新人事制度 大阪での報告①~③
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20日の郵便労働者交流討論集会での酔流亭の発言を貼り付けます。 JP労組全国大会議案と私たちの闘いの方向
何が「不合理」なのか
JP労組全国大会議案の冒頭、[提案に当たって]に、こうある。 「・・合理的ではない処遇差等の洗い出しを行なった。その上で、客観的に合理性が乏しくなっていると思われる制度や手当等を特定し、・・非正規雇用社員への適用を要求した」 まわりくどい悪文ではあるけれども、ここでは「合理的ではない」とか「合理性が乏しくなっている」のは正規と非正規の処遇差を指していると解すべきであろう。そうでなければ後段の「非正規雇用社員への適用を要求した」につながっていかない。 ところが、その次のページ、[2017-2018年度の春闘を軸とした取り組みを振り返って]の項では、こうなっている。 「・・社会や環境の変化によって『客観的に合理性が乏しくなっていると思われる制度や手当等』の特定とその是正を視野に入れた・・」 「処遇差」という語がいつのまにか消えてしまっているのである。これでは「合理性が乏しくなっている」のは正規と非正規の間に格差があることではなく、「制度や手当等」そのものということになってしまう。 このいわばすり替わりにJP労組の本性がはしなくも露呈している。すなわち、初めのうちこそ労働組合らしいポーズをともかくとって格差是正とか口にするのだけれど、本音はそこにはない。「会社あっての労働者」という企業別組合の性がすぐ首をもたげて、コストカット(手当等の縮減)を進めたい会社の論理と心理を自らも内面化してしまっているのだ。去年の春闘で「同一労働同一賃金」の名の下に一般職から住居手当を奪いに出たのもまさにそうであった。 今年の全国大会で本部の第一獲得課題は、扶養手当と定年延長をめぐって今春闘での会社との妥結の承認を得ることである。その妥結内容についての批判は『伝送便』誌6月号に書いたので、今日はそれと重複しないように述べていきたい。
労契法20条の影
まず扶養手当がアソシエイト(無期転換労働者)に拡げられた(しかしその中身の不備については『伝送便』記事参照)のはJP労組の成果ではない。郵政ユニオンが取り組んできた労働契約法20条裁判によって、会社もJP労組もそうせざるをえなくなったのである。 つぎに65歳への定年延長も、これは郵政ユニオンが取り組んでいるわけではないが(裁判の嚆矢は長沢運輸に勤務している全日建連帯労組の組合員)、労契法20条がからむ。 どういうことか。夫65歳・妻60歳の夫婦の老後に2000万円の蓄えが必要とした金融庁の報告が現在大問題になっている。こんな状況で、これまでのように60歳で定年を通過して以降は賃金がガクッと下がっての再雇用では生活が苦しくってたまらない。蓄えなんてできない。だから、65歳まで働くならこれまでの賃金を維持したい、すくなくとも大幅なダウンは避けたい、というのが働く者としての定年延長の要求である。ところが今回の定年延長では61歳以降の賃金は継続再雇用のときといくらも変わらないのだ(現給保障されるとはいえ下がるケースもある)。一時金の支払い率は上がるけれども、その計算の元となる基本給が大きく減らされる(例。地域基幹職3級342.000円→シニアスタッフ184.200円)ので、たいした増にはならない。 つまり実態は変わらないのである。ともかく定年を通過したという「解放感」は奪われてしまうけれど。 ならば、なぜ制度を変えるのか。労働契約法20条は有期雇用と無期雇用の間の格差は「不合理と認められるものであってはならない」とする。継続再雇用なら有期雇用であるから、61歳以降の大幅な賃下げは無期雇用との「不合理な格差」にあたるのではないかと争えるのだ。ついこのあいだまでは、定年でいったん退職したら、その後は賃金がいくら下げられたって文句は言わせない(働かせてやるだけありがたく思え!?)というのが社会通念だった。しかるに、雇用情勢の変化(人手不足)もあるけれど、2012年の労契法改正によって13年から施行された労契法20条は退職後再雇用と正規雇用の格差も問う。長沢運輸の裁判では地裁から最高裁(去年6月に判決)まで、この点についての司法判断はゆるがない。 ところが、定年延長して65歳まで無期雇用にしてしまえば、労契法20条の適用範囲外になる。会社とJP労組はこれを狙ったのである。 定年延長での61歳以降の賃下げは労働条件の不利益変更にはあたる。しかし、手続き次第で(労使の合意があれば、あるいは合意にいたらずとも使用者側がちゃんと交渉したと判断されれば)不利益変更はクリアされてしまうのだ(労契法9、10条)。「労使自治」という言葉が今年の議案に唐突に登場した所以であろう。労契法20条では結果として形成された労働条件の実態の合理性が問われるので設定手続は関係ない。合理的ではない格差は不合理であって許されないのである。
企業別労組の性とは
かつて「権利の全逓」と呼ばれたなれの果てが、どうしてここまで頽落してしまったのであろうか。先に「企業別組合の性」という言葉を使った。企業別組合とはかなり日本独特の労働組合の在り方であって、企業別に組織されたものは国際基準では労働組合とは呼ばない。労働者の利益を守るには所属企業が儲かることが先という考えにどうしたって引きずり込まれてしまうから、企業別組合では企業間競争に労働者が巻き込まれてしまう。労働者の団結による競争規制という労働組合にとって第一の任務が果たせない。 だから、郵政においても事態を打開するには、企業別労組という形そのものを変える必要があると思う。 そこで、去年6月に行った交流討論集会では、そんな思いを込めて、こう発言した。
去年6月の交流集会発言から
JP労組を批判するだけでなく、私たちの闘いの方向性も考えておく必要があると思う。 これまで郵便事業は日本郵政が独占してきたから、私たちも自然ひとつの企業内での闘いという発想になりがちであった。しかし今日、日本郵政は郵便より物流に力点を移しつつある。この物流業界には「同業他社」がひしめく。クロネコ・佐川・・・。日本郵便・ヤマト運輸・佐川の三社を渡り歩くように転職をかさねる非正規雇用労働者もいる。 「同一労働同一賃金」とは、企業を横断した労働条件標準化の要求としてまずあったことを思い出したい。他業界より劣悪と言われる物流業界において企業の枠を超え、業界全体の労働環境を底上げしていく闘いをこれ(「同一労働同一賃金」の要求)で創れないか。 宅配の区分にしても配達でも、どの会社でもだいたい同じような職務だから、放っておいても市場原理が働いて、どの会社で働こうが賃金は似たような額に落ち着くだろう。だが、そうして実現する「同一賃金」は運動による規制が働いていないから使用者にとって都合のいい(=安い)額だ(「同一低賃金」!)。現在がそうである。ここに運動の力で介入していって「この仕事ならこれ以下の賃金では働かない・雇わせない」という基準を作っていくのである。 (2018/06/06 郵政の「働き方改革」を考える交流集会における発言)
関西生コン労組の闘いに学ぼう
上の発言が去年6月のことである。関西で生コンクリート業界の労働組合(全日建連帯労組関西地区生コン支部)に対する異常な刑事弾圧が始まったのは8月から。今年4月まで逮捕者は述べ64名にのぼる。ダンプのタイヤがすり減っていることを注意したり、コンクリートの品質管理をちゃんとやれと求めるコンプライアンス活動が「恐喝」に、ストライキへの賛同を求めたことが「威力業務妨害」と、まさに労働組合が非合法だった時代のような異常弾圧である。支部長も逮捕され今も勾留されたままだ。 労働者として怒りを覚えるが、問題はこの労組がなぜこれほど攻撃されるかだ。関ナマ労組は企業ごとの組織ではなく、職種・業種を通じて結集している。そのため企業の枠を超えた運動を展開できる。「企業あっての労働者」という考えに足をすくわれにくい。だから高い労働条件をかちとってきたのである。賃金はどの会社で雇われていようと、この職種なら〇〇円と決まっている。本当の「同一労働同一賃金」である。中小零細の企業が多いのに年齢性別、正規雇用であるかないかにかかわらずほぼ850万円前後の年収・年間休日は平均で150日ほどを確保しているという。生コンの価格を値崩れさせないように組合員の雇い主である生コン業者を協同組合に結集させ大手ゼネコンに対する価格交渉力を付けさせる。これなどは物流業界における料金ダンピング→労働条件ダンピングと闘う上でも参考になると思う。 逆に言えば、こういう闘い・こんな労組が全国に拡がっていけば日本の資本家は労働者をとことん収奪してのぼろ儲けができなくなる。 去年6月にこの郵政交流集会できわめて漠然と提起した方向を、もう何10年も前から進めていて、それで大きな成果を挙げているのが関ナマ労組なのだ。本当の労働組合運動がここにある。そして、もうお気づきかと思うが、定年後再雇用の賃下げに対して労働契約法20条裁判を最初に始めた長沢運輸の労働者も関西生コン労組が加入するのと同じ全日本建設運輸連帯労組の組合員である。 関ナマ労組に対する弾圧と闘う隊列に加わるとともに、この労組の闘いに学び、郵政における労働運動に活かしていくことがJP労組に対する実践的な批判となるのではなかろうか。
by suiryutei
| 2019-06-22 07:43
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