新人事制度 大阪での報告①~③
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今回から3回に分けて、4月28日に大阪で行った報告を掲載します。2月の東京での学習会報告と重なるところもありますが、三か月近くの間に情勢の進展があり酔流亭なりに勉強したこともある。それを書き加えました。報告の序盤と終盤はかなり書き改めてあります。 ![]() 東京から来ました酔流亭です。「講演」と言われると引いてしまいまして、大阪の闘いにこちらこそ学ばなくてはとかねてから思っております。 私は20歳のとき東京中央郵便局に入りまして、ここで15年働いてから新東京局に移りました。そこでずっと、もう20数年おります。いま58歳です。今日のレジメですが、東京で100部ちょっと印刷して持ってきました。見たところ100人くらいいらっしゃる。足りてますでしょうか? それから、このピンクのチラシは東京で2月に学習会をやったとき呼びかけに作ったもの。今日使うわけではありません。東京ではこんなことやってますと参考までに持ってきました。 本題に入ります。 2008年1月 JP労組第1回中央委員会「頑張った者が報われる制度を」 2009年4月 「人事・給与制度の概要(案)」提示 2012年4月 交渉再開(制度再提案) 2012年11月 「第四次要求書」への回答 Dを「相対選考」から「絶対選考」に 2013年1月 「労働力政策」第一次回答 「新一般職」44.000人(郵便事業) 2013年2月 JP労組第11回中央委 「新人事制度」受け入れの流れ強まる 2013年3月 産業競争力会議4回会合 「多様な正社員を」(安倍総理挨拶) 2013年3月 「労働力政策」第二次回答 これまでのごく大雑把な経過は上の通り。2009年から12年まで3年間空いているのは、このあいだに民主党中心政権への(一時的な)交代があり郵政民営化法も宙に浮いて、会社の腰が定まらなかった。しかし、じつはこの「空白の3年」の間に財界の雇用戦略に修正が施されています。1995年に日経連が「新時代の『日本的経営』」という文書を出し、この戦略文書に沿って非正規雇用の野放図な拡大が進んできたわけですが、2010年ごろから「多様な正社員」ということが言われ出してくるのです。(年表)下から二番目の産業競争力会議の3月15日の会合では、挨拶に立った安倍晋三総理大臣もその中でこんなことを述べています。 「多様な働き方を実現するため、正社員と非正規社員への二極化を解消し、勤務地や職種等を限定した、多様な正社員のモデルを確立したいと思います」 郵政における「新一般職」は、09年の当初案では郵便局会社だけに提示されていたものでした。それがここへきて新人事制度の目玉のようになってきた背景には、この安倍総理の発言に示されたような財界の意向があります。すなわち非正規雇用の拡大はとことんやったので、これからは正規雇用にももっと切り込んでいこうということです。この会合では、安倍総理の挨拶に応えるように、長谷川閑史という人(武田薬品工業株式会社代表取締役社長)が「現行規制の下で企業は、雇用調整に関して『数量調整』よりも『価格調整』(賃金の抑制・低下と非正規雇用の活用)に頼らざるを得なかった」と不平を鳴らしています。正社員をもっと解雇しやすくしなければ。安倍総理が2月28日に国会で行った施政方針演説に述べた「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」という、その流れの中で「新しい正社員」というものも打ち出しているのです。 さて2009年4月の「新人事制度」当初案と今日では若干の“メリハリ緩和”が行われてきたことは皆さんご存知のとおり。たとえば「役割基本給」と「役割成果給」の比率が当初は7:3だったのが8:2になるなど査定部分の幅が狭められました。現行では基本給に査定部分が占める割合はおおよそ9:1です(会社が提示した資料によれば基礎昇給87%、加算昇給13%)。 なかでも昨年11月に出た「第四次要求書への回答」で、それまで最低ランクのE(▲2号俸)だけは絶対評価・絶対選考で、あとA~Dまで絶対評価・相対選考としていたものをDも絶対選考にした。昇給で▲1号俸になるD評価は当初10%が割り振られていて、「いくら頑張っても10人に1人は▲になる」と慌てていたのが200点満点で90点以上とればパーセンテージに関係なくC評価(全体の60%、プラスマイナス〇)にとどまれることになった。昨年度でみれば90点以下は5.3%だったそうです。そのうち60点以下は1.5%でした(60点以下のうちで全体の1%がE評価)。今年2月のJP労組第11回中央委員会で妥結承認へ向けての流れが強まったのはこれが大きい。 しかし、これらの「緩和」は、会社としてそう痛くない「譲歩」であって、制度導入の合意を取り付けるためのJP労組中央との「出来レース」ではないか。私たちはそう考えます。「新人事制度」の能力主義・成果主義の毒は、この程度の数字の細工ではいくらも薄められはしない。査定部分が一割ちょっとの現行でも月100時間を超す時間外労働が頻繁に行われ、数字には顕われないサービス残業が蔓延し、自爆営業が止まらない。ここに従来に倍する「競争へのインセンティブ(動機づけ)」が持ち込まれれば職場がどうなるか。 たとえば「ポイント制度」。地域によってバラツキはあるのでしょうが、外勤で時間内ではとても配りきれない郵便物があるとして、しかし超勤が多かったり応援を受けたりしていればポイントがつかない。では、ポイントを稼ぐにはどうするか。まず考えられるのは交通ルールも無視するような猛スピードでの配達。しかし、その結果、誤配したらポイントは帳消しどころかマイナス。万が一交通事故を起こせば大マイナスです。ならば、次に考えられるのはサービス残業が増えるだろうということ。実際には時間外まで働いても残業と届け出ない。そうして時間内に処理できる優秀な社員だと粉飾する。そうしなければポイントが貯まらない。班単位で仕事をする場合は仕事の遅い人は“針のムシロ”だ。「こいつがいるから班の成績が上がらない」と。2005年、当時の郵政公社は全国で5.2000人強を対象に、金額にして32億円強の残業代を追加支給しました。一労働者の告発が契機となって不払い残業の実態調査が行われたからです。この数字でさえ「氷山の一角」とも、今日また不払い残業が増えているとも言われます。現状でもこうなのです。もっとサービス残業を増やすような人事制度になったら、どうなるか。考課が公正なら競争そのものはいいことだと言う人がいます。JP労組中央の考えはそう。しかし、仮に公正な査定であったとしても(これも困難なことですが)、競争をこれ以上けしかけること自体に私たちは反対です。 “出来レース”の背景にあるもの ところで、こうした「出来レース」を会社と組合中央が演じてみせなければならない背景には何があるか。競争を忌避する気分がすくなくとも現場段階ではまだあって、制度導入の同意を取り付けるには細工が必要だということではないか。限りなく御用労組化しながらも、まだ完全な御用労組にはなりきれていないJP労組。それは何故なのか。会社の資料によれば、自動昇給と査定昇給のウェイトの世間相場は2008年時点で会社査定分が79%、自動昇給分はわずか21%とのことです。郵政の現行は査定13%に対し自動昇給87%。この数字を信頼するならば、郵政の賃金では査定部分は世間相場に比べればたしかに低い。世間ではホワイトカラーもブルーカラーも含めての数字なのに対して郵政はたとえば郵便事業などほとんどブルーカラーだという特殊性もこれにはあるでしょう(欧米ではブルーカラーには査定が無いのが一般的だそうです)。ともあれ、これまで査定部分が比較的小さかったことがJP労組をして完全な御用労組になりきれずにこさせているのではないか。「競争よりも団結を!」と言える空気が、どんどん掘り崩されながらもまだ少しは現場にある。じつは、これが制度導入の急がれる理由のひとつでもあります。会社は、査定を拡大し、競争をもっと持ち込むことでこの空気を最終的に一掃したい。このことは、新人事制度反対の闘いは団結の基盤を守れるかどうかの生命線に関わる闘いであるということです。 会社が譲歩した理由としてもうひとつ考えられるのは、「新一般職」を早く導入したいからではないか。新たに作られる低賃金正社員と従来の正社員を入れ替えていけばいくほど人件費をカットできる。いま能力主義をいくらか薄めてもこっちを早くやったほうが得と考えたのではないでしょうか。制度をいったんスタートさせてしまえば、能力主義の要素はあとあと膨らませていくことができる。というか、「新一般職」を入れて格差をもうひとつ増やすことがのちのち競争促進の物凄いアクセル効果になります。 ええと、こんな感じでしやべっていていいでしょうか。今朝、8時半の新幹線で東京を発ったのですが、駅で缶ビールを2本買い、これを飲み終えたころ車内販売が廻ってきました。可愛いらしい売り子さんです。で、もう1本買って飲んだ。今こんな時間(午後2時を過ぎている)ですから私の酔いはすっかり醒めているのですが、皆さんは一番眠い時間じゃないですか? 一方的に聴かされるばかりというのも辛いでしょうからなるべく早く切り上げて討議をしたい。もうしばらくお付き合いください。 (つづく)
by suiryutei
| 2013-05-02 21:35
| ニュース・評論
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