新人事制度 大阪での報告①~③
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メーデーが世界中で祝われた一昨日は、日本においては天皇が代替わりした日でもあった。マスメディアではこちらのほうの話題でもちきり。天皇をめぐって書かれた夥しい数の論説の中で、たまたま酔流亭の目に留まったのは、朝日新聞朝刊オピニオン欄の下のほうに載っていた[多事奏論]というコラムの一文である。『天皇と首相 孤高に寄り添う者として』と題して、同紙編集委員の齣野剛記者が執筆している。 伊藤博文は安倍総理にとって同じ長州出身の宰相として先輩にあたる。コラムは、その伊藤と明治天皇とが深い信頼で結ばれていたことを紹介し、返す刀で、それにひきかえ今の安倍は・・・という筆の運びだ。 書き手としては、現政権をチクリと一刺ししたつもりかもしれない。だが、読んで、どうにもひっかかるのである。その理由を書く。 こんな記述がある。 1909年、伊藤は満州ハルビン駅頭で韓国人安重根に狙撃され死亡する。天皇は勅使を送り「股肱」「柱石」と伊藤をたたえさせた。 安重根がなぜ伊藤を撃ったかについてはまるで触れないのだ。文章の前のほうでは、枢密院の初代議長を務め、内閣制度を創設して初代首相になったことなど伊藤の業績を述べているのに、彼が初代韓国統監でもあったことは飛ばす。そうして、こう書くのである。 良くもあしきも、設計士の中の総設計士である。 だが、この書き方で行くならば、日本による朝鮮侵略と併合においても伊藤は総設計士ということではないのか。 伊藤が一代の傑物であったことは酔流亭も承知している。また、朝鮮併合に対して日本国の権力中枢内部において伊藤はむしろ抑制的な考えでいたとも言われる。だが、権力の中枢にいて、しかも初代韓国統監を務めたとあれば、侵略者の代表であることはどうしたって免れないのである。 安重根の行為は、侵略に抗する朝鮮人民の正当な抵抗だ。 伊藤が落命した1909年にいたるまで、どれほどの夥しい血が日本軍によって朝鮮の人民から流されたか。閔妃虐殺(1895年)も酷い話だが、王妃は人民には数えられないかもしれない。1894年から5年にかけての東学農民戦争(革命)では3万人から5万人が日本の討滅隊によって殺された。朝鮮の農民は竹槍かせいぜい火縄銃なのに日本の討滅隊はライフルで武装しているのだから、これはまったくのジェノサイドである。2005年以降の義兵闘争では2009年までに16700人が殺され、負傷者は36770人と言われる。安重根も義兵の一人であった。 齣野記者に限らない。私たちはこうした事実をどこまでわかっているだろうか。 もうひとつ、コラムの結びのところだ。 伊藤の死後、明治天皇が「股肱」「柱石」と伊藤をたたえたことは上に引用した。そこで齣野記者は安倍総理および周辺の日ごろの言動に苦言を呈しつつ、こう文章を結ぶ。 少なくとも股肱、柱石の振る舞いではあるまい。 いったい、今日において日本国の総理大臣に天皇の「股肱、柱石」たれと朝日新聞は要求するのであろうか。安倍を批判したいのはわかる。しかし、大日本帝国憲法下の初代韓国統監を持ち上げることでそれを果たそうというのは、植民地支配責任にあまりに無自覚だし、方法が根本的に間違っていると思う。 さて、今日は憲法記念日だ。これから家を出て5.3憲法集会に参加します。
by suiryutei
| 2019-05-03 08:25
| ニュース・評論
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Comments(2)
Commented
by
saheizi-inokori at 2019-05-03 09:17
御代、三種の神器、、アベに批判的なインテリですら安易・無自覚に恐ろしい言葉をつかいますね。
批判する側がよほどちゃんと言葉の・思想の武装をしてかからないと連中には勝てないのではないでしょうか。
1
Commented
by
suiryutei at 2019-05-03 18:45
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