新人事制度 大阪での報告①~③
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「残業代ゼロ」法案(高度プロフェッショナル制新設)を連合が容認に転じたとか、電通の違法残業を(略式起訴ではなく)正式裁判にかけるとか、働き方・働かせ方に関わるニュースが連日飛び交っている。前者(連合の屈服)については、かねて予想されていたとはいえ、まったくもって・・・。 そんな中で、心にひっかかっているのは、先月10日早朝に起きた乗用車と観光バスの衝突事故である。 https://mainichi.jp/articles/20170610/k00/00e/040/275000c 事故が起きたのは愛知県新城市の名神高速道路上。乗客・乗務員あわせて47人を乗せたバスは山梨県内へサクランボ狩りやウイスキー蒸留所めぐりのツアーに出発したばかりだった。反対車線を時速80キロ(制限速度内)で走っていた乗用車が、いかなるハンドルミスがあったのか中央分離帯を飛び越えて空を飛ぶように衝突してきた。乗用車を運転していた人は死亡。バスの乗員には死者は出なかったが47人全員が重軽傷を負って病院に搬送された。 バスの運転席にはドライブレコーダーが設置されており、空中をクルクル回るように飛んできた乗用車が激突する模様が映像に残された。TVニュースでそれを視た人は多いと思う。酔流亭も視たし、その動画は今もネットに載っている。凄まじかった。 この事故のことが頭から離れないのは、動画が衝撃的であったからばかりではない。乗用車を運転していて死亡した男性は62歳の勤務医だった。勤務医の労働条件の過酷さはひろく知られている。過労死・自死が少なくない。統計によれば「60~70時間未満」以上働いている医師は計40.0%。つまり医師10人のうち4人が過労死ゾーンに入っていることになる。 初め、事故が起きた時刻(早朝7時過ぎ)からして、もしや徹夜の宿直明けだったのではないかという思いが頭をかすめた。しかし、これはそうではなく、医師は自宅から勤務先の病院に向かう途中で事故を起こしたとのことである。ただ、そうであっても慢性的な過労状態にあったのではないかとは推測されるのである。そこで、医師の直前の勤務状況などわからないかとネットで事故の続報を捜してみたのだけれど、これがわからない。個人情報保護ということで表に出ないのだろうか。 いっぽう観光バスの運転手は68歳である。大惨事になってもおかしくない状況であったのに乗員に一人の死者も出なかったのは、自ら重傷を負いながらも彼の操縦が冷静なものだったかららしい。やや左にハンドルを切ることで正面から飛んできた乗用車をバスの右角の骨格が頑丈な部分で受け止めた。病院に運ばれてからも乗客の安否を一番に気にかけていたと報道されている。自分の仕事に誇りを持つ、立派な労働者だ。 ここで思うのは、バス運転手には比較的高齢の人が多いということである。15人が死亡した、去年の軽井沢スキーツアー・バス事故で二人の運転手のうち一人は65歳だった(もう一人は57歳)。 高齢であることに難があるのではない。そもそも若年労働力が不足しているのだから、働く意欲と能力のある人は年齢を問わず働いてくれなくては世の中が回らなくなってしまう。今回の68歳の運転手のハンドルさばきは、年齢によって一律に雇止めするような雇用のあり方の不合理を示すものだ。 大事なのは、高齢であっても安心して働ける労働条件が確保されることである。 ネット上の記事で調べてわかる限りでは、この日、バスは午前5時27分に出庫している。すると、始業点検などの時間を考えると、遅くも5時前後には運転手は就労しているだろう。山梨県で観光したあと夜7時前後に戻ってくるスケジュールだったという。バスを車庫に収めた後の点検とか洗車、日報作成の時間を考えると控えめに見積もっても15~6時間前後の拘束時間になるのではないか。 医師もドライバーも長時間労働が常態化しており、しかも今度出てきた時間外労働上限規制案でも適用除外となっている。バスの運転席ではレコーダーで常に労働を監視されていることも含めて、今回の事故は日本の労働社会の縮図のように思われる。 ※関連する過去ログを貼り付けます。 http://suyiryutei.exblog.jp/26920241/
by suiryutei
| 2017-07-13 10:21
| ニュース・評論
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