新人事制度 大阪での報告①~③
最新の記事
タグ
労働(124)
辺野古(46) 郵便局(43) コロナウイルス(31) 文学(31) 韓国(19) 朝鮮半島(12) 映画(11) NHK朝ドラ(10) ひよっこ(9) 大西巨人(9) なつぞら(8) 神田まつや(8) 労働者文学(8) 神聖喜劇(7) ケン・ローチ(6) ブレイディみかこ(6) 関西生コン労組(6) 狭山事件(6) 蕪水亭(6) 最新のコメント
記事ランキング
カテゴリ
以前の記事
2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
先週NHKBSで放映された映画『縛り首の木』(デルマー・ディビス監督、1959年)は、題名はコテコテの西部劇ながら、なかなか異色の作品であった。 まず、ゲーリー・クーパー扮する主人公の職業が医師というのが珍しい。酔流亭が観てきた西部劇の中で、医者のガンマンなんて『荒野の決闘』(ジョン・フォード)『OK牧場の決闘』(ジョン・スタージェス)に出てくるドク・ホリディくらいだ。実在したホリディは歯医者だったそうだが、映画ではただ医者として描かれていたのではなかったろうか(ここは記憶が曖昧)。 それからヒロインを演じるのがルネ・クレマン監督の名作『居酒屋』のマリア・シェルである。 『居酒屋』はもちろんエミール・ゾラの小説を原作とするフランス映画だ。マリア・シェルはオーストリア出身。ハリウッド西部劇に出るとはなあ。 そのヒロインはスイスから新天地を求めて、父親と共にアメリカにやってくる。ところが、ゴールドラッシュに湧く西部に駅馬車で向かう途中、強盗に襲われ、父は撃ち殺されてしまうし、彼女も瀕死の目に。 どうにか救出された彼女を介抱するのがゲーリー・クーパーの医師である。その過程でヒロインは医師に恋心を抱くし、医師も彼女を憎からず思うのだが、医師には不幸な過去があって、彼女の愛を素直に受け入れることができない。そういうふうにストーリーが進んで行く。 配役の他にも異色なのは終盤の展開だ。あたりの金脈も尽きたと思われたところで、新たな金鉱が発見された。もともと金を掘るのが目当てで集まった人々によって作られた町である。「金が出た!」とお祭り騒ぎになって酒がふるまわれる。人々の酔いが回ったところで、祈祷師が主人公の医師に報復を企てるのだ。 医師が病人や怪我人に科学的な治療を施すために、迷信が頼りだった祈祷師は商売が上がったりになっていた。そこで「あの悪魔の肉切り男を殺せ!」と酔った人々を焚きつけた。外科手術するのを「肉切り」と呼んだのである。 映画のタイトルが『縛り首の木』となっているのは、この扇動によって主人公は危うく縛り首にされかけるからだ。その窮地を最後はヒロインが救う。 もう60年以上前の作品だし、TV放映も済んでいるからネタバレ承知で書けば、新たに金が発見された土地はヒロインが健康をとりもどしてから地権者になっていたのである。彼女はその土地の権利書と引き換えに主人公の命を助けるのだ。人命や愛に比べれば金の価値なんてなんぼのもんだ!というのが映画のメッセージになる。 大抵の西部劇は、最後は銃の名手である主人公が敵役を撃ち合いで倒す。この映画の主人公も射撃の名手だが、文武両道の彼であっても、デマゴギーに扇動された多数に取り囲まれてはどうしようもない。危ういところであった。 監督のデルマー・ディビスについては、このブログでも前に触れたことがある。西部劇を多く撮った監督だが、ハリウッドには珍しく、先住民への敬意と共感を持った作風である。 『追憶』(シドニー・ポラック監督)という映画の後半に、赤狩りの時代のハリウッドのことが少し描かれている。先住民をどう描くかも、アイツは"赤”かどうかを測る基準のひとつにされていたらしい。いまネットで調べてみてもデルマー・ディビスがダルトン・トランボのように赤狩りでパージされた形跡は覗えなかったけれど、赤狩りを苦々しい思いで見ていたのは間違いなかろう。 映画の終盤の展開に、そんなことを思った。
by suiryutei
| 2021-04-22 08:00
| 映画・TV
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||