新人事制度 大阪での報告①~③
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新一般職の分析に進んでいきたい。去年の学習会でも提起したことですが、日経連(当時)が1995年に打ち出した「新時代の『日本的経営』」では労働力の3グループ化が構想されていました。 ①長期蓄積能力活用型(無期雇用) ②高度専門能力活用型(有期雇用) ③雇用柔軟型(有期雇用) このうちグループ②はちょっと影が薄い。たとえば最近九州のJRが走らせ始めた「ななつ星」という特急は超高級で、その客室乗務員にはスチュワーデスの経験者なんかが難しい試験を通ってかなり高額の報酬で採用されているそうです。こうした人たちがグループ②の高度専門能力活用型にあたるのでしょうが、労働者全体の中で数としては少数です。派遣労働者も特別な技能を持った人たちはそうなのだろうが、いま派遣の大多数は使いやすい低賃金労働者としてグループ③のほうに含まれるでしょう。日本郵政においては、その名もエキスパート社員というのがグループ全体で3000人近くいます。40万人のうちの3000人ですから、これも少数。 してみると「新時代の『日本的経営』」の眼目は主には労働者をグループ①の正規雇用とグループ③の低賃金で使い捨ての非正規雇用とに分け、人件費を削るため①は抑制し③を増やしていくことでした。郵政においても、まさにこの路線に忠実に非正規雇用が拡げられてきました。しかし、よく注意してみるとグループ①の中にも二通りある。昇進して役付きになり、いずれは管理職になっていく人たちと、出世は望まずノンビリやっていこうという人たちです。今日ここに来ている正規雇用の人は後者でしょう。新一般職を作ったというのは、この後者のような存在を今までのような形ではもう許しませんよ、ということではないか。 郵政の新一般職だけでなく、最近盛んに言われ出した「限定正社員」というのは、こうして出されてきたものです。ただ、限定正社員は職務が限定されていますから、配転などが無いかわり、その職務そのものが無くなってしまえば解雇は正当化される。郵政の新一般職は、郵便事業は当面なくなりはしないという見通しでそうしたのか一応定年までの終身雇用は保証されます。この点がちょっと違う。両者の異同については『伝送便』誌去年7月号に椿茂雄さんが書かれている。その分析は正しいと思います。 ともあれ限定正社員の出現によって「新時代の『日本的経営』」は質的に深化したと言えるのではないでしょうか。グループ③(非正規雇用)の拡大はやるだけやってこれ以上すすめば社会の底が抜けてしまう(ワーキングプアが増えすぎる)。そこでグループ①にも手を突っ込んで低賃金正社員を作る。従来の①が二つに割れます。 ①幹部候補的正規雇用(次第に少数精鋭化していく) ②低賃金正規雇用(限定正社員) ③非正規雇用(有期雇用、派遣) そのさいグループ③の低賃金はそのままです。郵政の新一般職でも、正規雇用が退職などで減った分を新一般職登用で補っていくから、登用された当人に限れば非正規のときより待遇は一歩前進するはずで、去年の学習会では新一般職に期待したいという声も聴きました。しかし登用されない非正規の人たちの待遇は低いままだ。 いま「一歩前進」と表現しましたが、はたして本当にそう言えるか、という問題もあります。長崎中央局では新一般職への応募資格のある人(月給制契約社員ですね)は10人いるのに、応募したのは1人だけだったそうです。関西でも定数割れを起こしていると聞いています。いま新東京(郵便内務)では時給の最高は1110円。週40時間働き、4週で16回の深夜勤をやっても月の手取りは22万~24万円です。だから新一般職になれば賃金面では少し上がることは上がるし、雇止めの心配もなくなる。それでもあまり魅力がないのでしょうね。今回応募資格があるのは月給制の期間雇用社員だけ。2013年4月時点で、この月給制は日本郵便(旧事業会社+旧局会社)に11200人。そこから5200人を今回新一般職にする予定という。各地で定数割れが起きているとすれば、応募した人はほぼ採用される可能性がありますが、会社は用意周到にも5200人を下回ることもあると前もって明言しています(2月26日に発表があり、結局グループ全体で応募6144人に対し合格は4704人、5200人採用を予定していたはずの日本郵便では応募5846人に合格は4547人にとどまりました。危惧していたように相当の選別がやはり行われたのです。3月3日記)。。 では新一般職の待遇は具体的な数字でどうなっているのか。去年JP労組が全組合員に配布した資料に会社が提示した数字が出ています。新一般職のモデル年収をみると31歳で役割基本給125.200円・成果給39.000円で合わせて164.200円が基本給。これに諸手当99.526円が付いて月例給与は263.726円です。賞与4.3月として(現実はいま4.0月を切っていますが)年収は396万円。いっぽう地域基幹職の標準だと32歳あたりで年収500万円に達します。30歳過ぎで100万円くらい違う。そして、その先がもっと大きいのです。地域基幹職の標準モデルは昇給がストップする50代なかばには年収750万に近づきます(“高評価”の人はもっと上にいく)が、新一般職は54歳の460万円が最高値。55歳では445万円に下がって定年まで変わらない。つまり四半世紀近くかけて60万円ちょっとしか上がっていかない。 問題はこの格差が何をもたらすかです。濱口桂一郎氏ら“善意”の限定正社員提唱者が触れない点です。 (つづく)
by suiryutei
| 2014-02-28 09:10
| ニュース・評論
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