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去年11月7日のブログ(『村上春樹が見落としているもの』)を読んでくださった方はご存じかと思うが、酔流亭は小説家・村上春樹に対してはかなり批判的である。 が、今回の新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』はいい。少なくとも前作『1Q84』などよりも遥かにいい。 その『1Q84』については酔流亭はかつて読後にこんな感想を書きつけた。 ・・・ヒロイン青豆の置かれた状況設定はどうかと思う。DV(ドメスティック・バイオレンス)に義憤を抱く裕福な老婦人に送り込まれて、そのDV男を刺殺する殺し屋。これではまるで必殺仕掛人ではないか。 設定が陳腐だから、小説で語られる事件や登場するカルト集団も、それらがつい最近実際に起きた事件をモデルにしているにもかかわらず、嘘くさくて薄っぺらく見えてしまう。さしもの村上春樹も、大きくなりすぎて、かつてのみずみずしさが損なわれてしまったのであろうか((2009/07/28ブログ)。 そのあとリトル・ピープルの造形などはなかなか鋭いと思ったから、感想もすこし持ち直すのであるけれども、出だしの陳腐感から最後まで抜けきれなかった。ところが、今回の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では、もう損なわれてしまったかと思えたみずみずしさを春樹はとりもどしているのだ。 ![]() 信頼する友(あるいは家族、兄弟、師)から、あるとき突然切り捨てられる。そういう体験を大抵の人は持っている。だから多崎つくるが少年期から青年期にさしかかるころ受けた仕打ちは、その深刻さに軽重はあるにしろ誰にも身に覚えのあることだろう。であればこそ彼の立ち直りは読む者の心に響く。したがってことに秀逸なのは終盤。
by suiryutei
| 2013-05-07 08:30
| 文学・書評
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