここから。広電支部は今度は全員を「正社員Ⅱ」ではなくちゃんとした正社員にせよと要求したのである。会社は、今日の郵政と同じで「原資が無いからできません」と首をタテに振らない。そこで広電支部はまたスト権を確立してさらに迫った。そうした闘いの結果として会社から原資三億円を持ち出させる。会社員一五〇〇人の地方企業だから毎年三億円の持ち出しは少ない額ではない。しかし、それだけでは全員正社員化のコストに足りないから、足りない分は従来の正社員の分を若干削って充てることにした。マスコミの報道では、この正社員の取り分を削ったという面ばかりを強調するきらいがあるけれども、もっと重要なことは会社から持ち出しをさせたこと、それもストを構えてこれを実現したということだ。 新一般職という毒まんじゅうにとびつく前に、そういう闘いをこそ私たちは作らなくてはならない。しかるに、競争と格差をこれまで以上に持ち込むことで団結の土台を最終的に解体、闘うどころではない職場にしてしまうのが「新たな人事・給与制度」である。
by suiryutei
| 2013-01-06 18:15
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