新人事制度 大阪での報告①~③
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3月6日付「日本経済新聞」に「郵政株七・九兆円、主幹事証券試算、純資産の六割どまり ゆうちょ銀、収益力に課題」という記事が載りました。野村証券・三菱UFJ・ゴールドマンサックス・JPモルガンの四社の試算として、日本郵政グループ三社の親子同時上場で総額7兆9000億円と弾き出されたというのです。直近では今月10日の上場承認に際して日本郵政6.1兆円、ゆうちょ5.2兆円、かんぽ1.3兆円という計算が出ました。前述したように金融二社の株式は50%処分までは間違いなくともその先がわからない。そこで二社の株の半分はまだ当面日本郵政に残るとして2.6+0.65で3.25兆円。日本郵政には2.5兆円の不動産があるから足して5.75兆円。赤字体質の日本郵便の企業価値はせいぜい0.35兆円ということで日本郵政6.1兆円に落ち着いたのではないでしょうか。 この数字をどう見るか。 財務省の資料によれば、政府保有の日本郵政の株式の総額は12兆4481億円です。これは、日本郵政公社を日本郵政株式会社に改組したとき(2007年)日本郵政の株式の会計上の価値として政府が国有財産の目録に記帳した金額ですからいわゆる簿価。それから2012年、現在の郵政民営化法等改正法が成立したときの国会での質疑で、株式の売却見込額について当時の自見庄三郎・郵政改革担当大臣から「日本郵政株式会社の連結純資産額をベースに3分の2を売却するとして機械的に算出すると6.8兆円の売却益になる」との試算が示されています。すると、この時点では日本郵政の全株式は10兆2000億円と試算されていたわけです。この質疑では、株式売却凍結法(前出)で売却のタイミングを逸したことが郵政の資産価値をおおいに減じたとの指摘がありました。2011年12月成立の「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」は2022年までの時限立法であり、その年までの日本郵政の株式売却益は復興財源に充てるとして、その額を4兆円と見込んでいます。日本郵政の株式処分は三分の二までであって、また株売却はいちどきにではなく段階的に行われるので2022年までに完了するとは限りません。それでも三分の二で総額6兆8000億円になるなら2022年までに4兆円くらいは捻り出せるだろうと皮算用されたわけです。三分の一は政府が持ち続けるとしたのは、それだけあれば株主総会における特別決議(定款変更、事業譲渡、合併等の組織・再編行為等の会社の基礎の変更、株式の併合等の株主の地位に関する事項、特定の株主からの自己株式取得等の株主の利害に関する事項等)を阻止することができる、つまり会社の基本的な形は守れるからです。 また「一般財団法人 ゆうちょ銀行」(名称からして郵政グループの身内組織のようです)というところのHPには、こんな計算が出ています。 新規上場の場合の株式時価総額は、日本郵政だけでも、三大メガバンクの株価純資産倍率(PBR)平均0.72(2014年12月30日現在)を適用すると、2013年度決算の純資産が13.39兆円であることから、株式の時価総額は9.6兆円となる。同様のPBRをゆうちょ銀行にも当てはめると、時価総額は8.3兆円となる。かんぽ生命は第一生命のPBR0.8(2014年12月30日現在)を適用すると1.2兆円となり、親子三社の株式時価総額は19兆円程度と見込まれる。 最後の「親子三社の株式時価総額は19兆円程度」という計算はちょっと甘いように思います。現時点では金融二社の株式はまだ全て日本郵政が持っているわけですから、こんなふうに単純に三社を足し算してはダブってしまうのではないでしょうか。とはいえ、これらの数字(簿価やこのあいだまでの推計時価)と比べると直近の推計7~8兆円さらには6.1兆円というのは随分安売りではないでしょうか。 国有財産が民営化されるときは安く売られてしまうのです。イギリスのサッチャー政権のときもそうでした。国営だった水道・電気・ガス・通信・鉄道・航空などを次々と民営化していきましたが、急ぐあまり安く売却し、国民の財産の叩き売りと批判されています。ニュージーランドの郵政民営化のときも株の安売りだと問題になりました。 「かんぽの宿」売却の場合は なぜか。2009年春、民主党中心政権への交代のちょっと前に大きな騒ぎになった「かんぽの宿」のオリックスへの売却が、極端なだけにわかりやすい例です。このとき、パルクセール(一括売り。全国60数か所の宿と首都圏の社宅9件を合わせて日本郵政算出の純資産総額:約93億円をオリックス不動産に約109億円で売却するはずだった。なお簿価の総額は2400億円)だったこともあって、そのうちのたとえば鳥取県の岩井簡易保険保養センターは僅か一万円で落札されました。それが数か月後には六千万円で転売されたのです。詐欺みたいな話ですが、売った西川義文氏(当時の日本郵政社長)も入手したオリックスの宮内義彦氏も現在でも疾しいとは思っていないようです。企業の売買の世界ではそれで通るのだという。つまり時価は、その施設がどれだけ運用益を出しているかで換算されます。「かんぽの宿」は、黒字施設が11施設のみで財務会計上は事業全体で毎年年間40億の赤字を計上しているとされていました。 しかし公共施設である「かんぽの宿」は利益を増やすために経営されているのではありません。利益が出れば利用料を低く抑えるなど利用者に還元すべきものです。その利益還元がどこまでスムーズに行われていたかという点で問題があったにしても、それはまた別の話。基本的な構造として「かんぽの宿」は利益の出ないことになっている。けれども先ほど述べたように時価はその利益から弾き出されます。それが資産価値計測の国際会計基準でもあります。その値で売り、また買って何が悪いのかーこれが西川氏や宮内氏の考えなのでしょう。この価格で一括してオリックスが買い、利潤があがるように経営の方向を変えるなら資産価値は上がります。これが民営化によって儲けようとする者らの狙いです。 民営化によるボロ儲けは制度上可能なのです。世界でこうした投資家たちの中心にいるのはアメリカの投資銀行。[ワシントン・コンセンサス]は途上国の累積債務問題に対する取り組みにおける合意ということになっていますが、10項目のうち第8項は「国営企業の民営化」で、民営化された企業を買い取り、営利主義経営を行い、売却することによって巨額の利益を上げています。発展途上の国が対象になるだけでなく、イギリスの国鉄民営化の中心だったレールトラックは1994年に売却、株価の上昇局面で売り逃げされ(99年時点で売却時よりも最高4.6倍の値がついたそうです)、2001年に経営破綻しました。政府の出資を仰いだというから、民営化は失敗して、また国有企業的な性格に戻ったということなのでしょう。 なお「かんぽの宿」のその後。小泉時代の民営化法の下では「2012年9月までに廃止または譲渡」とされ、これに乗じてオリックスが手を出した。さすがに批判を浴びて売却は途中で止まり、現在の民営化法等改正法では「当分のあいだ管理または運営可能」となっています。最近、道後や白浜など9か所が今年8月いっぱいで営業を中止したと報道されているのは、上場に向け小泉路線にまた戻ってきたということでしょうか。 今回の上場でも「かんぽの宿」叩き売りと同じ構造が浮かび上がっているのではないでしょうか。ゆうちょ銀行はこれまでのところ公的金融として貯金の安全・安定を第一にしてきましたからリスクを避け国債中心で運用されてきました。また累積債務1000兆円を超す日本経済からの要請としてもゆうちょやかんぽが国債を引き受けてくれなくては困ります。2010年の数字で、国債の保有者割合ではゆうちょが全体の23.8%、かんぽは10.2%。この二社で全体の三分の一を占めていました。国債は利率が低い(現在1年物で0.004%、10年物で0.36%)から金融二社の収益性は薄い。貯蓄残高がいくら膨大(ゆうちょ銀行の残高は2013年末で176.6兆円、かんぽ生命は2015年3月で83.5兆円)であろうと利益率からすれば金融二社の企業価値は安く見積もられてしまいます。 もっとも直近の動きとしては、15年3月末の国債の保有残高は、ゆうちょ銀行が14年3月末と比べて約30兆円、かんぽ生命は約4兆円それぞれ減少しました。一方で外国債券や国内株式などリスク資産への投資が増えています。運用残高に占める国債の割合はゆうちょが15年3月末で51.8%と14年同期の63.0%から、かんぽは同じ時期に60.3%から56.6%へとそれぞれ低下。運用戦略を見直すという郵政「中期経営計画」に沿った動きでしょう。郵貯マネーで株価を維持したいアベノミクスの意向も働いたように思います。 ただ、これがまた問題を含んでいます。国債での運用を減らした分、将来は民営金融会社として、ゆうちょなら企業への融資に参入したいところです。貸出金(融資)の利回りは低下が続いているとはいえ2014年度で平均1.29%ありましたが、国債・株式など有価証券の利回り平均は0.86%にとどまっています。ところが、これまで国債中心でやってきたから企業融資のノウハウを郵政は持っていません。また今日の“金余り”状況でそんな素人に融資を仰ぐ企業があるとも思われません。あるとすれば民間銀行が融資を躊躇う「危ない」企業ということになってしまう。失敗してゆうちょが経営破綻する可能性だってあります。預入限度額1000万円の郵便貯金を利用するのは資産家ではないでしょう。勤労者が日々の労働から僅かずつを蓄える場所です。そんな性格を持つゆうちょが民間金融会社として生き残るためにリスキーな運用に手を出したら、利用者にとっては低利であっても安全な貯蓄の場が失われてしまいます。 (つづく)
by suiryutei
| 2015-09-22 13:04
| ニュース・評論
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