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平日の夕方に再放送中の『ひよっこ』(2017年4~9月にNHK朝ドラとして放送)については、このブログで何度も触れてきた。 先週の放送ではドラマ進行の時代は1966年6月にさしかかった。ビートルズの日本公演が実現したときである。ヒロイン谷田部みね子(有村架純)の叔父・宗男(峯田和伸)は大のビートルズファンなのだが、その理由が明かされる。 戦争中、宗男はインパール作戦に従軍していたのである。ドラマのその時点(1966年)で宗男は44歳だから、同作戦が行なわれた1944年には22歳だったことになる。 インパール作戦は世界戦史上で最悪の軍事行動とまで言われているらしい。インパールはビルマ(現ミャンマー)との境に近いインドの都市で、当時は大英帝国領。抗日戦を戦う中国への支援ルートを絶つことを日本陸軍は目指した。しかし、投入された日本軍の兵力9万人のうち命を落としたのが6万人とも7万人とも。日本軍が敗退していく道は白骨街道と呼ばれたという。 そんな地獄の戦場で、宗男はあるときイギリス軍の兵士と鉢合わせする。相手も自分と同じくらいの年齢だ。敵兵同士だから撃ち合わなければ(殺し合わなければ)いけないところだが、若い2人はお互いに身体が動かない。 するうち、イギリス兵のほうは近くに仲間がいて、宗男の存在はまだ気づかれていないが、その場に近づいてくる。彼ら同士で何か言葉を交わす。宗男のほうは1人である。絶体絶命だ。 ところが、イギリス兵は「敵がいるぞ!」とは仲間に告げなかったのである。そのかわり、おそらく「異常ないです!」とでも言ったのだろう。そうして宗男にニコッと笑いかけ、その場を離れていったというのだ。 この別れ際の笑顔に宗男はすっかり参ってしまった。そういう戦場体験があるところにもってきて、戦後ずっと経ってビートルズが現われた。これもイギリスではないか。それで宗男はしびれてしまったのである。 大岡昇平の『俘虜記』を思い出した。大岡は1944年に兵士としてフィリピンのミンドロ島に送られ、45年1月に米軍の捕虜になる。『俘虜記』はその体験に基づいて書かれた。 まだ捕虜になる前、大岡自身である「私」はマラリアに冒され、所属する隊ともはぐれて、死をもはや避けられないものと観念する。そして、もし敵兵が目の前に現われたらと考える。撃つまいと思った。「私は生涯の最後の時を人間の血で汚したくないと思った」。 ところが、果たしてアメリカ軍の若い兵士が一人現われたのである。前述の「撃つまい」という思いにもかかわらず、「私」の右手は自然に銃の安全装置を外していた。そこは訓練を受けた兵士であり、確実に相手を仕留められる位置であった。けれども「私」はやはりそのアメリカ兵を撃たなかった。「私は溜息し苦笑して『さて俺はこれでどっかのアメリカの母親に感謝されていいわけだ』と呟いた」。 大岡はかなりの行数をとって、そのときの「私」の心理を見つめ分析していく。酔流亭は昨日その箇所を何10年ぶりかに読み返して、ごまかしも自己美化も排していくその精神の営為に感銘を受けた。 また大西巨人『神聖喜劇』における被差別部落出身の冬木照美二等兵のことも思う。 いったいお前は、戦地で、どっち向けて鉄砲を撃つつもりか。・・・前向けて撃っても、うしろ向けて撃っても、どっちみち玉が当たって人が死ぬじゃろうぜ。・・・だいたい兵隊は、軍人は、人を殺さにゃー他人のいのちやら自分のいのちやらを大切にしたりなんかしとった日にゃーまるっきり成り立たんよ。・・・戦地に行ったら、お前は、どうするとか。 下士官からそう詰められて、 はい、鉄砲は と冬木は言うのである。 前とかうしろとか横とか向けてよりほか撃たれんとじゃありまっせん。上向けて、天向けて、そりゃ撃たれます。 殺されるよりは殺せ。戦争は、従軍する兵士ひとり一人にその選択を強いる。『俘虜記』も『神聖喜劇』も、そんなむごい選択とは違う方向を指し示そうとするものだ。『ひよっこ』における宗男と若いイギリス兵とのエピソードも、それにつらなっている。 ※3年前の放送終了時に書いた文章も貼り付けておきます。
by suiryutei
| 2020-04-26 08:23
| 映画・TV
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Comments(2)
おはようございます 以前友人が関心があるということから辻政信 潜行三千里を読んだことがあります。朝ドラは戦争がらみ多いですね。今の朝ドラは金子の兄が満州に行き金子も満州に行き波乱万丈のところは描かないかもしれないが、古関裕而が戦争時海外慰問したり、戦争音楽協力したことを描くかもしれませんね。
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suiryutei at 2020-04-27 08:10
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