新人事制度 大阪での報告①~③
記事ランキング
最新の記事
タグ
労働(124)
最新のコメント
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
一昨日このブログのアクセス数がずいぶん多かった。初めて4桁に達したのである。 どの記事に集中したのかを昨日しらべてみると、4月30日に更新した記事であった。大阪の郵便局で起きたパワハラ自殺について書いたものだ。 こんな痛ましい記事に対してでは、アクセスが増えたって喜べない。郵便局に限らず、労働現場はどこも酷いことになっているのだろう。 こんどの土曜と日曜(11日~12日)、東京の『伝送便』事務所で『伝送便』誌の全国編集委員会が開かれる。酔流亭は一日目の11日だけの参加だが、あちこちの労働現場の様子をしっかり聞いておきたいと思う。 今日は、その『伝送便』誌の5月号に寄稿した文章をUPしておきます。 ![]() スーパーで肉や野菜を買う。あるいは聴きたいCDをアマゾンで注文する。私たちが日常おこなっている消費行動は、モノが生産された場所から店舗に、あるいは宅配で直接自宅に運ばれてくることによって成り立っている。物流とは、こうしたモノの運搬や管理のことである。宅配を例にとれば、二〇一五年に総取扱数が約三六億個だったのが二〇一八年には四二・五億個に膨らんだ。物流は成長産業なのである。だから日本郵便だって斜陽の郵便事業よりも物流業のほうへ近年急速にシフトしてきた。前記四二億個強の宅配荷物のうち二〇%以上を占める八・八億個はゆうパックである。 では、本書のタイトルにある「物流危機」とは何を指すのか。貨物のうち九一%がトラックによって運ばれる。しかるに、そのトラック・ドライバーが足りずに、荷物が運べない状況がこんにち起きているのだ。労働条件があまりに酷いから若者がこの仕事に就きたがらない。 トラック輸送は、利用者に荷物を直接届ける宅配便のセールスドライバーのような区域内輸送と、地域と地域を結ぶ、つまり北海道から東京まで農産物を運ぶような幹線輸送とに大別される。「物流危機」がクローズアップされてきたのは二〇一六年に広く明らかになったヤマト運輸のサービス残業問題あたりからだから、「昼休みもとれない」セールスドライバーの過酷な労働にまず人びとの耳目が集まった。 しかし、幹線輸送のドライバーが置かれた状況も厳しい。運賃とは別に高速代を収受している運送業者は四割にとどまる。それでいて着時間の厳守を求められるから、ドライバーの多くは自分の休憩時間を削って一般道を走る。また荷物の積み降ろしもドライバーがやる場合がほとんどなのに、これも約四割が荷役料金を収受していない。宅配業界ではヤマト・佐川・日本郵便の三社でシェアの九割を占め寡占化が進むが、いっぽう幹線輸送を担う九割は中小零細業者だ。零細であるゆえに運賃価格の交渉力が弱く、それがドライバーたちの命を削るような労働やタダ働きにしわ寄せされる。 ところで宅急便の創始者、ヤマト運輸の小倉昌男・元社長は「労働組合がないと経営が成り立たないとすら思っている」と自著に書く。ただ、彼の考える労働組合とは、資本と労働とが利害が対立する存在として向き合うのではない。同じ方向を向き、協議はしても団交はやらない、そうした企業別の従業員組織のごときものだ。だから自社の正規雇用だけが大事で、それ以外は目に入らない。これはJP労組だってそう。 本書の著者は研究者としての範囲を守って運動のあり方に深く踏み込むことはしないが、替わりに状況を打破する上での貴重な示唆を与えてくれている。そのひとつは、企業を横断した賃金基準(たとえば産業別の最低賃金)を形成することによって、運賃ダンピング→労働条件切り下げ競争に逆ネジをくわせることである。燃料費としてのガソリン代は原価以下には値切れない。賃金も業界を通じてそうしたものにする。会社が足並みを揃えて運賃を上げるのはカルテルとして独占禁止法に抵触する恐れがあるけれど、賃金は独禁法の埒外だ。そうした試みを著者は「ワーク・ルールを起点にして、事業や市場のあり方を見直そう」と表現する。いま関西生コンの労組が不当な弾圧にさらされているのも、こうした闘いを労組が創ってきたからに他ならない。 ![]()
by suiryutei
| 2019-05-07 07:37
| 文学・書評
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||