新人事制度 大阪での報告①~③
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今月発行された雑誌『労働者文学』No.85に寄せたコラムです。『労働者文学』のこの号には今年の労働者文学賞の受賞作が掲載されています。 この春、家の畳替えをやった。築三〇 年にして初めてだ。 茶の間の畳の上には箪笥が置かれてい る。親が使っていたもので、現在では中 を覗くことも滅多にない。しかし職人さ んが畳を運び出すとき動かしやすいよう すこし整理することにした。すると縦一 〇cm×横六cmほどの小さな長方形の 黒い箱が三つ出てきた。それぞれ「支那 事変従軍記章」「勲六等瑞宝章」「勲七 等〇〇(判読できず)桐葉章」と書かれ ている。蓋を開けると、中に入っていた 従軍記章は一〇円銅貨ほどの丸い徽章で、 あと二つは星型のそれだ。 三五年前に死んだ父の遺品。こんなも のが我が家に眠っていたとは知らなかっ た。インターネットで調べてみたら、従 軍記章一品ではネットオークションで最 低一〇〇円から値がついている。我が家 で出てきたように他に何点かあるとセッ トで二〇〇〇円とか三〇〇〇円だ。いず れにしてもたいした値ではない。 従軍記章は一八七四年の台湾出兵を皮 切りに戦役のたび発行されている。軍隊 における階級、戦功にかかわりなく、ま た軍人か軍属かによらず、従軍していれ ば受ける資格がある。戦功によらずとい うのに少しほっとした。近代日本が行な ってきた戦争は全て侵略戦争である。こ とに一九三七年からの支那事変(現在は 日中戦争と呼ぶ)では三〇万人もの中国 人が殺されたといわれる南京大虐殺もこ のとき起きた。そんな戦役で何か武功を 立てての受章であったとすれば息子とし て心おだやかではいられなかった。 現実の我が父は生まれつき心臓が弱か った。だから兵役検査は通らなかったの ではないか。兵士ではなく軍属として従 軍したのだろう。軍馬の面倒を見る仕事 をしていたと聞いたことがある。馬は心 底好きだった。生前、馬券を買うのは見 たことがないが、TVで競馬中継があると 熱心に視ていた。 私たち親子は戦争について話をしたこ とがほとんどない。だから兵士でなく軍 属だったろうというのも正確にはわから ない。推測である。高校生のとき一度だ け話したことがある。一九七〇年代初め で、私は学校の帰りにベトナム反戦デモ に足を運ぶようになっていた。 「お父さんはあの戦争で何をやったの ?」 いくらか詰問するふうだったから父は 身構えた。 「わしは悪いことなんか何ひとつやっ とらん!」 それきり話が続かない。未熟な息子だ。 父は一九一六年生まれだから、日中戦 争に最初から従軍していたなら二一歳。 平和な世であれば青春を満喫できたろう に。しかし攻め込まれた中国の人びとが 舐めた苦しみは日本の比ではない。現在 の自衛隊に従軍記章はないが、新設を求 める声が上がっているという。これも戦 争ができる国への動きであるか。
by suiryutei
| 2019-07-17 09:47
| 文学・書評
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