新人事制度 大阪での報告①~③
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23日更新記事で告知的に触れたように、昨日は大西巨人の小説『神聖喜劇』の読書会に参加した。 報告者の添田直人さんが用意されたレジメはA4で21ページに及ぶ。他に差別・被差別の論点表も作成された。この長編小説全編をとおして通奏低音のように響く、部落差別の不条理に対する怒りに論点をあてた、力のこもった報告である。 そして、この小説のもうひとつの読みどころは、侵略戦争を阻止しようと左翼運動に関わったものの弾圧によって挫折し、虚無的な気分に囚われて軍隊に招集された主人公・東堂太郎が、軍隊内での仲間との出会いを通じて内省や懐疑を繰りかえしつつオルガナイザーとしての自己を取り戻していくところではなかろうか。添田さんが報告の中で、映画『男はつらいよ』シリーズのうち1981年公開の作品に言及したのが、酔流亭にはことのほか興味深かった。 その寅さん映画は1981年12月公開のシリーズ28作目。マドンナ役は音無美紀子だった。 さりげない一場面なのである。妹さくらの夫・博が左腕に着替えと一緒に月刊誌『世界』を抱えているのが、わずかな時間だけれども大写しにされるのだ。 当時『世界』には「韓国からの通信」というT・K生署名による記事が連載されていた。そのころ韓国は軍事独裁政権下にあった。民衆蜂起が軍隊によって押しつぶされ、多くの死者が出た光州事件はその前年、1980年のことである。隣国で民主化を求めて闘う人々に心を寄せる者にとって、『世界』に連載されていた「韓国からの通信」に無関心ではいられなかった。 山田洋次監督は、松竹喜劇映画とはおよそ場違いなあの雑誌を、チラリとながらあえて大写しすることによって隣国の民主化闘争への連帯の思いを顕わしたのであろう。このあたりを、添田さんの報告レジメはこう書いている。 ・・・私は毎号これをドキドキしながら読みました。このころは光州蜂起の後、独裁政権の弾圧がひどく韓国国内では闘いの情報が切断され皆無に近かったので、「世界」に掲載された「韓国からの通信」が書かれた日本から韓国に入って情報を知るという動きがあったのです。私が毎月これを読むのと同じ内容を韓国の闘う学生が読んでいることを感じていました。その「世界」を、博が持っているカットが上映されることによって、その映画を見る日朝連帯闘争を闘う観客は共感するのです。きっと、「異議なし」とつぶやいたと思います。・・・ そして小説『神聖喜劇』の中で、軍の基地外行動のときの自由時間に、東堂太郎が町中の書店で雑誌『中央公論』を購入した行為に、映画のあの場面との相似性を見る。 東堂が「中央公論」を他の兵士の面前で購入したのは、あえてそうしたのであって他の兵士の中に闘う部分がいることを見せて、反応をうながしたのです。 酔流亭としては、あの時点での東堂がそこまで意識的であったかどうかにはまだ確信が持てないのだが、しかしその『中央公論』には独ソ戦下のソビエトからのレポートも載っていて、ドイツ軍の破竹の侵攻に土俵際まで追い詰められていたソ連の「意外な」底力を伝えているのを、東堂はロシア贔屓の同年兵・曽根田に読ませたりする。そうしたことを通じても、東堂の行動は当初の超人的記憶力に拠った孤的なものから、仲間とつながっていくものへと変貌していくようである。 ところで、わが本棚にも1981年ごろの雑誌『世界』が一冊あった。3月号である。もちろんT・K生による「韓国からの通信」が載っている。光州事件の真実を伝える内容だ。
by suiryutei
| 2020-01-26 09:52
| ニュース・評論
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