新人事制度 大阪での報告①~③
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『郵便の労働現場は今』、これが最終回です。読んでくださって、ありがとうございます。 集配外務では
一〇月六日付朝日新聞朝刊の【声】欄に「郵便土曜廃止で労働条件改善を」という投書が載った。投稿した静岡県在住の六三歳の再雇用郵便局員、白井次郎さんは私の友人である。『伝送便』という郵便の労働現場をむすぶ月刊交流誌を共に作っている仲だ。朝日の【声】欄に九月二十四日には「土曜配達廃止より経営努力を」という郵便利用者からの投書が載った。郵便物が減っているなら経営努力をして盛り返し、土曜の配達は維持してほしいという趣旨である。たしかに信書としての郵便物はこの一〇年間で二五%近く減っている。しかし、近年は郵便物にカウントされないメール便などが増えて、郵便労働者が扱う物量は減ってはいない。この上の「経営努力」は、労働条件の締め付けとなって降りてくるばかりなのである。決して悪意からではないが実情を知らない投書に対して、白井さんは労働現場から応答したのだ。その白井さんの投稿に、こう書かれている。 「・・夜間再配達の希望が増えて、夜の九時過ぎまでの仕事も多い。しかし人は足りず、昼の勤務者が夜も受け持つことが増えた。十二時間労働だ。・・」 別の友人で、私と同じ千葉県我孫子市から都心のY郵便局に通勤しているOさんは今年春に六〇歳定年を迎え、現在は白井さんと同じく再雇用。しかし白井さんやかつての私のような郵便内務ではなく集配外務の仕事をしている。彼の勤務局ではJP労組が三六協定を年度の初めに一括締結する(Oさんはユニオン組合員)。そこにおける時間外労働の上限は一日四時間、二ヵ月八一時間、年間三六〇時間だが、三六協定には「特別条項」というクセモノがある。労使合意すれば一年十二か月のうち六か月以内に限って臨時処置として通常の上限より長く働かせることができるのである。Oさんの勤務するY局はその特別条項では一日最高五時間、二ヵ月一二三時間、年間四八〇時間だという。ちなみに厚労省が出している「基準」(法律ではない)は、一日について数字は出さず、二ヵ月八一時間、年間では三六〇時間だ。 今年六月二十九日に成立した「働き方」関連法では時間外労働の上限は特別条項で単月一〇〇時間未満、二~六ヵ月平均で月八〇時間以内、年間七二〇時間(じつはこれには抜け道があって休日労働が含まれない。それを含めれば年九六〇時間まで働かせられる)である。これを超えて働かせたら数一〇万円の罰金や数か月の懲役刑が使用者に科せられる。 しかし、前述した白井さんの局の「十二時間労働」もOさんの局の「時間外労働一日最高五時間」も、「働き方」関連法の上限規制ではまったく規制できない。それどころか「上限までまだ間がありますから、もっと働いてもらいますよ」ということになってしまいかねぬ。Oさんが働くY局の一日最高五時間というのは無茶な数字だが、「働き方」関連法には一日については規制が無い。年間の総時間とか何ヵ月かの平均でというのは、じつは規制としては弱いのである。忙暇には波があって繁忙期の働き過ぎこそが危険なのだから。
時間外「上限規制」は欺瞞だ
特別条項で認められた一日五時間の残業をやったとする。Oさんは前述したように今年定年を通過して継続再雇用になったから労働時間も短時間勤務になったが、Oさんと同じ条件の現役フルタイム労働者がいると仮定しよう。朝八時出勤として、四五分間の休憩を入れて八時間働けば通常の勤務終了は一六時四五分だ。それから五時間残業をやれば解放されるのはほぼ二二時になる。Y局の最寄り駅からOさんの下車駅・我孫子まで電車で約一時間。職場で着替える時間や歩き時間を含めれば通勤時間として一時間半はみなければならないだろう。帰宅は二三時半ごろか。それから夜食を摂り入浴すれば日付が替わっている。翌朝も八時就労だから朝食の時間と通勤時間を合わせて二時間半とみても五時半には起きなければならない。これはかなりスムーズに運んだとしてだ。実際には家庭で何か問題が起きているかもしれないし疲れをとるために一杯やっているうち就寝がもっと遅くなるかもしれない。五時間の睡眠時間を確保するのもむずかしいだろう。五時間を切れば脳・心臓の疾患(過労死に直結する!)の増加が医学的に証明されている。集配なら一日バイクを乗り回すのだから寝不足による交通事故だって心配だ。 こういう働かせ方を月曜から金曜まで五日間やったとして五×五で二十五時間。これを年末繁忙期に三週間続けても二十五×三の七十五時間でY局の特別条項(二ヵ月で一二三時間)も「働き方」関連法の上限「規制」(二~六ヵ月平均で月八〇時間以内)もクリアできてしまう。四週続けても二十五×四の一〇〇時間だから、一時間だけ削れば上限「規制」の単月一〇〇時間未満に収まる。しかし現実にこんな勤務を四週(ほぼ一月である)続けて身体を壊さずにいられるだろうか。 だから労働時間規制は一日単位でやらなければ本当に有効なものとはならない。このことを強調していたのは今年八月に亡くなった森岡孝二さん(関西大学名誉教授)だ。過労死問題に取り組む第一人者だった。そしてこれは世界の労働運動が打ち立ててきた原則である。一八八六年にシカゴの労働者が「一日八時間労働」を要求してストライキを行なったことがメーデーの起源であることを想起したい。 つまり「働き方」関連法の時間外労働上限規制は規制の強化にはなっていない。そうするふりをしているだけだ。働き方は改革されたのではなく改悪された。現場で苦闘する仲間たちとともに、それをはね返す運動を創っていきたいと切に思う。 (完) ※この文章の①と②もリンクしておきます。
by suiryutei
| 2019-01-13 08:54
| 文学・書評
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