新人事制度 大阪での報告①~③
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連休が明けるのを待っていたのでUPが遅くなりました。『伝送便』誌5月号の特集冒頭に書いた記事です。 本誌前号(四月号)は【二一春闘と郵便法改正】を特集したが、その特集の二番目の記事が『もうひとつの二〇二一年問題』(Lot49さん執筆)であるのに目を奪われた。 郵政における二〇二一年問題というのが、まずは特集のタイトルにも入っている郵便法の「改正」を指すのは、本誌読者には既知のこと。これによって郵便が土曜日休配の運びとなり、二〇二一年すなわち今年の一〇月から実施される。それにともなうリストラの動きについても本誌前号で他の特集記事が報告している。 その上で「もうひとつの・・」とは、Iot49さんが適切に指摘するように、時給制の有期雇用労働者(非正規雇用)から契約更新をされない人が出るおそれがある、というものだ。 二〇一三年施行の改正労働契約法一八条は、有期雇用労働者は同一の使用者と雇用契約を反復更新して五年に達すれば、希望すれば無期雇用に転換できるとした。使用者は申し入れを拒否できない。その「五年後の無期転換」は改正労働契約法の施行(二〇一三年)をもって数えられるから、普通は五年後の二〇一八年からであった。 ところが、日本郵政はそれを一年半前倒しして、二〇一六年一〇月から、その時点で契約更新の反復で五年に達していれば無期雇用に転換できるとした。
成果と毒素と
これはいい。無期雇用を求める運動の成果だ。 ところが、一方で二〇一六年一〇月以降採用を対象に毒も仕込まれていたのである。 時給制労働者に行なわれている「スキル評価」のうち基礎評価が全てクリアされていることなどの「要件」が付けられて、勤続五年に達してもそれを充たしていなければ無期雇用への転換どころか契約を更新しないというのだ。つまり雇い止めである。 厄介なのは、郵便の労働現場における人事評価というのはきわめて灰色なことだ。仕事はきちんとやる人でもハッキリものを言うと「こいつ、非正規の分際で生意気だ」とされて、その「生意気」を基礎評価における「自分勝手」に引っかけられ×をつけられたりなんて可能性はごまんとある。それも前号でIot49さんが指摘しているとおりだ。 この更新要件が協約に入れられたのは二〇一六年。六月に神戸で開催されたJP労組全国大会において「大綱整理」が承認され、そう進んだのである。そうして、それから最初の「五年後」が今年秋に迫ってきた。 五年前の『奔流』紙面から
『伝送便』編集部は五年前の大会当日、会場前で配布した『奔流』No.122で、更新要件を協約に入れることの危険を指摘し「大綱整理」を承認するなと訴えた。『奔流』のその箇所を再掲したい。
大綱整理に仕込まれた毒
議案には「本年九月三〇日までに採用された者については、スキル等に係わらず本年一〇月一日以降、勤続五年を超えることになる有期労働契約の開始日から無期労働契約への転換を申し込むことができることとして整理をはかりました」(五ページ)とあります。これはいい。ところが今春闘大綱整理では「二〇一六年一〇月一日以降に採用する期間雇用社員については、勤続五年を超えることとなる有期契約の直前の有期契約期間において、人事評価が一定の水準(スキル評価が『Bなし』以上、基礎評価が『全てできている』等)に達している者を雇用契約更新可能とする」としているのです。 どういうことでしょうか。今年一〇月以降採用では、将来、勤続が五年に達しても(労契法一八条の定める条件を充たしても)、スキル評価次第では無期雇用には転換させない、のみならず有期雇用としても契約更新はしないということです。その一方で、人事評価の高い者は五年に達しなくとも四年を満たせば無期への転換を申し込めるとしています。これは早まるのだからいいことのようにも見えますが、選別を強めるということでもあります。その選別に基づいて場合によっては無期への転換を認めない。のみならず雇止めもやるというのです。
スキル評価が曲者だ
労契法一八条は、契約と契約の間に六か月間以上の空白があれば前の契約期間は計算に入らない等の問題もありますけれど、それらがクリアされているならば、五年を充たせば無期への転換を保障しています。そこに使用者の選別が入る余地はありません。しかも郵政ではスキル評価が恣意的に行われてきた実例が無数にあります。いかがわしいのは基礎評価。業務の習熟度とは別のモノサシが持ち込まれるからです。
●管理者、社員、リーダーの指示を理解して対応している ●他の社員の仕事の邪魔をしたり、自分勝手な行動をしない
という項目など、ときには評価者のメガネの色次第でどうにでもなってしまいます。たとえばロッカー検査は任意であって強制ではないはずですが、検査を拒否すれば「自分勝手」ということにされないでしょうか。セクハラ・パワハラをめぐって会社と裁判で争った女性が報復的にランクを下げられたケースもあります。 この項目は、スキル評価を道具に有期労働者を雇止めの不安にしばりつけ続けるものです。労契法一八条だけでなく、雇止めに規制をかけるものとしての同一九条の趣旨からも逸脱しています。撤回をさせましょう。
事業所閉鎖で解雇
また大綱整理には「事業所閉鎖等により勤務場所が消失した場合、当該事業所に所属する無期雇用社員は原則として解雇する」という項目もあります。勤務場所が消失すれば一九条が禁じる不合理な解雇にはあたらないというのが会社の言い分なのでしょう。しかし、労組としてそれをすんなり呑んでいいのでしょうか。法律が解釈を曖昧にしてあるところは運動の力で規制をかけるのが組合の任務ではないでしょうか。さらに無期雇用を六〇歳定年とし、超えて六五歳までは継続雇用措置というのも問題。非正規雇用にこれまで六〇歳定年はありませんでした。 五月十三日、定年後に再雇用されたトラック運転手が定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは労働契約法二〇条に違反するという判決を東京地裁が下しています。定年を延長するのではなく、六〇歳でいったん定年として、それから六五歳までは継続再雇用とするというのは、年功的に昇給してきた正規雇用を対象として、高齢者の賃金を引き下げる手段として使われてきたやり方ですが、司法はこれを均等待遇に反すると判断したのです。労契法一八条によって生まれる郵政無期雇用はまだ非正規で、定期昇給はありません。にもかかわらず、この新たな線引きが高齢労働者の賃金を切り下げることに使われる懼れはないのでしょうか。 (二〇一六年六月一日発行『奔流』第一二二号から抜粋)
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話を現在に戻せば、この更新要件を理由とする雇い止めが、本来の二〇二一年一〇月問題である郵便法改正=土曜休配にともなうリストラに悪用されるのを許してはならない。 Iot49さんは前号記事の最後で「・・解決策は協約改正に向けて声をあげていくことである」と述べている。その通りだ。五年前その協約化を阻止できなかったことへの痛苦の思いを込めて、Iot49さんの訴えに共感する。
by suiryutei
| 2021-05-07 08:00
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