新人事制度 大阪での報告①~③
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「新時代の『日本的経営』」をめぐって 1995年に当時の日経連が「新時代の『日本的経営』」を出したとき示された労働力の三つのグループ化を簡略化すると、こうなります。 ①長期蓄積能力活用型(無期雇用) ②高度専門能力活用型(有期雇用) ③雇用柔軟型(有期雇用) ところが、目を凝らして見るとグループ②の「高度専門能力活用型」ってちょっと影が薄くありませんか? 郵政でこれにあたるのはその名もエキスパート社員でしょうが、2011年の数字で郵政五社全体でも2.918人しかいません。約45万人いた郵政グループ全体の中での3.000人弱です。言うまでもなく23万人強の正規雇用がグループ①(長期蓄積能力活用型)、21万人強の月給制+時給制がグループ③(雇用柔軟型)にあたります。この二大グループと肩を並べるような一つのカテゴリーとなりうるのでしょうか。 しかし、「あるべき姿」における三区分(地域基幹職・新一般職・時給制非正規)が達成された折には「新時代の『日本的経営』」が示す三区分とは違う三つのグループが出現します。 ①幹部候補的正規雇用(地域基幹職) ②低賃金正規雇用(新一般職) ③非正規雇用(時給制) つまり「新時代の『日本的経営』」におけるグループ①が二つに割れて、グループ③(雇用柔軟型、時給制非正規雇用)とあわせての三区分になります。私がこのことに気づいたのは去年二月に東京で開催した学習会での報告を準備しているときでした。ところが、この“発見”にはひとつ都合の悪いことがある。「新時代の・・」におけるグループ②(高度専門能力活用型)の置き場所が無くなってしまうのです。さて、どうしたものか・・・と思っていたとき去年八月に『若者と労働』という本が出版されました(濱口桂一郎著 中公新書ラクレ)。この本で著者の濱口桂一郎さんも「新時代の『日本的経営』」における労働力の三グループ化について疑問を呈し、こう述べているのです。 結局、長期蓄積能力活用型を縮小して雇用柔軟型を増やすというだけでは批判を浴びると考えたため、その間に実体の不明瞭な高度専門能力活用型というカテゴリーをこしらえてみただけだったといわれても仕方がないようにも見えます ならば、「新時代の・・」におけるグループ②は、存在するにしても大きなグループ分けからは外してもいいのではないか。私が手さぐりで考えてきたこともあながち的外れではなかったわけです。このように濱口さんの論考からは学ぶところが多いのですが、彼はこの本の後半では限定正社員を積極的に推進すべきとの考えを展開していきます。私はこれには不同意。この点についてはまた後に触れます。 新一般職と限定正社員 ところでこのごろ人口に膾炙するようになった限定正社員と郵政の新一般職とは同じものでしょうか。違うのでしょうか。私たちを含めて「新人事制度」に反対してきた部分は、これを同じもの、あるいは似たもの・共通点を多く持つものだと主張してきました。いっぽう会社もJP労組本部も違うとの立場です。じつは同じものとも違うとも言いうる。 まず、同じというのは、何のためにこれが今仕掛けられてきたのかという意図・狙いという点で両者は全く共通するのです。それは先に郵政における「あるべき姿」に即して見てきたように、正規雇用を二つに割って低待遇の「正社員」を作ることです。安倍総理肝いりの産業競争力会議が去年あたりから限定正社員を盛んに言い出したのはこれを狙っています。郵政における新一般職登場とまさに符丁が合う。本当は少数の「幹部」だけ残して残りは全て非正規にしたいが、さすがにそこまでの荒業はすぐにはできない。終身雇用を通じて会社への忠誠心を育み過労死するまで働かせてきた“旨味”もただちには捨てたくない。そこで中間戦略として出してきた。非正規雇用拡大の号砲となった「新時代の『日本的経営』」の質的深化と評する所以です。 つぎに、違うというのは、まず限定正社員といっても様々なバリエーションがある。たとえばいま飲食業界などであまりに労働条件が酷くて人が集まらないところがあるそうです。24時間営業の牛丼チェーンがそれで何軒も閉店せざるをえなくなっているという。そういうところが苦し紛れの人集めで正社員にしますなんて言う。個別のケースを具体的に見ていく必要がありますが、名ばかり正社員の可能性大です。産業競争力会議で話されているような戦略性を持ったものとは思われない。 これとは違い(しかしおそらくは先行する「名ばかり正社員」からヒントも得て)、もうすこし長期的な見通しをもって出されてきたのが職務・勤務地限定の「正社員」というやつ。それでもこれなら郵政の新一般職と全く同じかといえばまだ違いがある。それは職務などが限定されているということで、職務がある間は非正規雇用に対してのように雇止めはできないけれど、職務そのものが無くなってしまえば解雇が正当化される点。ユニクロの限定正社員なんて、地域限定での採用なら当該地域から撤退した場合はどうなるのでしょうか。これに対して新一般職は定年までの雇用は保証されるようです。つまり違いは会社に対するメンバーシップ性の濃淡にある。新一般職はメンバーシップ性が強いのです。これは雇用の安定ということではプラス面とも言えますが、引き換えに会社への無限忠誠を求められる可能性もある。賃金は安くして実質無限定社員ということになれば会社にとって「いいところ取り」だ。このあたりの両者の異同については『伝送便』誌の去年7月号に椿茂雄さんが『「新一般職」を考える』という記事を書いています。適格な分析です。私の言うメンバーシップ性の濃淡を椿さんは限定正社員はやはり非正規雇用だが新一般職は(まがりなりにも)正規雇用だというふうに表現しています。私自身をふりかえると、導入意図の共通性を重視した分、その違いについてはこれまであまり触れてこなかったことはすこし反省点かなと思う。『伝送便』誌の誌面全体としては椿さんの記事がフォローしてくれていますが。 なお、会社やJP労組本部が新一般職と限定正社員は「違う」と言い張るのは椿さんの記事や私がいま述べた意味ではありません。正規雇用に手を突っ込んで低賃金で解雇もしやすい層を作るという経営側の狙いそのものを彼らは隠ぺいしようとしているのです。 (つづく)
by suiryutei
| 2014-05-22 21:56
| ニュース・評論
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