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新人事制度 大阪での報告①~③
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いま公開中の映画『家族を想うとき』(ケン・ローチ監督)について『伝送便』2020年新年号に書いたので転写します。 ![]() ケン・ローチ監督の新作『家族を想うとき』が素晴らしい。主人公リッキーが職を転々としてから就いた仕事は宅配の配送である。会社に雇われるのではなく、配達に使う車を自分で調達して個人事業主という形で配達を請け負う。 『仁義なき宅配』(小学館)というルポルタージュを思い出した。著者の横田增生さんが行なった潜入取材の最初は、クロネコヤマトの下請け業者の軽トラックに同乗させてもらうことだったからである。映画のリッキーと同じように個人事業主として配達にあたる菊池さん(仮名)の報酬は荷物一個につき一五〇円強だ。荷物は一日一〇〇個前後。朝七時から動き始めて、荷物を配り終えたのは夜九時前だった。拘束は一四時間である。単純計算すると報酬は時給換算一〇〇〇円強だけれど、ガソリン代やら車検代、保険代など必要経費を引くと八〇〇円台になってしまう。その取材は二〇一四年であり、その年の東京の最低賃金は八八八円だったから、菊池さんの稼ぎを時給換算すれば最低賃金をおそらく下回るだろう。 雇用されていれば、雇用主は一日八時間を超す労働をさせてはいけないし、させる場合は超過勤務手当を払わなければならない。賃金はもちろん最低賃金より低いものであってはならない。ところが、リッキーや菊池さんのように個人事業主ということにしてしまえば、労働者を保護するための規制であるところの労働時間制限や最低賃金制をくぐり抜けることができるのだ。イギリスでも日本でも近年フリーランスとか個人事業主という働き方が、労働者にそう選択させるように装いながら、じつは経営側によって広められてきた所以だ。 リッキーの労働時間も毎日一四時間である。妻のアビーも介護士としてそれくらいの時間はたらく。リッキーが宅配の仕事に就くとき配送のバンを手に入れるのに、アビーが訪問介護に使っていた車を売って購入資金とした。そのためアビーはバスを利用しなければならなくなり、それが彼女の長時間拘束に拍車をかける。二人が疲れ切ってしまうことが、一六歳の息子と一二歳の娘を加えての四人家族のつながりに陰を落としていく。 娘がじつに可愛らしい。息子も、前途を悲観して反抗的になっているけれど本当は思いやりのある子なのだ。両親は勤勉だし、いい家族なのである。それなのに彼らに不運が次々と襲うのは何故なのかを考えさせられる。 ところでリッキーは反抗的な息子に手を焼きながらも、日本のTVドラマや映画に出てくる父親たちのように手を上げようとはしない。ところが終盤、どうにも抜き差しならない状況に追い込まれて、つい息子をぶってしまう。それは誤解によるものだったのだが。 けれども、その行為をアビーが厳しく叱責していることが、親が子に暴力を決して振るわないできた家族であったということをかえって印象づける。ローチの旧作『麦の穂をゆらす風』がアイルランド独立を目指す武装闘争を描きながら非暴力の思想に裏打ちされていたように。 ![]() 酔流亭の文中に出てくるローチ監督の旧作『麦の穂をゆらす風』について、観た当時に書いた感想も貼り付けておきます。
![]() densobin@usay-net.com 郵便の場合は 東京都千代田区外神田6-15-14 外神田ストーク502号 『伝送便』編集委員会
by suiryutei
| 2019-12-30 08:52
| 映画・TV
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