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これも『伝送便』5月号に寄稿したものです。 1ページ分(1200字余り)に収めたため、言葉が足りないところが多いですが、労働運動は酔流亭にとっていわば「主戦場」。これからも折に触れ手にとる本になると思います。 今年三月に発売されてすぐ、濱口桂一郎氏(労働政策研究・研修機構所長)がブログに載せた書評はかなり批判的であった。 なるほど本書ではイギリスやアメリカでかつてユニオニズムが「離陸」を遂げた物語を習うべき手本のように紹介する一方で、それらの国の近年における労働社会については触れない。濱口氏によればイギリスでもアメリカでも労働組合は今や壊滅的打撃を受けて、むしろノンユニオンが主流となっているということである。 すると 「半世紀前の英米労働史中心史観のままでは、現在の世界の労使関係状況を分析できないのではないかということです。」 という濱口氏の指摘はおそらく当たっているのだろう。ただ本書の主眼は「現在の世界の労使関係状況を分析」することにあるのではなかろう。イギリスやアメリカでのユニオニズムの「離陸」と先に書いた。その「離陸」を、著者の木下氏は熊沢誠氏の旧著『日本の労働者像』(一九八一年)に倣って、こう説明する。 「労働者のなかのある階層が資本主義社会の<貧民>または<国民>一般から自己を分離し、やがてはそのありかた、考えにおいてある独自性をもつ組織労働者になること、そのプロセス」、これが「離陸」である。(156ページ) この「離陸」を日本の労働者階級はまだ遂げていないのである。職業別労働組合によって労働者上層の熟練工が行なう「第一次離陸」はうまく行かず、それも尾を引いて、その後の半熟練工を中心とした産業別労組・一般労組による「第二次離陸」にも失敗した。そのユニオニズム未誕生の上に企業別労働組合が載っかってしまったことが、濱口氏が明晰にもジョブ型と対比させる日本独特のメンバーシップ型労働社会の土壌となったのではないか。 本書を貫くのは、日本の労働社会をメンバーシップ型からまともなジョブ型に転換させるためにも、労働者はとにもかくにも「離陸」を果たさなくては、という木下氏の熱い思いである。 濱口氏はまた 「敢えて言えば、ジョブ型とメンバーシップ型の軸と、政治志向における左派と右派の軸が混交してしまって、分析が濁っているように見えます。」 とも批判するのだが、混交しているのは戦後日本労働運動の表面(おもてづら)がそうなのであって、その奥にあるものを木下氏は掴んでいる。氏が関西生コン労組に肩入れするのは、同労組が左派である前にジョブ型の産業別労働運動を創ってきたからである。 本書では、この関西生コン労組の運動紹介にかなりの紙幅が充てられた。関西において企業を超えた産業別の労働運動をはやくから創ってきた(それゆえにいま権力から目の敵にされている)生コン労組の闘いに私たちが学ぶものは多いはずだ。たとえば「仁義なき宅配戦争」は労働条件切り下げ競争に労働者を引きずり込む。それを乗り越えるには、職務を基準に「同一労働同一賃金」を実現するなど企業の枠を越えた運動に進む他ない。それがメンバーシップ型からジョブ型へということだと思う。読むべき一冊と推奨する。九〇〇円+税。
by suiryutei
| 2021-05-11 08:00
| 文学・書評
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