新人事制度 大阪での報告①~③
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会社が1月に明らかにした「労働力政策」(3月25日に第二次回答出る)では去年4月時点の郵便事業部(当時の事業会社)の社員数を181.000人であったとし、そのうち正社員は98.000人(54%)であったとしています。すると非正規労働者は月給制・時給制あわせても83.000人ということになる。ところが、その一年前の2011年4月時点で会社が明らかにした社員数によれば、事業会社では非正規雇用は152.300人いたことになっています。 そのあと一年の間に70.000人近くも減った計算です。ちょっと多すぎる数字で、会社が何か数字の操作をしているんじゃないかとさえ疑いたくなりますが、ともかく非正規職にものすごいリストラが強行された。会社が「あるべき姿」として今度出してきた数字は、社員総数159.500人、そのうち正社員は94.000人(59%)。さらに、その正社員のうち44.000人(47%)を「新一般職」と想定する。 すなわち、以下のような構成。 ○地域基幹職(従来の正社員) 50.000人 ○新一般職(新たに作られる正社員) 44.000人 ○非正規雇用(月給制・時給制とも) 65.500人 ここでも非正規雇用の減らされかたがひどい。83.000人→65.500人です。非正規が減ったぶん正規が増えるのなら「正社員化」が進んだということだが正規も4.000人の減です。新人事制度は正規・非正規双方のリストラの上に打ち建てられようとしているんだということがここに露わです。社員総数では実数と「あるべき」数字の差は21.500人。今日でも、たとえば私が勤務する新東京局では月100時間以上の時間外労働をやった社員が去年12月には2人いました。45時間以上の時間外労働はこの2人を含めて43人です。45時間というのは、これを超したら危険だという厚労省の判断基準。100時間超なんてのは過労死ラインだ。危険ラインを超えて働かせなければ業務がまわらないのです。人減らしが激しくて、服務線表どおりに休息をとったら時間によったら社員が誰もいなくなる場合もあります。不眠の深夜勤を三晩連続で指定する。夜また出勤という深夜明けに超勤を命令する。もっぱら非正規の人に。健康のことなんか考えていない。こういうことが「人がいないから」ということでやられている。それでもこのさき全国181.000人から21.500人を減らすという。これだけの減員を実現するための鞭、減員しても業務を回していくための鞭がまさに「新人事制度」に他ならない。 ところで三つのグループ分けというと、冒頭に触れた「新時代の『日本的経営』」が思い出されます。そこでは労働力の以下のような3グループ化が提言されていました。 ①長期蓄積能力活用型(無期雇用) ②高度専門能力活用型(有期雇用) ③雇用柔軟型(有期雇用) これを重ねてみると、郵便事業における労働力構成では「新時代の『日本的経営』」での②グループがほとんど見当たらない。エキスパート等500人というのがあってそれにあたるのでしょうが極めて少ない。そのかわり①の無期雇用(正社員)が二つに割れる。①ダッシュが新たに作られて、それが「新一般職」ということになります。 この①と①ダッシュの間の格差は歴然としています。①ダッシュでは50代なかばの年収が一番多くなるときでも450万円くらい(平均年収ではなく最高年収)。①ならば主任でその年齢なら700万円前後です。最高450万円というと平均ならどれくらいになるか。会社はその数字は出していないと思いますが、ドンブリ勘定しますと多めに見て350万円くらいでしょうか。我が国の民間企業の従業員の平均年収はどれくらいかというと、2000年が461万円でした。それが年々減っていって2010年が412万円です。49万円つまり約50万円下がっている。また、これは財務省が明らかにしている数字で資本金10億円以上のいわゆる大企業における従業員の平均年収は2011年は553万円。 去年の春「日本郵政」社長は自社の社員の給料は物流他社のそれより2割がた高いと不平を鳴らしていました。自分のところの社員の給料がいいならそれを自慢したっていいはずですが、彼は不満であった。「新一般職」が多数になった暁には、今度は他社の経営者たちは郵便に比べて自社の社員の給料は高すぎると言い出すのでしょうか。そうやって「底辺に向かっての競争」に拍車がかけられます。 さて①ダッシュ=「新一般職」44.000人というのは2012年時点での実数に対して会社が考える「あるべき姿」として対置したものであって、制度がスタートすればこの先は新採のほとんどと登用の全てを「新一般職」にするというから将来的にはその比率はもっと高くなる(7割などと囁かれています)。注意しなくてはならないのは、③にあたる非正規雇用をどんどん①ダッシュに登用して、いずれみんな(不充分ながら)正社員にするというのでは決してないということ。日経連提言の基本的考えは郵政の労働力政策にも貫かれていて、正規・非正規を分断する方向はハッキリしている。①が退職等で減った分をまた①として採るのではなく①ダッシュで採るから正規雇用の中で①ダッシュは徐々に増えていくけれども、①と①ダッシュの間に格差があるように、それ以上の格差は①及び①ダッシュ(正規雇用)と③(非正規雇用)の間には厳存したままです。格差は残されたまま(新たにも作られて)全体が低くなっていくのである。 それでも、登用の一歩手前まで来ていると思われる人たち(たとえば一昨年段階では旧事業会社に4.300人いた月給制社員)にとっては「新一般職」が登用のハードルをいくらかは下げるということにはなるのではないか。JP労組は月給制社員の希望者は全員「新一般職」にせよと要求しています。「労働力政策」第二次回答では会社はこれに首を縦にふらず、これまでに準じた選考とすると回答していますが、5年後の構成として「新一般職」13.200人(正社員全体では94.020人)という数字を出しています。これまでよりは間口がすこし広がるのは間違いない。これをどう考えるか。ていねいに討論していきたいところです。私たちの考えでは、そういう面はあるにしろ、導入にはやはり反対したい。もうひとつの格差が作り出されるし、「新一般職」の労働条件はあまりに不充分です。 「新人事制度」の下で進行するのは それにしても5年後の13.200人と「あるべき姿」の44.000人とでは随分乖離があります。このそれぞれの数字に会社の二つの本音が出ている。ひとつは、たとえ「低賃金正社員」であれ正社員化なんかなるべくやりたくない。それが5年もかけて13.000人ちょっとという数字。もうひとつは、しかし従来の正社員を低賃金正社員に入れ替えるのであれば大歓迎ということ。それが44.000人という数字です。正社員全体の数は5年後と「あるべき」ではほとんど変わらないのです(20人の減)。正社員化といえば普通は正社員を増やすことだと思われますが、ここではそうではない。賃金の安い社員に入れ替えるだけだ。問題は現実的数字(?)としての13.200人を「あるべき」44.000人にどうやって近づけていくかだ。つまり従来の正社員をいかに減らすか。一昨年の4月と去年の4月では正社員の数は4.300人減っている。多くは定年退職していったわけですが、“団塊の世代”後が退職していくこれからは、もうすこしペースが落ちる。そのペースで減っていった分を新一般職で補っていくだけなら「あるべき労働力」の新一般職44.000人までは遠い道のりです。今日ここにいる池田実さんは団塊世代が大学で全共闘運動をやっていたころ高校でバリケードストライキをやって退学になった。だから彼はもうポスト団塊世代です。その池田さんが今年定年だ。 ところが新人事制度の下では競争に拍車がかかり労働密度が高められ、仕事の牧歌性など全く失われてしまうから、それに耐えられず早期退職を申し出る人が増えるだろう(先出のポイント制での“針のムシロ”を想起)。あるいは55歳以上には「短時間勤務制度」というのも用意される。これはいま定年退職した人に適用されている「再任用」の前倒しみたいなものですね。半分の労働時間つまり週平均20時間でいい。もちろん賃金もそのぶん減ります。生活の心配なく喜んでこれに応じられる50代なかばは、はてどれくらいいるでしょうか? 我が身に引き寄せて考えるに相当疑問ですが、ハードになる一方の仕事についていくのが辛くて泣く泣く応じてしまう人なら少なからず出るでしょう。 地域基幹職50.000人のうち「主任・一般職」は11.000人だけにしたいというから、管理職あるいはそれを目指す人以外のいわゆる「ヒラ社員」はいずれ絶滅種。先に紹介した日経連『提言』は無期雇用でのヒラ社員の存在など許さない。つまり新人事制度を鞭として地域基幹職から新一般職への転換のスピードを上げ、正規雇用の内部で低賃金社員をすみやかに増やし人件費削減をやろうというのが会社の狙いだ。深夜勤が導入されて8年たちましたが、私の職場では導入前、定年まで一年あるいは二年を残しながら早期退職した人がいます。60歳近くになってあんな勤務になったらとても身体がもたないと判断したのでしょう。深夜勤が導入された職場は限られていますけれど、新人事制度の下では全国でそういう事態が起きるのではないか。そして、なんだかんだいっても何かと「守られている」正社員が早期退職に追い込まれかねないような職場では、非正規の人たちはこれまで以上に激しく「使い捨て」されるのは明らかです。「新一般職」に登用される人としても、焦らしに焦らされた挙句に正規雇用にはなったものの仕事はきつくなっているし待遇は以前の正社員よりはるかに低い。こんな登用のありかたで納得できるのか。 私たちは格差なしの希望者全員正社員化と非正規雇用の待遇の根本的改善とをともに要求したい。 こう言えば、「そんな原資がどこにある!」という声が飛んできそうです。しかし、いちばんの問題は、まさに私たち労働者までがそういう考え(原資がどこにある?)に慣らされてしまっていることではないでしょうか。 クルーグマン教授の資本家批判 08年度のノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン(米プリンストン大学教授)が去年12月10日付『ニューヨーク・タイムス』に面白いことを書いています。 「国民所得に占める企業所得の割合が急増した一方で、賃金など労働者への報酬が減っているのだ。・・・資本家は労働者を犠牲にしたうえでかつてないほど大きな分け前をとって、もうけている。・・不平等について、かつて圧倒的に主眼が置かれていたのは、資本家対労働者の対立ではなく、労働者間の分配の問題だった。・・それはもう過去の話かもしれない」。 クルーグマンは左翼でも社会主義者でもなく資本主義支持の論者ですが、それでも労働者同士で奪い合いをやるより企業のべらぼうな利潤が問題だと述べているのです。彼がそう考えるのは労働者の味方だからなのではなく、こんな歪んだことを続けていったら資本主義というシステムがもたないと懸念するからですが、それはともかく労働組合が会社の原資を持ち出させる闘いを組みもしないで「与えられた分」の分け合いだけに埋没していて、どうするのでしょうか。スト権を確立して迫り、企業からも原資を持ち出させて格差なしの非正規全員正社員化を実現した私鉄広島電鉄の闘いなどに私たちは学ばなくてはならないのではないでしょうか(『伝送便』今年1月号記事参照)。 そして、新人事制度反対の闘いと正社員化の要求はここでリンクします。ストを構えるような闘いを創り出していくためには、能力主義・成果主義のこれ以上の浸透を許してはダメなのです。それは団結の土壌を腐らせてしまいますから。 (つづく)
by suiryutei
| 2013-05-03 19:28
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