新人事制度 大阪での報告①~③
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おや残り時間10分です(枠は1時間)。ちょっと急ぎますね。 振り返れば、反マル生越年闘争のあといくばくもたたぬ1981年、「特別昇給制度」というのが導入されました。過去にストライキ参加などで処分され昇給の遅れた人たちの「実損」を回復するということと抱き合わせで「優秀者」に“飛び級”させるという形で査定が入ってくる。ついで郵政の賃金制度で人事考課(査定)が強められたのは1997年スタートの「新昇格制度」です。たとえば「基準日の前一年間に病気休暇、休職または育児休業の日数のいずれかが40日(育児休業については50日)を超えている者」を昇格にあたっての「選考保留要件」にしました。 この「新昇格制度」に対しては、当時、全逓横浜の組合員だった芝久巳さん(小説家・笹山久三氏)が反対のアッピールを全国に発し、私などもそれに応えて署名活動をやりました。当年の全逓全国大会が開催された甲府へ、集めた署名を携えて押しかけていったことを思い出します。 さらに、郵政公社となった2004年、現行の人事制度となりました。能力主義が入ってきて、基本給のうち13%を査定給が占めるようになったのは先に見たとおり。 こうした動き以前の郵政の賃金は、当局による査定がほとんど働いていなかった。第一組合である全逓と第二組合の全郵政とで、全逓所属より全郵政所属を優遇するといった組合間差別はあったけれども、一人一人の労働者の仕事ぶりをみて昇給に差をつけるということはなかった。これが「競争より団結」という気風を職場に育み、1978年末には組合間差別に反対したところの反マル生越年闘争を実現させた。 こうした賃金制度は1946年の「電産型賃金体系」の影響を残したものであったように思います。 電産型賃金体系の功と罪 これは当時の電気産業の労働組合が獲得した賃金体系のこと。日本資本主義史上,労働組合の手で作成された唯一の賃金体系であると言われています。この体系がそのあとしばらく多くの産業に拡がった。背景には戦後労働運動の高揚がありました。生計費を基準にした生活給の考え方を中核とし、能力給の考え方を加味したものです。だから査定もされるけれど、その部分は低かった。 賃金を労働力の再生産費とし、労働力の買い手である企業にその費用を負担させるとしたことは間違っていないと思います。社員(労働者)が年齢をかさね、結婚し子どもも作れば、その家族を養う費用も労働力の再生産費のうちです。だから加齢とともに賃金が上がっていく(定期昇給)のは当然のことです。同時に、これは「同一労働・同一賃金」という要求(原則)とは矛盾します。同じ労働をしても勤続年数で賃金が違うのですから。ほんらい労働者の要求であった「同一労働・同一賃金」(世界労連のスローガンです)が、今日では一定年齢以上の正規労働者の賃金を切り崩すための道具になっている面がある。労働力の再生産費を当該企業(だけ)に負担させようとした考えには、そんなふうに付け込まれる弱さがあったのではないか。「社員であるかぎり生活は保障されるはずだ」という主張は、やはり企業に労働力を売っているのに「正規の社員」とは見なされない有期雇用や派遣の人たちの存在を視野の外に置くことになったのではないか。「電産型賃金体系」が生まれた当時に遡って、また今日の状況に照らして、これをどう考えたらいいのか。これからの方向として一つ考えられるのは、生活給思想では賃金に含めていた養育費や教育費、住居費などを社会化することです。学校の授業料は無償にする。ローンであれ家賃であれ今みたいに住居費にべらぼうな金をとられなくてもすむようにする。そうなれば年功賃金からその部分は削れる。いっぽうで非正規雇用の賃上げを勝ち取り、そうして「同一労働・同一賃金」に近づけていく。逆に言えば、そうしたこと抜きに賃金だけ削らせるわけにはいかない。それでは労働力の再生産が不可能になりますから。 それから、会社による査定は抑えられたといえ、いくらかは入っている。この査定部分が拡大していくにつれ生活給思想は崩されていく。査定を通じて労働者は会社につねに「見られて」いる。働きぶりだけでなく会社への忠誠度まで。これでは「競争より団結」ではなくて「団結より競争」になっていきます。こうして民間企業では「電産型賃金体系」は崩れていった。その過程は日本の労働運動が戦闘性を失っていく過程でもありました。 残り時間5分・・・・。まとめに入ります。 正規と非正規の連帯を はじめ「新人事制度」は正規労働者にかけられた攻撃という受け止めが強かった。私たちもそう考えていました。しかし、見てきたように「新一般職」とは将来世代の極端な賃下げ。その将来世代とはいま非正規に置かれている若者たちです。現在の正社員は自分たちの「現給保障」や「メリハリ緩和」と引き換えにこれを認めていいのか。11中央委議案が明らかにした数字では、期間雇用社員におけるJP労組の組合員数は55.229人です。10数万人いるうちでそれだけしか組織していない。現在の期間雇用社員を将来の「新一般職」候補とすれば、賃金という最も重要な労働条件に関わる議論から圧倒的多数は排除されています。そして「新一般職」によるカッコつき正社員化が進んだとしても、それよりずっと多くの人たちは先行き不安定かつ低賃金の非正規雇用のままだ。こんな状況は変えていかなくては。 正規・非正規が連帯するときです。 見てきたとおり情勢は厳しい。しかし、たとえ今年の全国大会で同制度の導入が妥結承認されたとしても、反対運動が職場にあり、それを通じて仲間同士のつながりを作っていれば、同制度の下で浸透するであろう競争主義に抵抗する核にそれがなります。 “強制された自発性”を通じて労働密度を高める方向に私たちを駆り立てていこうとする先にあるのは過労死・過労自殺が日常化する世界。これと闘っていきましょう。私も、これだけの集まりを作れる大阪の仲間の取り組みに学び、東京に戻ってから、もうひと頑張りしたいと思います。 (了) このあと4人の方との質疑応答がありました。 ![]()
by suiryutei
| 2013-05-04 21:00
| ニュース・評論
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