新人事制度 大阪での報告①~③
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新聞『思想運動』6月1日発行号の<労働者通信>欄に寄稿した記事を転写します。なお文中、JP労組全国大会議案に触れていますが、同議案についての批判は『伝送便』今月号にも書いていますので、こちらの記事も後日UPします。 四月末、大型連休直前の金曜日に深夜勤に従事した。夜九時半から翌朝八時半まで不眠の勤務である。週末で、しかも連休前とあれば、物量は当然多い。都内から地方からトラックが次々到着し、郵便物満載のパレットを降ろしていく。こちらはそのパレットを開いて自動区分機にかける等の作業をしていくわけだが、あまりのパレットの多さに処理が間に合わない。パレットの置き場が無くなる。そこで、少しでも空いているスペースを探してパレットをそちらへ流していく。しかし、そこもじき埋まってしまう。私たちはこれを「パンクした」と言う。荷を降ろせなくなったトラックが長い列を作る。 首都圏では、こんど埼玉県和光市に東京北部新局が新築されたことで、こうした滞留状況のいくらかは改善されるのだろう。ゆうパック部は五月から、郵便部も八月には業務を開始する。高速道の入り口に近い代わり、鉄道の駅からは遠く、通勤には不便だけれども、広い局舎である。この北部新局の開業によって東京の郵便の流れは都内を三分割して郵便内務作業が新東京・北部・多摩集中に統合されることになる。郵便番号でいえば上二桁の10―15が新東京、16―18が北部、19・20は多摩集中の受け持ちである。そして将来は新しい区分機をこの拠点三局に配備し、これまで一般局で行われていた区分作業のあらかたも拠点三局で行うようになるという。すると拠点三局では深夜労働がいっそう強化・拡大されるのではないか。昼に投函された郵便物を深夜に区分して翌早朝に送り出すというのが郵便の流れだからだ。現在でも新東京局では深夜勤専門の非正規の人は最大四週で一六回の深夜勤をやっている。これはもう人間の身体のギリギリ限界だと思うのだけれども。 いっぽう、基幹的な区分作業を拠点局に持って行かれることによって一般局では深夜勤は減るだろう。ただし、人員も減らされるだろうし、帰宅が深夜になる夜勤や遠距離からは通勤の困難な早朝出勤が増えるのではないか。人間の身体や生活にではなく、どこまでも物の流れに合わせて物事が決められていく。 郵便から物流へ ところで通常郵便物数はピークだった二〇〇一年頃と比べると現在は三割くらい減っている。たしかに切手の貼られた一般信書がめっきり減ってきたことは現場で作業していても実感する。でも、近年、ゆうパックは激増(この五年間で六割増)だし、ゆうパックは扱わない私の職場でも板に盛られて搬入されるような特別割引郵便が増えてきたから業務はむしろ忙しくなっているのだが、扱う物の中身が変わってきたのだ。大口の特別割引はポストに投函されるのではなく昼夜を分かたず引き受け窓口に直接持ち込まれる。そうしたダイレクトメールの塊りなんかをフォークリフトでコンテナに積み込むといった作業の比重が増し、フォークを操作する資格を持たない私なんかは肩身の狭いことになってきた。北部新局も郵便局というより巨大な物流処理施設といった様相が濃い。今年二月、オーストラリアの物流大手トール社を日本郵便が六千二百億円で買収することが報じられた。衰退傾向の郵便より成長分野のネット通販など宅配・物流業へシフトしていく方向が今後いよいよ強まっていくだろう。 そうした中で、JP労組の第八回定期全国大会が六月十七日から三日間、金沢市で開催される。議案をつらぬく問題意識は、働く者の労働条件をどう守るかという労働組合本来の課題より、今秋に予定される郵政グループの株式上場をどう成功させるかに置かれているように思われる。しかも、その上場は親会社(持ち株会社)たる日本郵政と子会社である郵貯・簡保の「親子同時上場」。こうした同時上場は近年ではかなり異例のことであるらしい。 親子同時上場でいいのか 振り返れば、二〇〇五年に成立した郵政民営化法は郵貯・簡保の金融二社を一〇年以内に全株処分するとした。いわゆる小泉民営化である。日本郵政については三分の一の株は国が持ち続け、三分の二未満は「できる限り早期に処分するよう努める」。その文言からも明らかなように金融二社の株式処分が優先とされたのである。しかし、金融(郵貯・簡保)と郵便事業とで構成される日本郵政グループだが、利益を出せるのは金融部門で、公共性の強い郵便事業は収益性に乏しい。二〇一三年度でいえばグループの純利益四七九〇億円のうち八七・三%は金融二社の稼ぎ。それだのに金融二社の株処分が先行しては、手元に郵便事業しか残らない日本郵政(郵便事業を手掛ける日本郵便の株は日本郵政が一〇〇%持ち続ける)の株価など捨て値になる。その捨て値で買い取って公共性を剥ぎ取れば「利益の出る」企業に変えることができる。これがひとつのシナリオであったろう。民営化が国有財産の不当な払下げに他ならないと言われる所以だ。 このシナリオは二〇〇九年に民主党中心政権への政権交代があり、その末期の二〇一二年に改正民営化法が成立したことでいったん宙に浮いた。改正民営化法は金融二社全株処分から一〇年という期限を外す一方で郵便のみならず金融にも「あまねく公平に」のユニバーサルサービスを義務づけたからである。完全な民間金融会社になってしまえば儲けの出ない過疎地からは撤退するだろうから、ユニバーサルサービスを維持するなら株式処分にはブレーキがかかる。そして東日本大震災復興特別措置法により(金融二社ではなく)日本郵政の株式売却益は東日本大震災の復興資源にまわすとされ、その額は四兆円と試算された。この時点では株式上場も金融二社より日本郵政が先との想定。ところが、去年暮れになって親子同時上場の線が出されたのである。中核的な子会社との同時上場では親会社の株価は下がる。流れは小泉民営化ににじり戻っているようだ。 民営化そのものをひっくり返すのは当面困難であるとしても、金融二社の株式上場には「待った」をかけたい。郵便について言えば、前述のように物流業にシフトしていくならば、この業界は成長産業であるにしても低利益体質でダンピング競争に明け暮れている。労働組合は企業の枠を超えた視点を持たなければその競争に呑み込まれてしまう。大会議案にはこの視点が欠けているのだが。 ※関連する過去ログとして ☆『蕎麦屋酒と株式上場』(15年5月5日)
by suiryutei
| 2015-06-06 17:02
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