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新人事制度 大阪での報告①~③
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『伝送便』誌2月号は「物流」を特集。その特集冒頭の編集部記事として書いたものです。 ![]() 東京都江東区新砂にある新東京郵便局。八万平方メートルの広大な敷地に、作業棟三階、事務棟五階の建物である。明治通りを挟んで向かいには佐川急便の配送センターが建つ(こちらも五階建て)。名称に新の字が付いていても、開局が一九九〇年夏だったのだから、すでに四半世紀以上がたち、開局当時とは業務の状況も随分変化した。その変化を一口で言えば郵便から物流へということだろう。たとえば郵便小包は、二〇〇七年の民営化スタート以降ゆうパックと名を変え、郵便とは切り離されて物流として扱われる。そうして去年夏、東京北部新局が開局する直前時点での新東京局での扱い物数は開局時の三倍に膨らんでいた。物流処理施設としての機能が強められた北部局の開局が急がれたはずだ。 では郵便と物流の違いとは何か。信書を運ぶのが郵便なのに対して物流は荷物を扱う。ここが違う。だから、ゆうパックは郵便ではなく物流だし、信書を封入することはできないゆうメールもそう。郵便に課せられたユニバーサルサービス(全国あまねく公平に配達)の義務もゆうパック・ゆうメールには適用されない。 さて新東京郵便局が開局した当時、郵便小包を扱う三階は新東京小包郵便局として一・二階の新東京郵便局とは別の独立した局であった。両局は現在では統合され、旧小包局は新東京局のゆうパック部である。そして現在、この局舎の中で最も活気があるのはそのゆうパック部だ。年末繁忙期もお歳暮ゆうパック満載のパレットがフロアにあふれた。二〇一四年三月期の数字では年間でゆうパックを九〇〇〇万個以上取り扱った。その年度一年間の全国のゆうパック総数は四億二〇〇〇万個強だったのだから、新東京局一局の三階だけで全体の四分の一近くを処理したわけだ。過密な作業の中では労働災害も多く、二〇一四年度に新東京局で起きた労働災害四五件(これ自体が一つの事業場での数字として異常に多いけれど)のうち三七件はゆうパック部で起きている。鉄製のパレットを扱っていて指を骨折したり、やはりパレットの中棚が落下して頭を打ったり。郵便から物流への重心移動は、働く者の安全や健康の犠牲の上に進んでいるのではなかろうか。 縮む郵便、膨らむ物流 二〇一五年の数字では、宅配便の個数は業界全体で五年前より一五%も増え、メール便も五%伸びた。二〇一五年三月期、宅配便は三六億個強、メール便は五四億通強である。合わせて九〇億個を超す。いっぽう郵便物の総量は二〇〇一年の二六七億二五〇〇万通が二〇一三年には一八五億七一〇〇万通と三〇%近く減ってきた。新東京局の二階は特殊郵便(速達・書留)と小型通常郵便物を扱うけれど、書留の作業スペースが開局時より狭められるなど、時間帯によっては閑散感が漂う。 さらに一階に降りると、ここは輸送業務に加えて大型郵便および荷物を扱うスペース。アマゾンの区分作業場もあれば、業者向けの窓口からはカタログやらの郵便物ならざる荷物が板に盛られラップにくるまれて大量に搬入されてくる。それらをフォークリフトでJRのコンテナ等に積み込む作業は郵便局というより巨大な物流センターである。昨秋の日本郵政株式一部上場にあたっても、日本郵便が民間企業としてやっていくには物流企業として生き残りをかける他ないということが盛んに囁かれた。ゆうちょ・かんぽの金融二社の株式処分が進んで、日本郵便との関係が疎になっていけば、斜陽の郵便だけではやっていけなくなるというのである。上場を前にオーストラリアの物流大手トール社を六二〇〇億円かけて買収したのも、物流に力を入れるのが成長戦略だとアピールするためだった。金融二社の株式売却益は日本郵政の懐に入るので、これを原資に内外の物流企業のM&A(合併・買収)は今後も試みられるだろう。宅配のシェアではゆうパックのはるか先を行く佐川急便の名までM&Aの候補に挙がっているとか。 定価のない商品 郵便は減っても荷物は増えているので、私たち現場の労働者が扱う総物数はちっとも減らない。それどころか二〇一五年三月期決算でゆうパック四億八〇〇〇万個というのは一年前より一割、二年前からは二割以上増えている。つまり前述した過去五年間の宅配業界全体の需要増加率(約一五%)を上回る数字を二年間でたたき出した。ゆうメール一五億九一〇〇個も前年より五・七%増。 このごろは<ゆうパケット>なる荷物がめっきり増えた。一昨年から登場のこの新商品は法人向けに一㎏以下の荷物を扱い、運賃は「お客様ごとに個別に設定」、つまり定価がない。企業相手に、どんどん値引きに応じるというのだ。ゆうメールは定型外郵便物と見分けがつかないものが多い。定型外郵便は一五〇gまで二〇五円のところ、ゆうメールなら一八〇円で引き受ける。重量が増すほどこの差は開き、二㎏以内の定型外郵便八七〇円に対し、同重量のゆうメールは四六〇円。そのうえ大口割引がある。 この価格差を正当化するのは、郵便ではなく荷物であるメール便には信書を封入することはできないという信書便法の規定である。ヤマト運輸が去年三月をもってメール便から撤退した公式の理由は、利用者がその規定を知らずメール便に手紙を入れてしまうという法違反を犯すリスクを避けるためということであった。本音はダンピング競争によるこれ以上の体力の消耗を避け、得意の宅配便に力を集中したいということではなかったか。ところが、その宅配業界のダンピングこそ凄まじい。ヤマト運輸では二〇〇〇年代初頭には一個あたり七五〇円近かった運賃単価が、底となる十四年春には五〇〇円台後半まで、佐川急便では一〇〇〇円近かったのが十三年春には五〇〇円を切るところまで下がった。さすがに下げ過ぎたと「運賃適正化」の動きが出かけたのに、そこに採算度外視で攻勢をかけて物数を増やしているのがゆうパックだ。日本郵政の「中期経営計画」では、直近で四億八〇〇〇万個のゆうパックを十七年度には六億八〇〇〇万個にする目標を立てた。二〇一〇年夏の日通ペリカン便との統合失敗で、それまで両社あわせて六億個近かった物数を三・四億個まで減らしてしまったのを取り戻してオツリを出そうという勢いだ。 いい競争? ・・日本郵便株式会社は、ユニバーサルサービスである『郵便業務』と、ユニバーサルサービスではない『荷物を運ぶ仕事』の両方をしています。ここで疑問があります。ユニバーサルサービスを維持するための事業所税や固定資産税の軽減などの優遇をする際に、ユニバーサルサービスではない『荷物を運ぶ仕事』の部分はちゃんと除外されているのでしょうかこれはヤマト運輸が去年十一月十二日、主な全国紙に一ページまるごと使って載せた「意見広告」からの抜き書き。広告の大見出しは「いい競争で、いいサービスを」であった。ゆうパックの“逆襲”に対する悲鳴のようでも、また再逆襲に向けた狼煙のようでもある。私たちがおさえておくべきは、そもそも採算性のないユニバーサルサービスを行う企業(=郵政)を民営化したのが無理筋であったということだろう。その無理を通すため、競争原理に立てばグレーなこともやっているのだ。宅配業界の直近のシェアはクロネコヤマト四六・三%、佐川急便三三・九%、日本郵便十一・九%。この数字を塗り替えるべく熾烈な競争がこれからも繰り返されるのだろう。「いいサービス」とは、労働現場においては一人一人の労働をいかに強化するかの競争でもある。すでに二〇一四年度、労災としての過労死が全業界中いちばん多かったのは運輸・郵便業で九二件であった。先ほど挙げた、新東京局ゆうパック部における労働災害多発の先には、もっと深刻な数字がちらついているのである。この流れを変えるべく必要なのは、ヤマトの意見広告とは真逆に、競争より団結だ。物流業に働く全ての労働者による産業別統一闘争の方途をさぐろう。
by suiryutei
| 2016-02-05 09:45
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