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新聞『思想運動』5月1日付けの<書評特集>に寄稿した文章です。このブログへの転写が延び延びになっていました。 ![]() 隣国の朝鮮に対して日本がいかに悪らつな侵略行為をくり返し、ついには一九一〇年の併合にまで至ったか、日本人による研究の嚆矢は山辺健太郎のそれであろう。しかし、その山辺にして、たとえば不朽の名著『日韓併合小史』(一九六六年)でも日清戦争開戦時の日本軍による朝鮮王宮占領について記述は詳細とは言えない。また、これに前後する東学農民戦争(革命)は一八九四年春の第一次と同年秋から翌年にかけての第二次とに蜂起が分かれるのだが、日本の侵略に対する百万人規模の民衆抵抗となった第二次蜂起に触れるところは少ない。 それは山辺の非ではない。戦史が改竄されて真相は隠されてきたのだ。満州事変において満鉄線路を爆破したのは日本軍部が喧伝したように中国兵なのではなく、関東軍が仕組んだことは東京裁判によって白日にさらされた。しかし明治の日本が朝鮮半島でやったことについては国際的な審判の場に引き出されることがなかった。明らかになってきたのは山辺が没したのち、比較的最近のことなのである。一九九四年春、福島県立図書館の佐藤文庫で日清戦争の公式戦史の草稿を閲覧し、闇に光をあてたのが本書の著者、中塚明氏であった。改竄される前の草稿であるのが重要だ。王宮占領はそれまで言われてきたような、銃の弾がどちらから飛んできたかわからない偶発的な衝突から結果されたのではなく、日本の政府と軍部が腹を合わせて計画的に実行された。 さらに翌一九九五年夏、北海道大学の講堂で六体の頭蓋骨が古新聞紙に包まれ段ボール箱に放り込まれた状態で発見された。そのうちの一つには「東学党首魁」と墨で書きつけられている。遺体のこんな扱いは非道と言う他ないが、せめての救いは、このとき北大に井上勝生という良心的歴史家がいたことである。井上教授は遺骨の故国への返還に尽力するとともに東学農民戦争の実像を明らかにしていく。本書を読まれた方は、井上氏の労作『明治日本の植民地支配』(岩波現代全書)も併せて読むといい。 東学農民戦争のうち、ことに第二次蜂起が闇に封じられてきたのは、日本軍によって鎮圧される過程が凄絶なジェノサイトだったからだ。ライフル銃で武装する日本の討滅部隊に対して竹槍かせいぜい火縄銃しか持たない農民は、日本軍をしばしば翻弄するものの次第に追い詰められ殲滅される。三万人から五万人が殺された。北大に放置されていた頭蓋骨は、日本軍に処刑され晒し首にされた蜂起指導者のものだ。そうした殺戮の上に遂行されたのが朝鮮の併合である。植民地支配がどれほど酷い犯罪であるのか、それに手を染めた者のモラルを退落させていくか。中塚氏のこの本に余すところはない。必読されたい。 ![]()
by suiryutei
| 2019-05-11 08:26
| 文学・書評
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