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コロナ禍での巣籠もりをいいことに、家でBSの映画放映を視てばかりいるようで気が引けるが、つい6日の更新記事でウィリアム・ワイラーに触れたついで、「ハリウッド・タカ派シンボル先代のジョン・ウェインは嫌いでも、その映画を監督したのがジョン・フォードなら視てしまう」と述べたばかりだ。 そのジョン・フォード監督作品『わが谷は緑なりき』が昨日の午後放映されたのである。しかも目障りなジョン・ウェインは出ていないではないか。これは視ないわけにはいかない。 1941年の制作で、冒頭「50年前を想い出す・・」というモノローグがあったから、19世紀末に近いころの話だ。イギリスはウェールズの炭鉱のある谷を舞台に、父親も息子たちも炭鉱夫である一家の日々が描かれる。詳しいあらすじは、たとえば下のサイトを参照されたし。 つまりジョン・フォードといえば西部劇の名作がいくつも思い浮かぶけれども(だからジョン・ウェインがよく主演した)、この作品は『怒りの葡萄』などと共に労働者の映画と言っていい。そして、当時のイギリス労働者階級がどういう状態だったかというと、つい最近『伝送便』誌に書評を書いた木下武男『労働組合とは何か』(岩波新書)に、こんな記述がある。 「いち早く産業革命を遂行したイギリスは、<世界の工場>を誇っていた。しかし、さしものイギリス経済も1873年の世界的な恐慌から一転して慢性的な不況に陥り、96年までぬけだすことはできなかった。この<大不況期>は労働組合が新しく生まれ変わるための舞台をつくり出した。」(80ページ) この映画でも賃金の切り下げを会社が言い渡したのに対して労働者がストライキを行なうのが重要な場面になっている。なんと22週以上続くストライキである。そうした中で「労働組合を作ろう」という声が上がる。先に労働組合があったのではなく、ストライキに立ち上がったことを通じて労組結成に向かったようだ。熟練工だけの、いわば労働者階級の上層を組織した職業別労組(クラフト・ユニオン)から、職場の労働者全部が結集できる、もっと大衆的な産業別労働組合へと変化していく時期だったのである。 熟練工だけのクラフト・ユニオンを「第一次」とすれば、イギリス労働者階級の「第二次離陸」がこうして行なわれる。 映画の語り手であり主人公である少年は小学校を出ると自分も炭鉱で働くようになる。彼と同じくらいの年齢の少年たちが炭鉱で働いている映像の後、彼の兄2人が解雇を言い渡される場面がある。賃金が安くてすむ少年を雇い入れたら、比較的高賃金の労働者は容赦なく放り出すのが当たり前だったのだろう。イギリスにおいては1833年制定の工場法では児童労働禁止は9歳以下、9歳~18歳は週69時間(!)の制限にとどまる。 こうした中で、先述したように労働組合を作って闘う方向がある一方、新大陸に移民として出て行く人々もいる。2人の兄も谷を出て行く。 ところで「離陸」に成功した労働者たちの共同体は仲間同士を思いやり合う濃密なものだけれども、共同体のその濃密さには鬱陶しい面もまたあるだろう。主人公の少年が慕う牧師と少年の姉との結ばれぬ恋に向けられた、人々の冷たい視線なんかはそうだ。 わが谷は緑なりき。ー産業革命を経たあとの炭鉱のある谷の緑は瑞々しいばかりではなかったはず。叙情の底に苦味も湛えた作品だ。
by suiryutei
| 2021-05-14 08:30
| 映画・TV
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