新人事制度 大阪での報告①~③
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雑誌『労働者文学』の最新号(No.88)が完成した。 この号に酔流亭は『人新世の「資本論」』(齋藤幸平、集英社新書)の書評を書いた。一ページ分のコラムに収めたため、まだまだ言い足りないが、とにかく活字の形になって嬉しい。この本についてはすでにあちこちで論じられているので、早く自分も加わりたくてウズウズしていたのだ。原稿を仕上げて『労文』編集部に送ったのは10月10日過ぎだった。 ともあれ写真の下に全文を転写します。 本誌前号コラム『巣篭もり読書』の末尾に斉藤幸平という若い経済思想家の名を挙げた。彼の考えがよく覗われるのが今年九月に出た本書だ。「人新世」とは、人類の経済活動が与えた影響があまりに大きく、地球は地質学的に見て新たな年代に突入したという意味だという。 産業革命以降の地球環境破壊がいかにすさまじいかは、すでに多くの人が語るところ。その破壊を止める道として、いま言われているのがグリーン・ニューディールだ。緑と、一九三〇年代の大恐慌から脱け出そうとする方策だったニューディールとが結びあわされていることから知られるように、それは「環境にやさしい」新産業を起こすことによって経済の長期停滞からも脱しようという一石二鳥を狙った策である。だが、それによって環境破壊を止めることはできるのか?否というのが本書の立場だ。もっとも、同じくグリーン・ニューディールを唱えるといっても、イギリス労働党の前党首だったコービンのような運動の中から出てきた左派と、それをむしろビジネスチャンスにしようとする企業サイドとではニュアンスの差がある。前者は、社会運動の発展しだいでは著者が目指す脱成長コミュニズムの立場に近づいていくかもしれない。著者が気候ケインズ主義と呼ぶ後者は、あくまで資本主義の枠の中でしか発想しない。 なぜ気候ケインズ主義ではダメなのか。たとえば二酸化炭素排出を減らす救世主のように言われている電気自動車。ガソリン自動車を全てこれに置き換えるなら、巨大な新市場と雇用が生まれるし、環境にもやさしい。ところが電気自動車に不可欠なリチウムイオン電池のリチウムは南米アンデス山脈沿いの地域に埋まっている。乾燥した地域で長い時間をかけて地下水として濃縮されている。リチウム採掘には大量の地下水を汲み上げねばならない。これが地域の生態系に重大な影響を与えるのだ。「先進国における気候変動対策のために、石油の代りに別の限りある資源が、グローバル・サウス(グローバル化で被害を受ける地域・引用者)でより一層激しく採掘・収奪されるようになっているにすぎない」(八四ページ)。一事が万事こうであることが、本書の前半では他の例も引いて詳しく述べられている。 「資本とは、価値を絶えず増やしていく終わりなき運動である」(一三二ページ)。だから資本主義の下にあるかぎり人類は経済成長を手放すことができず、環境破壊は止まらない。ならば資本主義を終わりにしなくては。著者が社会運動を重視するのにはグラムシの「陣地戦」をふと思った。中央の政治権力を奪取する前に社会の隅々で人民の側が権力から主導権を奪っていくのである。ただグラムシはその先に権力奪取を展望するが、本書ではそこはまだ不明確。著者の言う脱成長コミュニズムの中身と併せて、さらに考えていきたい。 冒頭に出てくる『巣ごもり読書』という文章(『労働者文学』前号掲載)は、これです。 12月7日の更新記事でも少し触れているので、貼り付けておきます。
by suiryutei
| 2020-12-27 16:02
| 文学・書評
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