新人事制度 大阪での報告①~③
最新の記事
タグ
労働(124)
辺野古(46) 郵便局(43) 文学(31) コロナウイルス(31) 韓国(19) 朝鮮半島(12) 映画(11) NHK朝ドラ(10) ひよっこ(9) 大西巨人(9) なつぞら(8) 神田まつや(8) 労働者文学(8) 神聖喜劇(7) 関西生コン労組(6) 狭山事件(6) ブレイディみかこ(6) ケン・ローチ(6) 蕪水亭(6) 最新のコメント
記事ランキング
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
前回記事に予告しましたように、JP労組全国大会議案について『伝送便』誌のほうに書いた批判記事を転写します。このところ紙媒体に書いた記事の転写が続いており、今回も分量がちょっと多いですが、ご容赦を。 JP労組の第八回定期全国大会は六月十七日から三日間、北陸新幹線開通で湧く金沢市において開催される。 被災地の復興は 第一号議案の冒頭、『提案にあたって』の<はじめに>が東日本大震災に触れることから書き出されているのは去年の第七回大会の議案書と同じ。だが今年の特徴は「がれき処理と公共インフラの復旧はおおむね完了し」云々と、復興庁公表による『復興四年間の現状と課題』の文言がそのまま紹介されて、それに何の注釈も批判も加えられていないことである。 福島第一原発構内において廃炉作業に従事していた池田実さん(本誌前編集長、赤羽郵便局を二〇一三年に定年退職)によばれて私が福島県内の被災地を歩いたのは去年暮れであった。そのときのことは行を共にした久保茂さん(本誌編集委員)が<ウェブ伝送便>の今年一月七日更新記事で報告している。 「六号線を富岡町へ向かって走ると、窓ガラスが全て割れ落ちているパチンコ屋さんや倒壊した民家が増えてくる。右に曲がり富岡駅に向かう。壊れ果てた家々が両側に続く。車もひっくり返ったままで、駅舎も残っておらず改札口のステンレスのポールが虚しく光る。辺りは被災当時のままである」 「今回、帰還困難区域の一部を走っただけでしたが、こんなに人が住めない土地が延々と広がっているのか、震災から四年近く経って何にも手を付けられない所がこんなにもあるのか、胸を抉られる想いでした」 私たちの目の前に広がっていたのは、強い放射能のため人が滅多に立ち入ることができず、復興どころではない荒れ果てた町の姿であった。JP労組の去年の全国大会議案は「地域の経済活動に新しい動きがありながらも、沿岸部を中心に復旧が進まない地域が存在するなど、その差は日を追うごとに大きくなっています。また、いまだ二六万四〇〇〇人の住民が避難生活を余儀なくされ、福島第一原発事故による影響で、一〇万人を超える住民が自宅に帰ることができません」と、被災地の現実にそれなりに触れてはいた。ところが今年の議案に至って、福島の[ふ]の時も原発事故の[げ]の字も全く消えてしまったのである。まるで東日本大震災の被災地に福島県は含まれないかのように。あのとき原発事故は起きなかったかのように。「復興の槌音高く」と高らかに嘘八百を奏でてみせた安倍晋三総理の認識とこれはどれほどの違いがあるのであろうか。JP労組本部の退廃を、その唱える福祉型労働運動なるものの薄っぺらさを私たちはここに見ないわけにはいかないのである。 会社の業績次第でいいのか つぎに<二〇一四年度の運動を振り返って>の項では、特別手当「〇・三月」を「ギリギリの経営判断」と受け止めた根拠また一五春闘の交渉妥結に至った根拠として、前者は日本郵便の第三四半期決算の営業損益一七七億円を「〇・三月」の所要原資(二四三億円)は上回っていること、後者は会社が示した経済要求回答のうち上積みさせた日本郵便全体の所要原資の総額は二一〇億円で「郵便・物流事業の営業利益一五九億円のほぼ全てを各要求項目に上積みさせたこと」を挙げている。ユニバーサルサービスの義務を課せられ、また大口利用者には採算度外視の郵便・物流事業は元々利益の出るものではない。であればこそ日本郵政グループにあっても日本郵便だけは株式上場せず、国が三分の一の株を持ち続ける日本郵政が日本郵便の株を一〇〇%持ったままと法律にも明記されているのだ。こういう企業において、労働組合が交渉妥結の判断基準を会社の利益如何に置くならば、この先いくらでも労働条件を切り下げていく“打ち出の小槌”を会社に預けるのと等しいのではないだろうか。いや仮に利益の出る企業であったとしても、賃金・労働条件は会社の業績次第という考えが無限の労資協調を育み、過労死に至るような労働者の「無限定的な働き方」を生み出してきた。いまJP労組は『五年総括』を経て、この労使協調路線にいよいよ深入りしていっているのだが、本当に必要なのはそれでいいのかという総括ではないのか。 親子同時上場をどうみる これは郵政ユニオンのほうの催しだったが、三月に行われた『日本郵政の株式上場を問う』というシンポジウムで、討論も終わりに近く、参加者から「そもそも株って何ですか?」という発言が出たという(本誌前号特集記事参照)。これが正直なところだと思う。私たち現場の労働者は株の売り買いなんかとは無縁な世界で汗をかいてきたのだから。株式上場のことは議案では『二〇一五~二〇一六年度の重要課題』に述べられているが、書いている人だってわかっていないに違いない。もちろん私もわからない。わからないなりに流れを追ってみると、二〇〇五年成立の郵政民営化法(いわゆる小泉民営化)は郵貯・簡保の金融二社は一〇年以内に全株式を処分するとした。民営化のスタートは二〇〇七年一〇月一日だから、二〇一七年九月三〇日までに全株処分としたのである。いっぽう親会社の日本郵政については三分の二未満を出来る限り早期に処分するよう努めるとされ、具体的な期限は付けられなかった。あくまで金融二社の株式処分が優先で、他のこと(当時の郵便局会社と郵便事業会社)なんかどうでもいいやと言わんばかりのスタンスである。実際、収益の出る金融二社の株式が先に売却されてしまえば、収益の乏しい郵便局会社と郵便事業会社しか残らない日本郵政の株に魅力を感じる投資家はいたであろうか。 二〇一二年成立の郵政民営化法等改正法によって事情が少し変わりかけたのは本誌前号記事に述べた(『蕎麦屋酒と株式上場』)ので、ここでは繰り返さない。この改正法の下で、当初は ①日本郵政株式会社は三年以内を目途として、できるだけ早期の上場を目指す ②金融二社については日本郵政の株式の二分の一が処分されるまでには方針を明確に という方向が出された(第八十八回郵政民営化委員会 二〇一二年一〇月二十九日)。二〇一五年(今秋)の株式上場というスケジュールもこのとき明らかにされたのであり、しかもこの時点では金融二社より日本郵政のほうが上場は早いと考えられていたのである。背景のひとつは東日本大震災だ。復興財源確保法は日本郵政の株式売却収入を復興財源に充てるとし、その金額を二〇二二年までに四兆円と試算した。日本郵政の株式売却を進めるには金融二社が離れていかないうちにと判断されたのだろう。それが去年暮れ(十二月二十三日)になって日本郵政と金融二社同時上場という線が出された。日本郵政グループの二〇一五年三月期中間決算(経常利益)はグループ連結で五一八七億円、そのうち日本郵便はマイナス三三六億円、ゆうちょ銀行二七三〇億円、かんぽ生命二六三七億円である。グループの大半どころか一〇〇%以上が金融二社の稼ぎである。こうした文字通り中核的な子会社(金融二社)と同時の上場では親会社(日本郵政)の株価は下落するのが当然というのが専門家の判断であるようだ。公的事業を安く買い叩き、そのあと公共性を剥ぎ取りリストラを進めて「利益の出る」企業に変えて儲ける。これが各国の民営化において繰り返されてきたことである。 こう見てくると、この親子同時上場は小泉民営化ににじり寄って(戻って)いるように見える。上場スキームをふまえた『新中期経営計画』を議案は「着実に実行し、グループを成長・発展させていくことを強く求め・・」としているけれども、「着実に実行」されていった先に待つものは国民の財産の不当な払下げということにならないか。 改正労働契約法をめぐって 改正労働契約法への対応は議案の後半(八ページ)にすこし触れられている。労契法十八条はこの法律が施行(二〇一三年)されて以降の計算で通算五年を超えて同じ職場で働いている有期雇用労働者は(本人が希望すれば)無期雇用に転換するというもの。JP労組が重点を置くのは二〇一三年以降という条件を取っ払って既に五年経っていればすぐにでも無期に転換せよという要求である。法律の規定を一歩前に進めようというものだが、それにしても控えめに過ぎる。労契法十八条はもっと進めて正規雇用化へと道を開くものにしていかなくてはならないし、併せて「不合理な労働条件」を禁じた同二〇条を活用して正規と非正規の格差を無くしていく取り組みが必要である。こちらが欠ければ低賃金無期雇用・低賃金正規雇用を生むだけで、正規雇用を低賃金化したい経営側にとってむしろ「いいとこ取り」になってしまう。現に去年から導入された「一般職」はそれだ。しかるにJP労組は二〇条にも均等待遇にも全く触れない。従業員総数の約半数に及ぶ二〇万人近い非正規雇用労働者を抱える企業の「責任組合」として「責任」を果たそうとする姿勢ではないだろう。 非正規雇用労働者の雇用不安と低賃金、深夜労働による疲弊と健康破壊、あるいは「一般職」のひどい低賃金、減ることのない労働災害・・・労働組合こそが取り組まなくてはならない本当に大事な課題に今年も全国大会議案が触れることはほとんど無かった。それに憲法九条や沖縄県辺野古への基地建設は? 議案書を繰り返し読みながら虚しい思いを禁じ得ない。それでも状況を憂え、私たちと志を同じくする仲間は全国にいる。この仲間たちとつながっていこう。
by suiryutei
| 2015-06-09 08:29
| ニュース・評論
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||