新人事制度 大阪での報告①~③
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『伝送便』新年号の特集は<疲弊する郵便職場>。 その特集の冒頭記事を書きました。 去年(二〇一七年)十一月十四日、日本郵政グループの二〇一八年三月期第二四半期(中間期)の決算が発表された。日本郵便の経常利益は一二八億円の赤字、中間純利益も一七一億円の赤字であった。ただ赤字幅は前年中間期より一一六億円縮小したとのことである。 ゆうパック急増の秘密 郵便・物流事業では総取扱数は前年中間期比で一・七%減少して九五億二九〇〇万通(個)。ところが内訳をみると、ゆうパックは前年中間期比で二六・二%も増えて三億九五〇〇個に達した。ゆうメールも一・三%増えて一六億七九〇〇通。いっぽう郵便物(ゆうパックとゆうメールは郵便ではなく荷物)は三・四%減の七四億五五〇〇万通であった。郵便が減って物流が増えているという流れは変わらない。それにしてもゆうパックが一年前と比べて二六%強も増えたなんて尋常ではない。いくらなんでもそんなには・・と思って調べてみると、集計方法が前年までとは変わっていた。一六年一〇月から、それまでは別枠だったゆうパケットをゆうパックに含めるようになったのである。 ゆうパケットというのは二〇一四年から登場した。当初は法人向けに一㎏以下の荷物を扱い、運賃は「お客様ごとに個別に設定」、つまり定価がなかった。企業相手に、どんどん値引きに応じるというわけだ。私は新東京郵便局の輸送部で二〇一六年三月まで働いていたが、退職する前このゆうパケットがみるみる増えていたのを記憶している。ゆうパックに含まれるようになった一六年一〇月以降、サイズ別の基本運賃が設定されるようになり、個人利用もできるようだ。縦・横・厚さの合計が六〇cm以内で長辺三四cm、厚さ三cm以内。厚さ一㎝まで二五〇円、二㎝三〇〇円、三㎝三五〇円である。 だから、仮に以前の集計法に戻して計算すれば増え方は一桁台のパーセンテージにとどまる。それでも増えていることに間違いはない。ゆうパックは二〇〇八年三月期の取扱個数は二億七〇〇〇万個(シェア八・三%)だった。ゆうパック急伸が言われ出した二〇一五年三月期が四億八〇〇〇万個(シェア十一・九%)である。その二〇一五年、日本郵政グループ「中期経営計画」は、三年後にゆうパックの取り扱い個数を六億八〇〇〇万個にする目標を立てた。二〇一七年三月期は六億三〇〇〇万個(シェア一五・七%)。半年の集計である中間期決算で三億九五〇〇万個に達したなら、年間では八億に迫るだろう。年間で二億個ほどのゆうパケットをゆうパックに分類したのは、邪推すれば「中期経営計画」が立てた目標を一八年三月期決算で超過達成したいがためかもしれない。しかし、数字の操作はどうあれ、実際にブツを処理する現場の過密労働は大変なことになっている。 労働現場では 「昼休みなんて、全く休めません。勤務時間の前に仕事を始めている人はザラ」 都内の郵便局でゆうパックの配達業務に従事する時給制のMさん(五〇歳)は最近の業務量の多さに身体が悲鳴を上げていると言います。 Mさんが勤務している局では三六協定で超勤は一日最高四時間、二か月で合わせて八一時間までとなっていますが、同時に結ばれる特別条項では一日最高五時間、二か月一二三時間。この特別条項いっぱい近くまでの超勤に追われる毎日が続いています。 今年の四~六月期、ゆうパックとゆうメールの取り扱い数は一億八七〇〇万個に達しました。前年同期に比べてなんと二五・一%の増加です。日本郵便の経営陣は増収増益と胸を張りますが、人員の補充がないまま物だけが増えて現場はどんなことになっているか。 上に引用したのは、去年十一月二〇日、東京で私たちが開催した「郵便労働者交流集会」(本誌前号[各地から]に報告記事)の<呼びかけ文>の一部だ。 http://suyiryutei.exblog.jp/27158883/ Mさんから話を聞いたのは夏のことだった。秋から暮れ、ゆうパックの取扱量は平時よりずっと増える。彼はどのように乗り切っただろう。 Mさんは秋に三人目の子どもが生まれた。お連れ合いも働いているが生活はラクではない。 「一般職の登用試験も考えましたけれど、計算すると手取りが今より低くなってしまうようです。正規雇用になれば非正規にはない退職金が出るといっても、いま私は五〇歳ですから定年の六〇まで一〇年しかない。これでは退職金だってタカが知れています」 Mさんのスキル評価は時給制として最高ランクだ。ところが、一般職に登用されたとしたら、その賃金は時給制だったときのスキル加算分が削られたような低さである。 無期転換と一般職 労働契約法一八条による無期転換の問題点については前号に触れた(『無期転換ルールの脱法をゆるすな』)。 http://suyiryutei.exblog.jp/27800816/ 運動の力でもぎとったとまでは言えない悲しさで、経営側に受け入れやすいように抜け道がいくつも用意されてしまった。この抜け道を封じるのはこれからの私たちの運動にかかっている。さらにこれは抜け道というわけではないが、無期に転換しても労働条件は変わらないとされた。これも無期転換に対する経営側の忌避感を薄めようとしてだろう。 郵政の一般職登用は無期転換とは違う。無期転換にあたるのは郵政では<アソシエイト社員>だ。これは期間を区切っての契約が区切りのない契約に変わるだけで、それ以前と労働条件に変化はない。一般職は登用にあたって厳しく選別されるし、非正規ではなく正規雇用である。それでも賃金が非正規であったときと変わらない・あるいは低くなってしまうのは、労契法十八条の弱いところをひきずっているのである。この弱さを逆に運動の足がかりとできないであろうか。有期雇用労働者の賃金が低いままでは、無期に転換しても一般職に登用されてもそれがついてまわるのだ。ならば、それを大幅に上げるために、雇用形態によって分断されるのではなく統一した闘いを創り出そう。 民営化は失敗した 中間決算に戻れば、ゆうちょ銀行の資産運用(二〇七兆円)における国債の割合は三一・一%まで下がった。八年前、二〇〇九年九月の中間決算のときは八一・二%もあったのだから、今昔の感に堪えないとはこのこと? そのぶん有価証券などの運用を増やしている。利率の低い国債の運用に頼っているだけではやっていけないのである。一般の銀行のように企業に融資ができるようになれば利率は有価証券よりもっといい。 しかし、国が最大の株主である日本郵政がゆうちょの株の大半を持っている間は融資業務に乗り出すことはできない。国の信用を背景としているから民間銀行と対等の競争条件にないとみなされるのである。 去年、当初は七月と言われた第二次株売却は九月にずれこみ、第一次(二〇一五年十一月)のときのように親子(日本郵政・金融二社)一緒ではなく日本郵政の株式だけが売却された。現時点では国は日本郵政の株式の五七%を持ち、日本郵政はゆうちょ・かんぽの金融二社の株をそれぞれ八九%ずつ持っている。二次売却の売り出し価格は一三二二円で、一次の一四〇〇円を下回った。 あまねく公平なサービスを行なう郵便に採算性がないのは当たり前である。それを補う目算だった物流への進出もM&Aの失敗でケチがついた。「まだ稼げる」金融二社を日本郵政はなかなか手放せない。私たちは民営化=株式売却にそもそも反対なのだから、株式売却が渋滞していることに非を鳴らす筋ではない。けれども現状がどうにも宙ぶらりんなのは間違いないだろう。結局、民営化は失敗だったのである。 最近の報道では、全国二万四〇〇〇の郵便局網を維持するため新たな制度を政府・与党が検討しているという。ゆうちょ・かんぽと日本郵政の関係が切れたときに備えて赤字の郵便局を維持するための負担金を作るという案だ。その金はゆうちょ・かんぽから集める。民営化の趣旨に沿わぬと、民営化の権化・竹中平蔵氏あたりは当然、反発している。じつは似たようなアイデアは二〇〇〇年代初め、小泉民営化が言われ出した頃から浮き沈みしていた。「社会・地域貢献基金」なるものを作って過疎地の不採算の局でも金融サービスが維持できるようにしようという案であったが、中途半端な弥縫策の運命として御破算になった。 民営化そのものをひっくり返そう。
by suiryutei
| 2017-12-29 08:59
| ニュース・評論
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