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酔流亭が高校生だった頃(1970~73年)ハリウッドの映画監督で一番勢いがよかったのはサム・ペキンパーではなかったろうか。71年にダスティン・ホフマン主演で『わらの犬』、73年にスティーヴ・マックイーン、アリ・マックグロウ主演で『ゲッタウェイ』を撮っている。ペキンパー人気に火が点いたのは、それより少し前、69年の『ワイルドバンチ』(ウィリアム・ホールデン主演)である。 それ以前は、いわゆるB級西部劇というのを何本か撮っている。低予算で撮影期間もそう長くとらずに濫作された作品をB級・・というのだが、先週金曜、NHKBSで放映された『昼下がりの決闘』(1962年制作)も、元々はそんな映画である。『ワイルドバンチ』以降のペキンパーの活躍に瞠目したコアなファンによって、公開時よりもずっと後になってから名作扱いされるようになった。そして実際、いい映画なのである。放送された日は酔流亭は『伝送便』の発送があって外出していたので、録画しておいて昨日視た。 じつは酔流亭は1972年の秋にこの作品が民放で台詞吹き替えでTV放映されたときも視ている。半世紀近くも前のことを、秋と季節を特定して憶えているのは、放映された日は日曜日で、通っていた高校の運動会の日だったからだ。たしか正午から2時間弱の枠だったのを、校庭を脱けだして家に戻って視て、それからまた学校に戻った。高校三年の秋ともなると、学校のほうも生徒の出欠にあまり煩いことは言わず、最初と最後と、あと自分が出る競技のときだけ居ればどうにかなった。 かつては西部でその名を恐れられた保安官とその相棒。しかし、働き盛りという年齢をもうだいぶ過ぎ、保安官は安酒場の用心棒なんかを、相棒は日本で言えば縁日の射的の屋台みたいなのをやって日銭を稼いでいる。 そんな彼らが、珍しくかっての腕前を振るえそうな仕事にありついた。奥地の鉱山キャンプから金塊を町に運ぶ仕事だ。 ・・・という感じで話が進んで行く。ストーリーのさわり、出演俳優などについては下のサイトを。 酔流亭はストーリーとあまり関わらないことを一つ述べる。 映画の初めのほうで中華料理店が出てくる。西部の町になんで中華!? と一瞬思いかけたが、1869年に完成した大陸横断鉄道の建設に中国人労働者が重要な役割を果たしたのである。ことに太平洋沿岸から奥地にかけては工夫の5人のうち4人は中国人と言われた。アメリカはイギリスと並んで、中国人を拉致して売る、いわゆる苦力(クーリー)貿易を行なったのである。「中国人労働者は線路わきの小さなテントで生活し、日の出から日没まで困難な重労働にあたった。『西部の鉄道の枕木の下には、中国人の骨が一つずつ埋められている』といわれている」(綿引弘『世界の歴史がわかる本』三笠書房)。1870年、カリフォルニア州では人口の一割を中国人が占めた。西部の町に中華料理店があって不思議ではない。 ところが、労働力として利用し尽くすと、白人は中国人排斥に乗り出す。虐殺事件も起きた。そうして中国人が閉め出された後、かわりに入植していったのが日本人労働者であった。日本人もやがて排斥されていくのはよく知られたとおり。 先日視た『ガンヒルの決闘』から、西部の歴史とは白人による先住民虐殺・強姦の歴史であったことが覗えたように、ここでも。
by suiryutei
| 2020-06-01 08:21
| 映画・TV
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